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大局的に眺めてみれば・・・

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メルマガ『三橋貴明の「新」日本経済新聞』に、「大局的に眺めてみれば…」というタイトルで寄稿しました。
同メルマガの共同執筆者の1人である藤井聡・京都大学大学院教授の4月5日の記事「改めて宣言します。デフレこそが諸悪の根源です。」を参照しつつ、消費税増税を唱える緊縮財政論者の1人である土居丈朗・慶應義塾大学教授の議論が「大局観」に乏しい不合理なものであることを解説した上で、賃上げを実現して日本経済を立て直すには積極財政が重要性であることを論じています。

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http://www.mag2.com/m/0001007984.html

以下では今回の記事を掲載しています。

【島倉原】大局的に眺めてみれば・・・

From 島倉原(しまくら はじめ)@評論家

おはようございます。
一昨日の本メルマガは藤井聡さんによる、「改めて宣言します。デフレこそが諸悪の根源です。」というタイトルの論稿でした。
本日は同稿を参照しつつ、経済政策を議論する際に大局的な視点がいかに重要か(にもかかわらず、現実の議論ではそうした視点がいかに欠落しているか)について、別の角度から考えてみたいと思います。
http://www.mitsuhashitakaaki.net/2016/04/05/fujii-190/

藤井さんによれば、ひとたび大局的な視点から眺めれば、デフレ、より厳密に言うならば国民全体の所得が伸びないことが、待機児童問題から東京一極集中・地方衰退問題、ひいては外交問題にいたるまで、様々な国民的課題の背後に横たわっていることが見て取れます。
にもかかわらず、「デフレなんて大した問題じゃない」という意識が潜在的にはびこっているが故に、現状認識を深めようとする努力がおろそかになり、こうした大局的な理解を妨げている状況について、問題提起されています。

待機児童問題については、「国民所得が高ければ、わざわざ共働きをしないという女性も増え、待機児童それ自身が少なくなる」「待機児童の問題そのものが、デフレがなければあっと言う間に無くなってしまうことは十分にあり得る」というのが藤井さんの議論です。
これは、アベノミクスの成果としてしばしばアピールされる「女性を中心とした雇用の拡大や失業率の低下」が、「雇用環境の改善」という前向きな成果ではなく、むしろ「家計の所得環境悪化」という後ろ向きな成果なのではないか、という問題意識にもつながります。

実態として家計の所得環境が悪化していることは、前回「もう1つの緊縮財政」で論じたとおりですし、
http://www.mitsuhashitakaaki.net/2016/03/24/shimakura-4-2/

雇用環境がある意味でむしろ悪化していることは、働き盛りの男性において正規雇用率が低下し、求職活動すらしていない非労働力人口比率が上昇しているという事実から確認できます。
https://twitter.com/sima9ra/status/670646973922430976

このように、「どちらの要因がより本質的なのか」を判断するに際して多様な切り口から確認してみよう、という姿勢もまた、大局的な視点を保つ上で重要な要素と言えるでしょう。

また、藤井さんは、デフレを軽視して頑ななまでに消費税増税あるいは緊縮財政にこだわる「精神的現象」の事例として、財政学の「専門家」である土居丈朗・慶應義塾大学教授の論稿「家計所得低迷の原因は、実質所得低迷にあり 消費増税のせいにしていては何も解決しない」を取り上げられておられます。
実はここでも、経済政策を論じる上での大局的な視点の重要性が見て取れます。

土居氏の議論は、手取り所得の減少が家計消費の減少に直結する所得税増税と異なり、消費税増税は手取り所得を減らすわけではなく、モノの値段を上げることで家計の購買力、ひいては実質的に消費を押し下げる点で効果も影響が及ぶルートも異なる、と述べるところからスタートします。
その上で、

「2014年度に消費税増税によって実質所得が減ったとしても、増税の影響が一巡した2015年度の実質所得が伸び悩んだのはもはや消費税増税のせいではなく、企業が賃上げに積極的ではないからである」
「賃上げに消極的な理由としては、国内の需要不足(売上の伸び悩み)と労働生産性の伸び悩みの2通り考えられるが、補正予算や消費税の引き下げといった、短期的な需要不足解消を目的とした財政刺激策では、企業にとって中長期的な業況改善の見通しが立たないため、固定費的な性格を持つ人件費の増加すなわち賃上げにはつながらない(わが国の財政状況では、長期継続的な財政出動はそもそも成立しない)」
「他方で、人工知能やロボットなど第4次産業革命と呼ばれる動きが浸透しつつあり、これまで以上に労働生産性を高めるチャンスが訪れている」
「ゆえに、取り組むべきは成長戦略による労働生産性の不可逆的な向上であって、消費税増税の先送りではない。そもそも、家計負担分が外国に流れる石油など輸入天然資源の値上がりによる物価上昇と、日本政府の収入になる消費税増税による物価上昇を比べれば、どちらがよいかは推して知るべしである」

といった議論を展開しています。
http://toyokeizai.net/articles/-/112008

最後の、「消費税増税の方が輸入資源の値上がりに比べればまだまし」という議論の仕方はいかにも乱暴で、藤井さんご指摘の「『デフレなんてたいした問題じゃない』という意識」がにじみ出ているとも言えます。
さはさりながら、今回はそこにはこれ以上突っ込まず、あくまでも「大局観」という切り口から、問題点を指摘したいと思います。

