返す必要のない「国の借金」
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メルマガ『三橋貴明の「新」日本経済新聞』に、「返す必要のない「国の借金」」というタイトルで寄稿しました。
「自国通貨建ての政府債務は、金額ベースでも実質残高ベースでも、返済して減らす必要は無い」という現実を見落としていることが、いわゆる「国の借金」(政府の債務)を巡る多くの誤った議論の背景に存在することを、日本の長期に渡る政府債務残高のデータを示しながら論じています。
http://www.mitsuhashitakaaki.net/2016/08/25/shimakura-55/
なお、本稿は下記の通り、総合金融情報サイト『MONEY VOICE(マネーボイス)』にも掲載されています。
http://www.mag2.com/p/money/21439
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http://www.mag2.com/m/0001007984.html
以下では今回の記事を転載しています。
【島倉原】返す必要のない「国の借金」
From 島倉原(しまくら はじめ)@評論家
前々回はヘリコプターマネー、前回はそこから派生して財政ファイナンスを取り上げました。
政府の経済対策が発表されて三週間が経過し、ヘリコプターマネー自体は既に旬の話題ではなくなった感もありますが、今回はもう少し話を拡げ、いわゆる「国の借金」について考えてみたいと思います。
さて、グーグルに「ヘリコプターマネー」というキーワードを入力してニュース検索してみたところ、上位2つの記事、というか評論には、それぞれ以下のような記述がありました。
まず、三菱UFJリサーチ&コンサルティングという大手シンクタンクの主席研究員である小林真一郎氏が執筆した『夢の政策かばらまきか。「ヘリコプターマネー」政策、その効果とリスク』には、
「ヘリコプターマネーは、政府が借金を増やして歳出を拡大させる「ばらまき政策」とは違います。政府が国債を発行して資金を調達し、これを社会保障費、減税による還付金、各種の給付金などの支払いに使った場合、家計や企業は手元にマネーを得ることができます。しかし、同時に、国の借金の増加は将来的に増税や歳出カットというかたちで国民に負担がかかることを意味します」
http://www.huffingtonpost.jp/shinichiro-kobayashi/helicopter-money_b_11301476.html
また、民進党の衆議院議員で、財務省出身の岸本周平氏が執筆した『ヘリコプターマネーとは?』には、
「民間の貯蓄の裏付けなしに、お金をばらまけば必ずインフレになります。戦争中にGDPの2倍の「ヘリコプターマネー」を出した日本では、戦後の物価が100倍になりました(1945年―51年)。戦後も「ヘリコプターマネー」を出し、借金の残高は3倍になりましたが、物価が100倍ですから国の債務は30分の1になり、借金は国民の負担でチャラになりました」
http://blogos.com/article/187130/
と書かれています。
この2つの記述に共通するのはいずれも、いわゆる「国の借金」(三橋貴明さんがたびたび「政府の負債」と呼ぶべきと指摘しているもの)が、いずれは返済、もしくは清算して減らさなければならないもの、という前提です。
すなわち、国の借金はいずれ金額そのものを減らさなければならない、というのが「国の借金の増加は将来的に増税や歳出カットというかたちで国民に負担がかかることを意味します」と述べている小林氏の議論の前提であり、
金額そのものが減らないのであれば、インフレという国民の負担によって実質的な残高を減らすことがいずれ不可避になる、というのが岸本氏の言わんとするところであるのは明らかです。
しかしながら、額面にせよ、実質的な残高にせよ、いわゆる「国の借金」(以下では、「中央政府の負債もしくは債務=National Government Debt」を議論の対象にします)は減らさなければならないものなのでしょうか。
事実として、国の借金は明治以来約140年、金額ベースでも実質残高ベースでも減っていないことを示すのが、財務省のデータなどから作った下記のグラフです。
https://twitter.com/sima9ra/status/768397725503135744
http://bit.ly/2bvrB9P
