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機能的財政論から見た日本経済

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インターネット動画「チャンネルAjer」の収録を行いました。
今回は「機能的財政論から見た日本経済」というタイトルで、全体で約40分のプレゼンテーションです。

・動画前半『機能的財政論から見た日本経済①
・動画後半『機能的財政論から見た日本経済②

機能的財政論とは、ジョン・メイナード・ケインズの弟子の1人であるアメリカの経済学者アバ・ラーナー(Abba Lerner, 1903-1982. 詳細は下記ウィキペディアのURL参照)が提唱した政策論で、「財政政策は(財政収支や政府債務の多寡ではなく)完全雇用の達成や物価の安定といった経済全体のパフォーマンスを目的とし、その目的にかなった政策を状況に合わせて採用すべきである」というものです。
その枠組みを用いて日本経済の現状を改めて分析し、適切な経済政策を考えてみよう、というのが今回の議論です(機能的財政論については、できれば今後も継続的に論じてみたいと考えており、今回はその1回目ということになります)。
http://bit.ly/23XbvvB

↓今回のプレゼン資料(4ページを動画収録時のものから若干修正しています)は下記URLから閲覧、ダウンロードが可能です(ツイッター、フェイスブック、グーグルプラスで共有も可能なので、是非ご活用ください)。
http://twitdoc.com/5PM1
(スマホなどで資料が上手くめくれない場合は、左下の「Download」を押すと画面が切り替わり、上手くめくれるようです)

以下はプレゼンテーションの概要です。

経済全体への効果で政策の良し悪しを判断する機能的財政論

機能的財政論を解説した文献としては、ラーナーが1943年に出版した論文 “Functional Finance and the Federal Debt” (「機能的財政と連邦政府の債務」、Social Research, 1943, pp. 38-51) があります。
日本語の文献では、ラーナー自身の著書を翻訳した『雇用の経済学』『統制の経済学』、あるいは評論家の中野剛志氏の著書『国力とは何か』で紹介されています。
      


ラーナーは上記論文において、

「生産可能な財(やサービス)の全てが現在の価格で購入される状態に国全体の支出(総需要)を保つことが、財政政策における政府の第1の責任である。」

と述べています。

「生産可能な財の全て」とは、国の生産能力をフルに発揮した「完全雇用状態で生産された財」と言い換えることもできます。他方で「現在の価格で」は物価の安定を意味します。
すなわち、財政政策とは上記の責任を果たすための手段であり、政府は複数ある政策手段(経費支出(財/サービスの購入)、徴税、借入、債務返済、通貨発行、通貨吸収(上記論文からは必ずしも明らかではありませんが、財/サービスの売却を指すと考えられます))の中から現状に最も適したものを都度選択し、国全体の支出(総需要)を主体的にコントロールすべきである、というのが機能的財政論の骨子です。

他方で、上記の手段それ自体には良いも悪いもないことも合わせて指摘しています。
例えば、一般的な議論で重要視される財政収支の均衡は、徴税権を背景として国家が通貨発行権を握っている、即ち、いざとなれば新たな通貨発行により政府債務の返済が可能な現代においては重要な問題ではなく、財政赤字や政府債務を罪悪視するのは実は誤った思い込みということになります。
のみならず、そうした考え方にとらわれることは、「完全雇用と物価の安定」という最も重要な目的を阻害する可能性がある分、かえって有害であるとも述べています。



デフレ/不完全雇用状況にある日本で行うべきは増税に頼らない財政支出の拡大

上記で掲げた財政政策の手段は、「資金支出行為」と「資金調達行為」に二分することができ、現実の財政政策は両者の組合せによって実行されます。

このうち、政府の資金支出行為にあたるのが「経費支出」「債務返済」の2つです。
言うまでもなく経費支出は、総需要を直接増加させる行為です(逆に経費支出を削減すれば、その分総需要が減少します)。

これに対して債務返済は、政府以外の主体が保有する政府債務という金融資産を通貨と交換する行為であり、総需要を直接増加させることはありません。
もちろん、通貨を入手した政府以外の経済主体(家計や企業など)がそれを財/サービスの購入に充てる、あるいは新たな金融資産の購入に充てることで経済全体の金利が低下する、といった間接的な経路を通じて、総需要の増加につながる可能性が理論的にはありえますが、その効果はあくまで限定的ですし、これまで支出していた経費を削減して債務返済を優先する場合には、総需要に明らかにマイナスです(その意味では、政府あるいは中央銀行が株式や土地といった資産を購入するのも、全く同じではないものの、類似した行為であると考えられます)。

他方で、上記2つ以外の手段はいずれも政府の資金調達行為に当たります。
そのうち、間接税(消費税など)や財/サービスの売却(公共サービスの有料化、あるいは値上げ)は民間の支出意欲を直接削ぐものなので、総需要へのマイナス効果が最も強いと考えられます。
次いでマイナス効果が強いのは、所得税や法人税など、民間の可処分所得を減らして間接的ながら総需要に影響を与える直接税と考えられます。
その次は、「市場金利の上昇」というさらに間接的な経路を通じて総需要にマイナス効果を与えうる借入。
最後に来るのが通貨発行で、それ自体が総需要に与える効果は中立、すなわちプラスでもマイナスでもありません。

※「通貨発行は中立」という記述に違和感を覚える向きもあるかもしれませんが、例えば国債を日銀が引き受けたことにして政府名義の日銀当座預金の残高を増やしただけでは政府内の変化に過ぎず、実体経済には全く影響がありません。そうして増えた預金残高を政府が何かの支払いに充ててはじめて、総需要に影響をもたらします。

