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歴史のなかの言語

メルマガ「三橋貴明の『新』日本経済新聞」の記事に寄稿しました。
今回は「歴史のなかの言語」というタイトルで、メルマガの執筆者仲間でもある施光恒・九州大学大学院准教授の新著『英語化は愚民化』の内容を紹介しつつ、社会インフラとしての言語の役割について、歴史的見地も踏まえた考察をしています。

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以下では今回の記事を転載しています。


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【島倉原】歴史のなかの言語

From 島倉原@評論家

おはようございます。
一昨日、昨日と2日連続で、中国の通貨である人民元が切り下げられました。
振り返れば、中国の株式市場について、

「中国経済の実態などを踏まえると、通貨の切り下げか深刻なデフレを伴う大幅な調整がいずれ不可避で、そろそろクライマックスが近いのでは…」

と本メルマガで述べたのは、上海株式市場がピークをつけた8日前。
ちなみにその時のタイトルは、『「景気回復」の危うい実態』というものでした。
果たして、来週発表のわが国GDP統計は、どうなりますことやら。
http://www.mitsuhashitakaaki.net/2015/06/04/shimakura-25/

そういえば、「米ドル高を伴う新たな新興国危機が発生するのでは…」と発信し始めたのは昨年の6月。
こちらもまた、順調に(?)実現しつつあるようです。
http://keiseisaimin4096.blog.fc2.com/blog-entry-66.html
http://on.fb.me/1KfLrwh

閑話休題。

さて、本メルマガでも最近話題なのが施光恒さんの新著『英語化は愚民化』。
私自身も読む機会がありました。
http://amzn.to/1J3uhr0

現在、「グローバル化に対応した英語教育改革実施計画」「公用語を英語とする英語特区の設置」など、教育現場や公共空間での英語化政策が推進・検討されています。
その背景には、「グローバル化こそ時代の流れであり、これに乗り遅れずに国際競争力を強化するためには、日本社会の英語化が不可欠だ」とする、企業経営者を中心とした議論が存在します。

しかしながら、こうした風潮に警鐘を鳴らすのが『英語化は愚民化』。
「社会のグローバル化の推進が進歩につながる」という世界観自体に誤りがあり、むしろ近代社会の基盤の破壊につながる、というのがその主張です。

『英語化は愚民化』ではその論拠となる事例として、ヨーロッパにおける近代社会の成立や、明治時代の日本の近代化の過程を採り上げています。
ヨーロッパ近代化の起点の1つが宗教改革であり、その過程では、当時のグローバル言語たるラテン語からドイツ語・フランス語・英語といった各国の土着語への聖書の翻訳が進められた。
そのことが、ローマ・カトリック教会の権威と結びつき、ラテン語を使いこなす一部のグローバル・エリートに独占されていた政治・経済的特権、あるいは知的活動を庶民にも開放し、社会全体の活性化を促した。
また、明治の日本においても、一部で唱えられていた「英語公用語化論」を退け、欧米諸語からの翻訳の努力を通じて日本語を豊かにし、近代国家の基盤たる「国語」としての整備が進められた。
いずれにおいても、「グローバル化」とは真逆の「翻訳」と「土着化」こそが言語を豊かにし、そのこと自体が創造性の発揮を促し、ひいては近代化の原動力となったという議論です。
こうした議論の具体的な内容、あるいはそれを現代の日本に当てはめるとどうなるのかについては、是非、同書をご覧になってみてください。