青い実線で示した債務金額は、国の借金問題が喧伝されるようになった1990年代よりはるか以前、明治維新の頃からほぼ一貫して増加し、減る気配は一向にありません。
他方で、赤い点線で示した実質残高は、確かに岸本氏の指摘する通り、1946年以降1951年まで、インフレを反映して一旦は急激に減少しています。
しかしながら、実質残高も1950年代以降は再び増加に転じ、少なくとも1980年には、敗戦で壊滅的な状況に陥って「チャラに」せざるをえなかったはずの1945年の実質残高を超え、その後もほぼ一貫して増加を続けています。
本当に国の借金が減らさなければならないものだとしたら、壊滅的状況であったはずの当時を上回る実質残高を、35年も続けられるわけはありません。
小林氏のみならず、岸本氏の議論も現実離れした前提に基づくものであることは、この事実だけ見ても明らかです。
少なくとも「国債に代表される政府債務の償還が、広い意味で政府の一部門である中央銀行が自在に発行できる『通貨』という別の政府債務を提供する形で行われる(=政府債務が自国通貨建てである)」という制度的枠組みが成立している限り、こうした現実が政府の意図に反して崩れることはありません。
すなわち、「借金の返済」ではなく、「債務の交換」を行なうことが絶えざる前提となっているため、金額ベースでも実質残高ベースでも、政府債務を減らす必要がないわけです。
経済政策の適切なあり方を論じるにあたっては、現実的な前提に基づいて論理的な議論を行うべきことは言うまでもありません。
しかしながら、今回ご紹介した記事でも示されているように、本メルマガの読者にとっては当然過ぎるかもしれない政府債務に関する大前提が、いわゆる有識者の議論の多くにおいて共有されていないのが現実です。
「借金=返すべきもの」というイメージ操作のなせるわざでしょうか、いわゆる「国の借金」を巡る議論の背景にはこうした深刻な誤解があることを、改めて問題提起しておきたいと思います。
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〈島倉原からのお知らせ〉
↓現実的な前提のもとで、適切な経済政策は財政支出を継続的に拡大する積極財政であることを論じた拙著『積極財政宣言:なぜ、アベノミクスでは豊かになれないのか』のあらすじを紹介しています。
http://keiseisaimin4096.blog.fc2.com/blog-entry-94.html


元FRB議長のグリーンスパン氏が、アメリカ経済のスタグフレーションを懸念しつつ、遠からず金利が急速に上昇するとの予想を示しました。
同氏の議論の妥当性を検証しつつ、今後の金融市場の動向について考察しています。
↓「グリーンスパン氏の警鐘」
http://keiseisaimin4096.blog.fc2.com/blog-entry-190.html
FRBによる利上げが行われない中で、アメリカ株の主要指数が史上最高値を緩やかに更新しています。
「適温相場」と評されるそうした状況について、金融循環論の見地から考察しています。
↓「適温相場の持続力」
http://keiseisaimin4096.blog.fc2.com/blog-entry-189.html
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前々回はヘリコプターマネー、前回はそこから派生して財政ファイナンスを取り上げました。
政府の経済対策が発表されて三週間が経過し、ヘリコプターマネー自体は既に旬の話題ではなくなった感もありますが、今回はもう少し話を拡げ、いわゆる「国の借金」について考えてみたいと思います。
さて、グーグルに「ヘリコプターマネー」というキーワードを入力してニュース検索してみたところ、上位2つの記事、というか評論には、それぞれ以下のような記述がありました。
まず、三菱UFJリサーチ&コンサルティングという大手シンクタンクの主席研究員である小林真一郎氏が執筆した『夢の政策かばらまきか。「ヘリコプターマネー」政策、その効果とリスク』には、
「ヘリコプターマネーは、政府が借金を増やして歳出を拡大させる「ばらまき政策」とは違います。政府が国債を発行して資金を調達し、これを社会保障費、減税による還付金、各種の給付金などの支払いに使った場合、家計や企業は手元にマネーを得ることができます。しかし、同時に、国の借金の増加は将来的に増税や歳出カットというかたちで国民に負担がかかることを意味します」
