ホーム » 日本経済 » アベノミクスの失敗(チャンネルAJER編)

アベノミクスの失敗(チャンネルAJER編)

※各種ブログランキングボタンやSNSボタンのクリックをよろしくお願いします。
        にほんブログ村 経済ブログへ

   
   このエントリーをはてなブックマークに追加

インターネット動画「チャンネルAjer」の収録を行いました。
今回は「アベノミクスの失敗」というタイトルで、全体で約40分のプレゼンテーションです。

(動画前半)「アベノミクスの失敗①
(動画後半)「アベノミクスの失敗②


8月27日、私はメルマガ『三橋貴明の「新」日本経済新聞』に、上記と同タイトルの記事を寄稿しました。
これは、8月17日に発表された2015年4-6月期のGDP統計第1次速報値を踏まえて、「アベノミクスが成功し、経済は良好な状況にある」という政府要人の見解に異論を呈したものです(下記URL参照)。
http://www.mitsuhashitakaaki.net/2015/08/27/shimakura-31/

しかしながら、同記事の内容、あるいは「そもそもアベノミクスとは何なのか」について、少なからず誤解が生じているようです。
そこで今回は、先週9月8日にGDP統計の第2次速報値が発表したことも踏まえ、アップデートされた数字を使いながら、経済の現状やアベノミクスについて解説したいと思います。

↓今回のプレゼン資料は下記URLから閲覧、ダウンロードが可能です(フレーム下の「Share」を押すと、ツイッター、フェイスブック、グーグルプラスで共有できます。是非ご活用ください)。
http://twitdoc.com/5D2O
(スマホなどで資料が上手くめくれない場合は、左下の「Download」を押すと画面が切り替わり、上手くめくれるようです)

以下はプレゼンテーションの概要です。



GDP統計に見る日本経済の実態

9月8日に発表された2015年4-6月期GDP統計(第2次速報値)によれば、同期の実質GDP(季節調整値)の前期比は年率マイナス1.2%となり、第1次速報値のマイナス1.6%からは上方修正されました。
これに対して甘利経済財政担当大臣は、「在庫を除くと、(第1次速報値と比べて)大体変わらない」「20年近いデフレの脱却が見えてきた」と記者会見で語ったということです。
http://www.nikkei.com/article/DGXLASFL08HFS_Y5A900C1000000/

甘利大臣は前回第1次速報値発表時の会見では、「(アベノミクスは)本当にうまくいっているのだろうか」という記者からの質問に対し、

「アベノミクスの経済政策が本当に効果を上げたのかと。これは全て、実質も名目もGDPが改善していると。特にGDPデフレーターは現下にあってもプラスになって、かなり伸びているわけであります。」

と答えると共に、今後の見通しとして、

「過去最高水準の企業収益から、投資を喚起することによりまして、経済の好循環を更に拡大、深化させてまいります。これにより、景気は緩やかに回復していくことを見込んでおります。」

とコメントしました。
http://www.cao.go.jp/minister/1412_a_amari/kaiken/2015/0817kaiken.html

また、安倍首相は8月24日の参院予算委員会で、

「経済の好循環が着実に回り始め、デフレではないという状況を作り出せた」
「我が国経済は四半世紀ぶりの良好な経済状況を達成しつつあり、重い空気を一掃できた」

と述べています。
http://www.nikkei.com/article/DGXLASFL24HPC_U5A820C1000000/

すなわち、第2次速報値段階での「大体変わらない」とは、「日本経済は良好で、デフレ脱却に向けて順調に推移している(あるいは、既にデフレではない)ことに変わりはない」ことを意味していると考えられます。
確かに、2015年4-6月期のGDPデフレーターは前年同期比で1.5%のプラスとなっています。
しかしながら、これは輸出デフレーター(プラス3.1%)や輸入デフレーター(マイナス4.6%。GDP計算上の控除項目のため、GDPデフレーターへの影響は逆にプラスとなります)といった海外要因でかさ上げされたもので、国内需要デフレーターはプラスマイナスゼロ、なかでも民間の最終需要項目である「民間最終消費支出」「民間住宅投資」のデフレーターはマイナスとなっています(図表1)。
なお、「民間企業設備投資」もGDP統計上の最終需要項目ではありますが、あくまでも財やサービスを生産するための行為であり、実態としての最終的な需要を示す消費や住宅投資とは位置づけが異なると考えます。

