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難民受け入れは経済政策?

メルマガ「三橋貴明の『新』日本経済新聞」に寄稿しました。
今回のタイトルは「難民受け入れは経済政策?」で、9月30日に行われた安倍首相の国連での記者会見(下記動画参照)における、やや的外れな受け答えを題材に、アベノミクスの問題点について評論しています。
https://www.youtube.com/watch?v=hVYvJgBPDKI#t=47

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以下では今回の記事を掲載しています。


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【島倉原】難民受け入れは経済政策?

From 島倉原(しまくら はじめ)@評論家

おはようございます。
3日前、TPP交渉が大筋合意に達したことが発表されました。
私自身は勉強不足もあり、TPPあるいはグローバリズムの問題については、これまでほとんど発信してきませんでした。
しかしながら、最近改めて経済のグローバル化について調べている中で、「ビジネスの論理から見てもデメリットの方が大きい」という理論武装ができるのではなかろうか、と考えるようになってきました。
遅ればせながら、整理ができたところから折に触れて発信していければ、と考えています。

少なくとも今の段階で言えることは、GDPの合計が85%以上を占める6カ国以上の合意が、TPPの発効条件となっていること。
これは、日本の国会の承認がなければTPPは成立しないということであり、政治的には「内容に問題があるから参加しない」なんてとても言えない状況になっていることを意味します。
言い換えれば、仮に国会承認が行われない事態になれば、現政権にとっては間違いなく甚大なダメージになるであろう、ということです。

さて先週、安倍首相が国連総会の演説で、シリアやイラクなどの難民対策として、約970億円の支援を表明しました。
そして、演説後の記者会見で、日本がシリア難民を受け入れる可能性について問われたのに対し、

「これはまさに、国際社会で連携して取り組まなければならない課題であろうと思います。
人口問題として申し上げれば、われわれは移民を受け入れるよりも前にやるべきことがあって、それは女性の活躍であり、高齢者の活躍であり、出生率を上げていくにはまだまだ打つべき手があるがあるということでもあります。
同時に、この難民の問題については、日本は日本としての責任を果たしていきたいと考えております。それはまさに難民を生み出す土壌そのものを変えていくために、日本としては貢献をしていきたいと考えております」

と答えています。
https://www.youtube.com/watch?v=hVYvJgBPDKI#t=47
http://www.huffingtonpost.jp/2015/09/30/abe-refugee_n_8219324.html

最初と最後の部分はともかくとして、「人口問題として~」の部分は明らかに的外れな回答です。
なぜなら、戦乱や迫害による危険から逃れようとする難民と、経済的な理由によって移動する移民とを混同しているからで、これは今回の難民受け入れの是非以前の問題です。
http://www.amnesty.or.jp/human-rights/topic/refugee_and_migrant/

すなわち、国内経済とは別次元で論じられるべき難民受け入れ問題についてこうした回答をしたことは、こちらの記事にもあるように、「日本は自国の経済的利益しか考えていないのか」と外交上の見識を疑われても仕方がないように思います。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/245872/100100007/?P=1

少なくとも、質問をしたロイターを含む海外メディアの記事で、「移民」と発言した箇所を 「immigrants or refugees(移民または難民)」と翻訳されていることからすると、聞いていた人々を相当困惑させたことは間違いなさそうです。
当のロイター日本語版サイトで報道されていない(少なくとも私が検索した限りは見つかりませんでした)ことが、かえって本件の意外なインパクトを示している、というのは考えすぎでしょうか・・・。
http://www.reuters.com/article/2015/09/29/us-un-assembly-japan-syria-idUSKCN0RT2WK20150929
http://bigstory.ap.org/article/0671e0b9c75641eba2cfb550f00965eb/abe-japan-ready-help-refugees-not-take-them

恐らく首相は、セットで質問された「アベノミクス新・三本の矢」の二本目「夢を紡ぐ子育て支援」あたりと混同されたのでしょう。
とはいうものの、経済政策の問題と考えてみても、あまり筋の良い回答とは思えません。
そもそも、女性や高齢者の活躍に期待する前に、緊縮財政によって失われた「働き盛りの男性の就業、あるいは正規雇用の機会の回復」が先に来るべきなのですから。
http://on.fb.me/19wiql0
https://twitter.com/sima9ra/status/651390084747362305

これは何も、女性や高齢者はどうでもよい、と言いたいわけではありません。
働き盛りの男性の労働環境が改善される状況であれば自ずと、「可能であれば主婦やリタイアを選択したい」という方も含め、女性や高齢者にとっても今よりも環境が改善されているはず、という前提での議論です。

ざっくりですが、少なくとも「就業」という観点では70万人以上、「正規雇用」という観点では180万人以上、計250万人以上の働き盛りの男性が、機会損失をこうむっていると推定されます。
解決手段は、もちろん「積極財政」です。
詳しくは下記の第5章をご参照ください。
http://amzn.to/1HF6UyO


されど、問題解決は現実にはなかなか難しい。
なぜなら、そうした深刻な状況にあるという事実認識が安倍首相には乏しく、そのことが女性や高齢者の活躍に目を向けた、上記の発言につながったと考えられるからです。
実際、上記発言の前段では、

「日本はアベノミクスの三本の矢の政策によって、雇用、所得環境については、明確に改善しております。事実がわれわれの政策の正しさを示していると思います。そして、「デフレ脱却」までもう一息というところまで来ていますし、われわれは、成長できる国へと確実に生まれ変わりつつあります。」
https://www.youtube.com/watch?v=hVYvJgBPDKI#t=47

と述べられているのですから・・・。

しかも、消費税追加増税すなわち緊縮財政を標榜されている状況で、

「(新)第一の矢は、従来の三本の矢を強化することによって、戦後最大の経済に向け、GDP600兆円を目指す」
https://www.youtube.com/watch?v=hVYvJgBPDKI#t=47

と言われると、「(旧)第二の矢とは、実は緊縮財政のことだったのだろうか・・・」と思ってみたくもなるわけです。

いささか論理の飛躍があるかもしれませんが、今回の「移民」発言の背景には、経済政策に対する誤った理解が存在するように思えてなりません。
誤った理解があるからこそ、今回のような的外れな回答をしてしまう。
あるいは、誤った経済運営が思うような結果につながっていないがゆえに、外交・国際関係でも余裕を持った対応ができなくなる。
他方で両者は複雑に絡まり合っているという側面もあり、そうした関係が整理できていないため、下手をすれば取り返しがつかないほどの失敗を犯してしまう。

こうした構図はTPP問題や派遣法改正、あるいは三橋貴明さんが近著で取り上げられた農協問題にも通じるような気がします。
それとも、これぞ佐藤健志さんご指摘の「行き当たりばったりの思いつき」の典型的な事例なのでしょうか・・・。

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島倉原(しまくら はじめ)

Author:島倉原(しまくら はじめ)
 経済評論家。株式会社クレディセゾン主任研究員。経済理論学会および景気循環学会会員。
 メルマガ『島倉原の経済分析室』(毎週日曜日発行)や、メルマガ『三橋貴明の「新」日本経済新聞』(隔週木曜日寄稿)の執筆を行っています。

著書『積極財政宣言:なぜ、アベノミクスでは豊かになれないのか』(新評論、2015年)

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