まず、「国内需要不足の中長期的な解消は困難だから、労働生産性の向上で問題を解決すべき」という議論。
大局観という切り口からも、「中長期的に問題解決を図るべき」という土居氏のご指摘は、確かにおっしゃるとおりです。

しかしながら、労働生産性とは労働者1人当たりの付加価値生産額、言い換えれば労働者1人当たりのGDPであるところ、「GDP=国内総生産=国内総支出」という「定義」からして、支出すなわち需要の不足が解消困難なのに付加価値だけを引き上げる、というのは相当無理がある議論です。
こう書くと、「国内がダメなら海外、すなわち輸出でGDPは増やせるじゃないか」という反論がありそうですが、海外でしかビジネスの拡大が見込めない状況では、上がった利益は海外の設備や人に重点的に投資されるのが企業経営の道理であり、国内での人への投資、すなわち賃上げには結びつきづらいと考えられます。
また、もともと日本の貿易依存度は、アメリカ、ブラジルなどと並んで国際的に見ても低い部類に入りますから、外需拡大を引き金とした賃上げを期待することには、おのずと限界があるはずです。

事実、1998年のデフレ突入以降、国内投資の削減によって企業部門は恒常的な貯蓄超過となっていますし、厚生労働省『平成27年版 労働経済の分析』によれば、1990年代後半以降の日本は、ユーロ圏を上回る労働生産性の伸びを示したにもかかわらず、1人当たり雇用者報酬は(ユーロ圏のそれが労働生産性と共に増加しているのに対して)むしろ減少傾向にあります(下記PDFファイルの3枚目下段参照)。
http://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/roudou/15/dl/15-1-2_01.pdf

すなわち、国内需要が不足してデフレ環境にあり、企業利益の原資でもある名目GDPが過去20年全くと言っていいほど成長していない現在の日本においては、「中長期的に労働生産性が向上すれば賃上げが実現する」という構図は成立しないというのが、理論的かつ実証的な結論なのです。
だとすれば、「需要がないところに付加価値は生まれない」というマクロ経済の基本的な命題に加え、日本経済の長期的な現実を無視している土居氏の議論は、本来あるべき前提を欠いた、まるで大局観に乏しいものと言わざるを得ません。

他方で、以上の検討からは半ば必然的に、土居氏が避けて通った「国内需要不足(デフレ、あるいは所得の伸び悩み)の中長期的な解消」こそが、採用されるべき、事実上残された唯一の処方箋であるという結論が導かれます。
そのためには、「財政支出に積極的な国ほど、名目経済成長率が高い」という「中長期的な事実」に基づく財政支出の中長期的、継続的な拡大こそが大局観にも基づいた解決策となることは、常日頃述べているとおりです。
https://twitter.com/sima9ra/status/669166143022612480

また、上記の事実とも関連しますが、土居氏の議論に完全に欠落しているのは、「政府の取り分を増やす消費税増税に代表される『中長期的な緊縮財政の姿勢』は、その分企業の取り分を減らして国内での利益成長期待を低下させることで、直接的な賃下げ要因になる」という視点です。
1つの主体の行動が経済全体に与える影響を見逃している点で、これまた大局観の乏しさを示すものと言えるのではないでしょうか。
(なお、「わが国の財政状況では、長期継続的な財政出動はそもそも成立しない」という土居氏の「誤解」に対する反論は、またの機会に行いたいと思います)

藤井さんはこのたび、「デフレこそが諸悪の根源」と改めて宣言されました。
私自身はその解決手段として、そろそろ1年になりますが、改めて「積極財政」を宣言したいと思います。
http://keiseisaimin4096.blog.fc2.com/blog-entry-94.html


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〈島倉原からのお知らせ〉
先週末、大企業の業況判断悪化を示す日銀短観を受けて、株式市場も大幅に下落しました。
今回の結果に示されているアベノミクスの歪んだ成果と共に、そうした中でも好調さを示す産業にはたらく景気循環メカニズムについても考察しています。
↓「日銀短観が映すアベノミクスの歪み」
http://keiseisaimin4096.blog.fc2.com/blog-entry-157.html

ITバブル発生シナリオを念頭に置きつつ、従来から述べてきた世界経済の長期サイクルとは別に存在するIT業界固有のサイクルに着目すると共に、IT業界の変化の潮流を踏まえて株式市場の動向についても考察してみました。
前回ご紹介した記事と合わせてご参考になれば幸いです。
↓「IT業界の景気サイクルと株式市場」
http://keiseisaimin4096.blog.fc2.com/blog-entry-156.html
↓「グーグルの人工知能と株式市場」
http://keiseisaimin4096.blog.fc2.com/blog-entry-154.html


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島倉原(しまくら はじめ)

Author:島倉原(しまくら はじめ)
 経済評論家。株式会社クレディセゾン主任研究員。経済理論学会および景気循環学会会員。
 メルマガ『島倉原の経済分析室』(毎週日曜日発行)や、メルマガ『三橋貴明の「新」日本経済新聞』(隔週木曜日寄稿)の執筆を行っています。

著書『積極財政宣言:なぜ、アベノミクスでは豊かになれないのか』(新評論、2015年)

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