※以下では図表ごとに、フェイスブック、ツイッターの掲載ページへのリンクを並記しています。お持ちのSNSアカウントから、是非、拡散にご協力ください。

【図表1:四半期デフレーター(前年同期比)の推移】
http://on.fb.me/1J9X4Ul
https://twitter.com/sima9ra/status/646516290786463745

2014年4-6月期から2015年1-3月期までは、その1年前の消費税がまだ5%だったため、3%増税した分デフレーターが2%強かさ上げされていました。
今回の結果は、1年前と消費税率が同一になった直近の2015年4-6月期にはそうしたかさ上げ効果が失われ、いわば「掛け値なしのデフレーター」がマイナスになったことで需要の弱さが明らかになったことを意味しています(「島倉の議論は消費税増税分の影響を見落としている」と真逆の議論をしている方もおられるようですが、意味不明というか、どう考えても全くの誤解です)。
民間最終消費デフレーターの伸びが前年同期比で2%以下だった2014年10-12月期や2015年1-3月期も実態はマイナスだったと考えれば、既にデフレ傾向が顕在化しているというべきなのかもしれません(少なくとも、「デフレでない状況を作り出せた」という安倍首相の発言は、実態と乖離しています)。

これに対しては、原油安によるデフレーター下押しの影響を挙げる方もおられるかもしれません。
しかしながら、仮に原油安の影響を除けば民間最終消費デフレーターが試算上マイナスにならないとしても、今回の結果が日本経済の景気の弱さを示していることには違いありません。
そのことは、自国通貨高でなおかつ物価への原油価格変動の影響がより強い経済構造を持つアメリカがデフレに陥っていないことを踏まえれば、おのずと明らかでしょう。

事実、これまたメルマガでも示したように、実質民間最終消費と実質民間住宅投資の現在の水準は、アベノミクス開始前の2012年10-12月期を下回っています(図表2)。
到底、「日本経済は良好で、デフレ脱却に向けて順調に推移している」といえる状況ではありません。
それもこれも、アベノミクスの誤った政策、すなわち消費税増税によるものです。

【図表2:四半期GDP統計・各項目の推移(季節調整値。2012年10-12月期=100)】
http://on.fb.me/1FKkYWb
https://twitter.com/sima9ra/status/646526250396155904

なお、いまさら言わずもがなかもしれませんが、今回の景気後退は、中国をはじめとする新興国経済の不振によるものではありません。それは、消費税増税の直後にアジア通貨危機が生じ、その後長期デフレ不況に陥った前回17年前も同様です。
そのことを示すのが図表3です。これは、消費税増税直前の四半期を100として、現在及び17年前の実質GDP/実質輸出/実質民間最終消費の推移をたどったものです。
実質GDPがピークアウトした2014年4-6月期以降(17年前は1997年4-6月期以降)も、実質輸出はしばらく増加しています。すなわち、景気後退を起こしたのは消費税増税による消費の不振であり、外需の不振が原因でないことはデータ上も明らかなのです。

【図表3:四半期GDP統計・各項目の推移(季節調整値。2014年1-3月期=100)】
http://on.fb.me/1NAZoeO
https://twitter.com/sima9ra/status/646527664778428416


消費税増税は紛れもなくアベノミクスの一部

「消費税増税によってアベノミクスは失敗した」という議論に対しては、「消費税増税はアベノミクスとは別物で、アベノミクスが失敗したわけではない」「そもそも消費税増税は民主党政権が決めたことだ」と反論している方もおられるようです。
その根拠として例えば、アベノミクスについて説明した内閣府Webサイトの記述(第二の矢:機動的な財政政策⇒デフレ脱却をよりスムーズに実現するため、有効需要を創出/持続的成長に貢献する分野に重点を置き、成長戦略へ橋渡し)を挙げているブログ記事を目にしたこともあります。
その記事の所在は失念してしまいましたが、該当する内閣府WebサイトのURLは下記のとおりです。
http://www5.cao.go.jp/keizai1/abenomics/abenomics.html

余談ですが筆者自身、拙著『積極財政宣言:なぜ、アベノミクスでは豊かになれないのか』を知人に見せた際に、「あれ、アベノミクスって積極財政なんじゃないの?」と問われたことがあります。
「アベノミクスと消費税は別物」と思われている方は案外多いのかもしれません。