では、現在の日本にとって望ましい財政政策の組合せは何でしょうか。
「国内経済の実態はデフレが続いている(図表1)」「製造業の生産能力は余剰感のもとで縮小が続いている(図表2)」「(リーマンショック直後と比べても)非労働力人口の比率が増える一方で正規雇用の比率が減っており、労働力の活用度は低下している(図表3)」といった事実を踏まえれば、日本が「完全雇用には程遠い総需要不足(デフレ)状態」であることは明らかで、

「総需要へのマイナス効果が大きい増税ではなく、通貨発行または借入によって資金調達し(場合によっては減税もセットにしてその分は通貨発行や借入で賄い)、財政支出を拡大する」

のが適切な政策の組合せであることは明らかです。

【図表1:各種デフレーターの推移(前年同期比)】

(↓フェイスブックページで同じ図表をご覧になるにはこちら)
http://bit.ly/1SwVJAe


【図表2:製造工業生産能力指数の推移】

(↓フェイスブックページで同じ図表をご覧になるにはこちら)
http://bit.ly/1SwXZaN


【図表3:25~54歳男性の就業状況の推移】

(↓フェイスブックページで同じ図表をご覧になるにはこちら)
http://bit.ly/1rDpSUK



機能的財政論にそぐわないリフレ派金融政策&アベノミクス

これに対して、「大胆な金融緩和をすればデフレから脱却できる」というリフレ派金融政策(異次元金融緩和やマイナス金利政策)そしてアベノミクスは、効果が乏しい、場合によっては逆効果な政策であることを、機能的財政論に則って導き出すことができます(このことは、リフレ派とケインズ経済学が別物であることの例証とも言えると思います)。

そもそも機能的財政論においては、信用創造機能を持つ民間銀行は、政府にとっては事実上中央銀行同様の通貨発行代理人であり、民間銀行による国債の引き受けは政府にとって借入れではなく、通貨発行と考えるべきであるとされています。
(原文:Borrowing money from the banks, on conditions which permit the banks to issue new credit money based on their additional holdings of government securities, must be considered for our purpose as printing money. In effect the banks are acting as agents for the government in issuing credit or bank money. ~上記ラーナー論文41ページ(4枚目)の脚注参照)

この議論はまた、一般的には財政政策と区別されている金融政策も、機能的財政論のもとでは財政政策の一部として整理できることを示しています。

だとすれば、ほとんど日銀による民間銀行からの国債買い上げによって成り立っている異次元金融緩和は、理論的には民間銀行同士の国債売買と何ら変わりがなく、マネタリーベースの膨張とは裏腹に、新たな通貨発行すら行っていないということになります。
すなわち、機能的財政論の観点からは、財政支出拡大のために政府が追加で国債を発行し、それを余力が生じた民間銀行が購入した時にはじめて、新たな通貨発行が行われたということになるわけですから、リフレ派の理論は全く無意味なものになります。

もちろん、債務返済のところで述べたように、政府の代理人である中央銀行が国債を購入(すなわち債務を返済)することで市場金利の低下を促したり、あるいは民間企業の側面も持つ民間銀行の資産売却益を増やすことで設備投資や賃上げを促し、間接的に総需要増加に貢献する可能性がないわけではありません。
しかしながら、仮にリフレ派/黒田日銀の金融政策を、「実質ゼロの通貨発行」ではなく「通貨発行で資金調達して(ひょっとしたら総需要に間接的にプラスかもしれない)債務返済という資金支出を行っている」と評価したとしても、総需要へのプラス効果が高い経費支出に優先して敢えて効果に乏しい資金支出行為を政策手段として採用していることになるので、これまた理論的に不適切な政策ということになります。

しかも、現実にはそうした間接的な効果すらほとんど生じないことが、アベノミクスの3年余りでリフレ派自身の手によって立証されています(図表4)。
ましてや、民間銀行の収益に直接的にマイナス効果を及ぼすマイナス金利政策に至っては、(これまた無視できるレベルかもしれませんが)理論的には却って総需要を減らす可能性さえあるわけです。

【図表4:日本のマクロ経済指標の推移(1980~2015年)】
(↓フェイスブックページで同じ図表をご覧になるにはこちら)
http://on.fb.me/1LxuFJ6


また、アベノミクス全体で見ても、2013年度までは「通貨発行と経費支出(10兆円の補正予算)」という、総需要増加に最も効果的な調達と支出の組み合わせが一部含まれていたわけですが、2014年度からは調達が総需要に最もマイナスな間接税(消費税増税)に置き換わり、実質的な直接税増税(社会保険料引上げ)も並行して行われ、片や上述したような無効またはマイナスな金融政策が垂れ流され、といった具合に、機能的財政論にはそぐわない政策パッケージとなっていることは明らかです。
やはり、不完全雇用でデフレが続く日本経済の再建の柱となるべきは、増税に頼らず財政支出を拡大する積極財政政策なのではないでしょうか。

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島倉原(しまくら はじめ)

Author:島倉原(しまくら はじめ)
 経済評論家。株式会社クレディセゾン主任研究員。経済理論学会および景気循環学会会員。
 メルマガ『島倉原の経済分析室』(毎週日曜日発行)や、メルマガ『三橋貴明の「新」日本経済新聞』(隔週木曜日寄稿)の執筆を行っています。

著書『積極財政宣言:なぜ、アベノミクスでは豊かになれないのか』(新評論、2015年)

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