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EUの日本化

メルマガ「三橋貴明の『新』日本経済新聞」に、『EUの日本化』というタイトルで寄稿予定です。
いつもとステップが異なりますが、今回の論稿用に作成したグラフからのリンク先として、その内容を予め公表します。

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http://www.mag2.com/m/0001007984.html

以下では今回の記事を掲載しています。


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【島倉原】EUの日本化

From 島倉原(しまくら はじめ)@評論家

読者の皆様はご存知かと思いますが、私は『経済とは経世済民なり~正しい政策とは何か』というタイトルでブログを執筆しています。
http://keiseisaimin4096.blog.fc2.com/

その記事をネタにすることが多いので、本メルマガに寄稿した直後にはブログへのアクセス数が急増するのが常なのですが、先週、そうしたイベントがないにもかかわらず、アクセス数が急増したことがありました。
調べてみると、前回寄稿時にご紹介した日米英独仏の19世紀以来の貿易依存度を示すこちらのグラフ
https://twitter.com/sima9ra/status/669174796727377921
http://on.fb.me/1PM6WN1

を藤井聡さんにフェイスブック上でご紹介いただいたことが、そのきっかけとなったようです。
http://on.fb.me/1IzJwrP

上記の藤井さんの論評の中に「ドイツ帝国がEUにほんとにできるなら,EUの貿易依存度は興味深いですね」というコメントがあり、私自身も興味を引かれたので、EU関連の統計を少々調べてみました。
そうしたところ、EUを一つの経済圏と見たときの「貿易依存度」についても実は興味深いデータが得られたのですが、残念ながらスッキリ解釈してまとめるには現時点の私が力量不足のところもあり、その点についてはまたの機会としたいと思います。

というわけで今回は、以前ご紹介した拙稿『「貿易依存度」から考える経済政策とTPP』でも述べた、
http://keiseisaimin4096.blog.fc2.com/blog-entry-118.html

「GDP=国内取引額+輸出額」

という関係を使って、EU経済の現状について述べてみたいと思います。

上記「国内取引額」は一般的な経済用語ではなく、ここでは「国内で生産されて国内で支出(消費または投資)に充てられた付加価値」という意味で用いています。
他方で、「外国で生産されて国内で支出に充てられた付加価値」はご存知のとおり「輸入」であり、両者を合わせると「国内における消費または投資の合計」となります。
したがって、「支出の総合計」としてのGDPの定義により、

GDP=国内消費または投資の合計+輸出-輸入
=(国内取引額+輸入)+輸出-輸入
=国内取引額+輸出

言い換えれば、

「国内取引額=GDP-輸出」

という関係が成立します。

そして、GDP統計からEUあるいはユーロ圏参加各国の名目国内取引額合計を算出し、その推移を示したのがこちらのグラフです。
比較対象である名目GDP合計も含め、2007年の値を100として指数化しています。
https://twitter.com/sima9ra/status/676820575851954178
http://on.fb.me/1P5a3fW

2007年といえばアメリカの住宅バブルがピークの時期で、それ以降のEUあるいはユーロ圏の名目GDPは、年率1%を切る低レベルとはいえ、一応成長を続けています。
ところが、「国内で必要なものを国内で作る」という最も本来的な経済活動の規模を示す名目国内取引額は、慢性的なマイナス成長に陥っているのです。
しかもこの間、リーマン・ショック直後の2009年を除けばEUあるいはユーロ圏のGDPデフレーターはプラスの伸びを示していますから、実質ベースで見ればより深刻な状況というわけです。
(参考までに、同時期のアメリカは名目GDPで年率2.4%、名目国内取引額で同2.0%の成長を遂げています)

こんなことを書くと、「島倉は国際貿易の意義を否定する鎖国論者か!!」という声も出てくるかもしれませんが、そういうことではありません。
国内で生じた需要は、文化的にも共通の基盤を持つ国内の経済活動によって満たされるのが最も自然なあり方ですし、その上で国際貿易はあくまで相互補完的に活用するのが国際社会にとっても平和と安定をもたらすことは、前回も述べたとおりです。
http://keiseisaimin4096.blog.fc2.com/blog-entry-126.html

なお、EUあるいはユーロ圏を1つの経済単位とみなした「域内取引額」については、残念ながら今回は確認できていません。
しかしながら、確認できた範囲のデータからは「国内取引額とGDPの中間」という、やはり低レベルのパフォーマンスであると推定されます。

とはいえ、ドイツとギリシャの状況を対比すれば明らかなように、EU経済の停滞は各国一様に生じているわけではありません。
こうした場合、単一国家であれば通貨発行権を持つ中央政府主導で、地域内の格差を補いながらの財政支出拡大、すなわち積極財政によって経済を支えるべきところですが、そうした機能が果たされないままに、全体としてのEU経済が停滞しています。
名目GDPの推移こそやや異なるものの、こうした状況は下記の図でも示されるとおり、緊縮財政によって1998年以降経済の低迷が続いている日本のそれと重なります。
https://twitter.com/sima9ra/status/676821887742173184
http://on.fb.me/1UuJseo

「大胆な金融緩和によるデフレ脱却」を掲げたアベノミクス以降も、日本の名目国内取引額は低迷しています。
しかも恐ろしいことに、少なくとも2%の「消費税増税によるかさ上げ効果」が生じているはずの2014年度ですら、名目国内取引額は縮小しているのです。
GDPと国内取引額の乖離具合が、2001年から2006年にかけての小泉政権時のそれに似ているように見えるのが、気のせいであれば良いのですが…。

なお本図では割愛していますが、実質ベースの国内取引額は、2013年度こそ補正予算と駆け込み需要の効果で増加したものの、2014年度はアベノミクス開始前の2012年度を下回る結果となっています。
これもまた、消費税増税すなわち緊縮財政の強烈な効果を示すものに他なりません。

日本経済が停滞し、国際情勢が不安定化している今こそ、積極財政を柱とした政策ビジョンが必要なはずです。
このことにご賛同いただける方は是非、

「日本経済の停滞は、金融緩和の不足ではなく緊縮財政と共に始まっている」
https://twitter.com/sima9ra/status/669165227120824320
http://on.fb.me/1LxuFJ6
「経済成長率が高い国ほど、財政支出を積極的に拡大している」
https://twitter.com/sima9ra/status/669166143022612480
http://on.fb.me/1Nbx4P9

ことを示した上記グラフの拡散にご協力いただければ幸いです。

〈島倉原からのお知らせ〉
「積極財政を柱とした政策ビジョン」を包括的に論じた一冊です。
http://amzn.to/1HF6UyO


金融市場が再度不安定化している今日この頃、その渦中にある人民元とユーロについて、2回に分けて論じてみました。こちらも是非ご活用ください。
http://foomii.com/00092/2015120602071130182
http://foomii.com/00092/2015121301480330305

3カ月前のものになりますが、本稿が出る頃には結果が出ているであろう、アメリカの利上げについての論稿です。
http://foomii.com/00092/2015091301000028649


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島倉原(しまくら はじめ)

Author:島倉原(しまくら はじめ)
 経済評論家。株式会社クレディセゾン主任研究員。経済理論学会および景気循環学会会員。
 メルマガ『島倉原の経済分析室』(毎週日曜日発行)や、メルマガ『三橋貴明の「新」日本経済新聞』(隔週木曜日寄稿)の執筆を行っています。

著書『積極財政宣言:なぜ、アベノミクスでは豊かになれないのか』(新評論、2015年)

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