他方で、全くの偶然なのですが、最近、『歴史のなかのコミュニケーション』という本を読む機会がありました。
同書は、欧米の複数の学者の手になる、古代から現代に至る言語、メディア、情報技術といった、コミュニケーションにかかわる歴史をテーマとした論文を集めた一冊です。
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『歴史のなかのコミュニケーション』には、『英語化は愚民化』と照らし合わせてみると興味深い議論が散見されます。
例えば、近代ヨーロッパの原型ともいうべき古代ギリシャ。
その民主化と発展を可能にしたのは、アルファベットの原型ともなったギリシャ文字だったとされています。
すなわち、「文字数の少ない表音文字」と特徴が、児童も含めた一般市民へのギリシャ文字の普及を促進すると共に、表音文字であることが外来の文物を翻訳して自国語に取り入れる際のハードルの低さにもつながり、民主社会発展の原動力となった、という構図です。
そういえば、日本にも平仮名・カタカナという文字がありますが、これらができた頃といえば、源氏物語や枕草子に代表される「国風文化」が発展した時期にあたります。
ヨーロッパも日本も、近代化のお手本は既に古代にあった、ということでしょうか。
そうしてみると、時として悪名高い現代の「和製英語」なども、「翻訳ハードルの低さ」を象徴する事例なのかもしれません。

また、近代化の基礎として挙げられるものは多々あれど、言語との関連という意味でも、間違いなくその1つは活版印刷でしょう。
活版印刷の発祥自体は中国でしたが、歴史の教科書でもお馴染みの「ルネサンス期の三大発明」の1つとして、ヨーロッパで発展を遂げました。
その背景には、アルファベットの文字数の少なさに起因する「コストパフォーマンスの良さ」(漢字の場合は、使用頻度が少ないものも含めて、数千の活字を用意しなければならない)があったとされています。
こちらについては、漢字も自国語に取り入れている日本には当てはまらなかったようです。
しかしながら、本メルマガもその1つである「デジタルメディア」が普及することによって、こうしたハンデキャップは今や解消されつつあると言えるでしょう。
むしろ、これまでも中国語や欧米語を取り入れながら発展してきた日本語の土台を、より一層活かすことすら可能かもしれません。
例えば、「ブログの言語で最も多いのは日本語」という事実も、そうした状況を反映しているのではないでしょうか。
してみると、「グローバル化だから英語化」というのでは、いかにも短絡的な議論です。

もちろん、『英語化は愚民化』自体が「おわりに」で「私の主張は(中略)日本社会を英語化する政策を批判しても英語教育を軽視しているわけではない。語学が堪能な人々の活躍を軽視するものでもない。」と述べているように、個人や企業が各自の目的に合わせて英語を習得、活用することが否定されるものではありません。
外国語を習得することで、職業をはじめとした人生の選択肢を広げることはもちろん、異文化への理解を深めることでより多くの成果を得られる可能性も広がります。
あるいは、経済学が良い例ですが、「学者や評論家と呼ばれる人々が唱えることすらある、誤った俗説にだまされない」ために、場合によっては翻訳に頼らない努力も必要です。
手前味噌ですが、「日銀悪玉論」や「マンデル=フレミング・モデルによる財政政策無効論」といった「リフレ派のデマ」を反駁したこの本を書くことは、英語で書かれた文献の検証なしには到底不可能でした(笑)。
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しかしながら、そうした個々の必要性は、「日本社会そのものの制度的な英語化」の是非とは全く次元の異なる問題です。
グローバル化に対峙し、あるいは個々の外国語学習の実りを豊かにする上では、むしろ「社会インフラとしての自国語の保全や育成」が重要なのではないか。
それこそが、『英語化は愚民化』や『歴史のなかのコミュニケーション』が示唆していることのように思えてなりません。

(島倉原からのお知らせ)
「翻訳」「土着化」と共に、グローバル化に対峙するために必要なのは「積極財政」。再掲になりますが、そうした構図も理解できる一冊です。
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古代ならぬ現代のギリシャから何を教訓とすべきか。ご興味のある方はこちらをどうぞ。
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島倉原(しまくら はじめ)

Author:島倉原(しまくら はじめ)
 経済評論家。株式会社クレディセゾン主任研究員。経済理論学会および景気循環学会会員。
 メルマガ『島倉原の経済分析室』(毎週日曜日発行)や、メルマガ『三橋貴明の「新」日本経済新聞』(隔週木曜日寄稿)の執筆を行っています。

著書『積極財政宣言:なぜ、アベノミクスでは豊かになれないのか』(新評論、2015年)

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