しかしながら、第2次安倍内閣が誕生した2012年総選挙の際の自民党の総合政策集(J-ファイル2012 自民党総合政策集。以下「総合政策集」)の下記記述を読めば、消費税増税がアベノミクスの第二の矢「機動的な財政政策」の一部であることは明らかなのです。

「日本の将来、次の世代、現在の国民生活を第一に考え、責任政党としてわが党が主導して、前回総選挙のマニフェストで国民に約束をしていなかった民主党を巻き込みながら、公明党とともに社会保障と税一体改革に関する三党合意を結びました
 その結果、社会保障制度改革国民会議における今後の議論を踏まえ、安定した財源を前提とした、受益と負担の均衡がとれた持続可能な社会保障制度の成案が消費税率引き上げまでに国民にお示しできることとなりました。
 また、消費税の引き上げにより、財政による機動的対応が可能となる中で、成長戦略や事前防災等の分野に資金を重点的に配分することなどにより、わが国経済の成長等に向けた施策が実施できることとなります。
(中略)
消費税については、今回成立した「社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うための消費税法の一部を改正する等の法律」により、2014 年4 月に5% から8%、
2015 年10 月に8% から10% へと2 回に分けて引き上げることが決まっています。」
(総合政策集26枚目/50ページ。赤字は筆者)
http://jimin.ncss.nifty.com/pdf/j_file2012.pdf

アベノミクスの第二の矢こと「機動的な財政政策」は、上記文中の「財政による機動的対応」という表現に対応しています。
当該部分は明らかに「消費税引き上げによる税源の拡大が、特定分野への資金配分、すなわち財政出動の前提条件(いわば「財政政策の機動性の源」)である」ことを意味しています。
これは、「あくまでも増税あっての財政支出拡大」という「均衡財政主義」に基づくものであり、「財政支出を拡大すれば経済が拡大するので、増税をしなくとも税収が増加し、財政収支のバランスも取れる」という「積極財政」とは全くの別物です。

すなわち、第2次安倍政権発足当初に、景気浮揚策として編成された10兆円の2012年度補正予算についても、翌年の消費税増税ありきで実現したということになります。
そのことは、財政政策の動向を支出のみならず、収入側の動向も加味して分析することで浮き彫りになります。
第2次安倍政権下の2014年度、GDP統計上の名目公的支出は緊縮財政本格化直前の1996年度のそれも上回り、過去最大となりましたが、消費税など「公的部門が所得として召し上げている分」を差し引いたものを「財政政策の積極度」として比較すると、いまや民主党政権時代と変わらないもしくはそれ以下の水準である、という結果を導くことができます(2014年度のGDP確報が発表されていないため、「消費税増税のインパクトは7.5兆円」など、あくまでも一部筆者の仮定を交えた試算によるものです)。

【図表4:支出・所得両面から見た、財政政策の積極度の推移(2009~2014年度、兆円)
http://on.fb.me/1FcNfd1
https://twitter.com/sima9ra/status/646532298653827072

以上より、「消費税増税もまた、アベノミクスという政策パッケージの一部である」ことは明らかでしょう。
上記内閣府Webサイトの「デフレ脱却をよりスムーズに実現するため」「成長戦略へ橋渡し」という表現もまた、財政出動は一時的なものであり、デフレ脱却の主役ではない(主役は第一の矢こと「大胆な金融政策」)ことを示しています(同趣旨の記述は、総合政策集12枚目/22ページにも見られます)。

上述のとおり総合政策集は、消費税増税を決定づけたいわゆる三党合意が自民党主導でまとまったことを自ら明言しています。
したがって、「そもそも消費税増税は民主党政権が決めたことだ(したがって安倍政権には責任が無い)」という議論は到底成り立たないのです。

「アベノミクスは積極財政である」あるいは「他の政策は支持しないが、経済政策は他よりもマシなので、安倍政権を支持している」と考えている方は、少なからずおられることでしょう。
しかしながら、それらはいずれも大いなる誤解であり、アベノミクスは経済政策として明らかに失敗しているのです。