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また、民進党の衆議院議員で、財務省出身の岸本周平氏が執筆した『ヘリコプターマネーとは?』には、
「民間の貯蓄の裏付けなしに、お金をばらまけば必ずインフレになります。戦争中にGDPの2倍の「ヘリコプターマネー」を出した日本では、戦後の物価が100倍になりました(1945年―51年)。戦後も「ヘリコプターマネー」を出し、借金の残高は3倍になりましたが、物価が100倍ですから国の債務は30分の1になり、借金は国民の負担でチャラになりました」
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この2つの記述に共通するのはいずれも、いわゆる「国の借金」(三橋貴明さんがたびたび「政府の負債」と呼ぶべきと指摘しているもの)が、いずれは返済、もしくは清算して減らさなければならないもの、という前提です。
すなわち、国の借金はいずれ金額そのものを減らさなければならない、というのが「国の借金の増加は将来的に増税や歳出カットというかたちで国民に負担がかかることを意味します」と述べている小林氏の議論の前提であり、
金額そのものが減らないのであれば、インフレという国民の負担によって実質的な残高を減らすことがいずれ不可避になる、というのが岸本氏の言わんとするところであるのは明らかです。
しかしながら、額面にせよ、実質的な残高にせよ、いわゆる「国の借金」(以下では、「中央政府の負債もしくは債務=National Government Debt」を議論の対象にします)は減らさなければならないものなのでしょうか。
事実として、国の借金は明治以来約140年、金額ベースでも実質残高ベースでも減っていないことを示すのが、財務省のデータなどから作った下記のグラフです。
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青い実線で示した債務金額は、国の借金問題が喧伝されるようになった1990年代よりはるか以前、明治維新の頃からほぼ一貫して増加し、減る気配は一向にありません。
他方で、赤い点線で示した実質残高は、確かに岸本氏の指摘する通り、1946年以降1951年まで、インフレを反映して一旦は急激に減少しています。
しかしながら、実質残高も1950年代以降は再び増加に転じ、少なくとも1980年には、敗戦で壊滅的な状況に陥って「チャラに」せざるをえなかったはずの1945年の実質残高を超え、その後もほぼ一貫して増加を続けています。
本当に国の借金が減らさなければならないものだとしたら、壊滅的状況であったはずの当時を上回る実質残高を、35年も続けられるわけはありません。
小林氏のみならず、岸本氏の議論も現実離れした前提に基づくものであることは、この事実だけ見ても明らかです。
少なくとも「国債に代表される政府債務の償還が、広い意味で政府の一部門である中央銀行が自在に発行できる『通貨』という別の政府債務を提供する形で行われる(=政府債務が自国通貨建てである)」という制度的枠組みが成立している限り、こうした現実が政府の意図に反して崩れることはありません。
すなわち、「借金の返済」ではなく、「債務の交換」を行なうことが絶えざる前提となっているため、金額ベースでも実質残高ベースでも、政府債務を減らす必要がないわけです。
経済政策の適切なあり方を論じるにあたっては、現実的な前提に基づいて論理的な議論を行うべきことは言うまでもありません。
しかしながら、今回ご紹介した記事でも示されているように、本メルマガの読者にとっては当然過ぎるかもしれない政府債務に関する大前提が、いわゆる有識者の議論の多くにおいて共有されていないのが現実です。
「借金=返すべきもの」というイメージ操作のなせるわざでしょうか、いわゆる「国の借金」を巡る議論の背景にはこうした深刻な誤解があることを、改めて問題提起しておきたいと思います。
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同氏の議論の妥当性を検証しつつ、今後の金融市場の動向について考察しています。
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「適温相場」と評されるそうした状況について、金融循環論の見地から考察しています。
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