(2015年9月23日追記)
本稿執筆当時私自身も不勉強だったのですが、そもそも「機動的」という表現のルーツは、2012年のいわゆる「三党合意」で消費税増税法案附則第18条第2項として付加された以下の条項にあったようです。
同条項では国土強靭化などへの前向きな取り組み姿勢が示される一方で、それらの前提には消費税増税が存在し、「アベノミクスの第二の矢=均衡財政主義」であることもまた、明確にされています。

「税制の抜本的な改革の実施等により、財政による機動的対応が可能となる中で、我が国経済の需要と供給の状況、消費税率の引上げによる経済への影響等を踏まえ、成長戦略並びに事前防災及び減災等に資する分野に資金を重点的に配分することなど、我が国経済の成長等に向けた施策を検討する。」
http://www.shugiin.go.jp/Internet/itdb_gian.nsf/html/gian/honbun/syuuseian/4_525E.htm


↓今回のプレゼン資料は下記URLから閲覧、ダウンロードが可能です(フレーム下の「Share」を押すと、ツイッター、フェイスブック、グーグルプラスで共有できます。是非ご活用ください)。
http://twitdoc.com/5D2O
(スマホなどで資料が上手くめくれない場合は、左下の「Download」を押すと画面が切り替わり、上手くめくれるようです)

※各種ブログランキングボタンやSNSボタンのクリックをよろしくお願いします。
        にほんブログ村 経済ブログへ

   
   このエントリーをはてなブックマークに追加

↓メルマガ「島倉原の経済分析室」を開始しました。毎週日曜日に発行しています。
http://foomii.com/00092

↓拙著『積極財政宣言』や電子書籍『ギリシャ危機の教訓~緊縮財政が国を滅ぼす(付論:ギリシャ株投資に関する一考察)』、ご覧になるにはこちらの画像をクリック!!
          


↓電子書籍端末のご購入はこちらから。



↓フェイスブックページを開設しました。経済に関するいろいろなグラフを作成し、解説しています。
(「いいね!」よろしくお願いします)
https://www.facebook.com/shimakurahajime

↓ツイッター上で筆者をフォローされるにはこちら。
https://twitter.com/sima9ra

↓フェイスブック上で筆者をフォローされるにはこちら。

関連記事


会員限定の映画やTV番組が見放題! 100万曲以上の楽曲も聴き放題!! 今なら30日間無料体験募集中!!!



テーマ : 政治・経済・時事問題
ジャンル : 政治・経済

tag : アベノミクス 安倍晋三 財政政策 日本経済 消費税 新興国経済 三橋貴明

コメント

非公開コメント

最新記事
ブログ記事検索フォーム
カテゴリ別記事
おすすめの本

雇用、利子、お金の一般理論 (講談社学術文庫)


国力とは何か―経済ナショナリズムの理論と政策 (講談社現代新書)


公共事業が日本を救う (文春新書)


官僚階級論 霞が関(リヴァイアサン)といかに闘うか (モナド新書010)


戦後脱却で、日本は「右傾化」して属国化する


国土学―国民国家の現象学 (叢書 新文明学4)


英語化は愚民化 日本の国力が地に落ちる (集英社新書)


アメリカのデモクラシー (第1巻上) (岩波文庫)


〈凡庸〉という悪魔 (犀の教室)


危機の二十年――理想と現実 (岩波文庫)


仮面の日米同盟 米外交機密文書が明かす真実 (文春新書)
リンク
月別アーカイブ
最新コメント
最新トラックバック
プロフィール

島倉原(しまくら はじめ)

Author:島倉原(しまくら はじめ)
 経済評論家。株式会社クレディセゾン主任研究員。経済理論学会および景気循環学会会員。
 メルマガ『島倉原の経済分析室』(毎週日曜日発行)や、メルマガ『三橋貴明の「新」日本経済新聞』(隔週木曜日寄稿)の執筆を行っています。

著書『積極財政宣言:なぜ、アベノミクスでは豊かになれないのか』(新評論、2015年)

RSSリンクの表示
メールフォーム
メールでのご質問・ご意見等はこちらからお願いします。

お名前:
メールアドレス:
件名:
本文:

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

おすすめの音楽

ザ・アイランド・イヤーズ(リマスター)(完全生産限定盤)


Piper at the Gates of Dawn


Doors


ジギー・スターダスト<2012リマスター>


十七歳の地図

ツイート一覧
QRコード
QR
FC2カウンター
FC2アフィリエイト
アフィリエイト・SEO対策