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乗数効果をどう考えるか

インターネットテレビ「チャンネルAJER」の収録を行いました。
今回のタイトルは「乗数効果をどう見るか」で、全体で約45分のプレゼンテーションになっています(動画は前半・後半に分かれていて、それぞれ7月26日(金)と8月2日(金)にアップロードされる予定です。)。

乗数効果」とは、

「政府支出の拡大が、その分民間部門の所得を拡大し、所得を得た民間部門が今までよりも支出を拡大し、最終的には政府支出拡大分の何倍にも相当するGDPが新たに発生する」
(「何倍」の数字をもって「乗数」と言います)

というメカニズムを説明するマクロ経済学上の概念です。

「乗数効果はそれほど高くない」というのは、実は経済政策としての財政支出拡大を否定的にとらえる有力な論拠の1つとなっています。
今回は、乗数効果に対するそうしたネガティブな評価をもたらす論理を説明した上で、それが実際には非現実的な前提に基づいた不当な結論ではないか、というプレゼンテーションをしています。プレゼン資料は下記の通りです。

【プレゼン資料】
乗数効果をどう考えるか.pdf

以下は、動画へのリンクとプレゼン内容の要旨及び補足です。
【チャンネルAjer動画へのリンク】
(①③はチャンネルAjerへの無料会員登録、②④は月1,050円の有料会員登録が必要になります。)
乗数効果をどう考えるか(前編)①
乗数効果をどう考えるか(前編)②
乗数効果をどう考えるか(後編)③
乗数効果をどう考えるか(後編)④

①③については、チャンネルAjerに登録せずにユーチューブやニコニコ動画でご覧いただくことも可能です。

[前編①]




[後編③]




乗数効果をネガティブに評価する論者の多くは、端的に言うと「1990年代(特に前半)の財政支出額の変動と、同時期のGDP変動額の相関関係」によって乗数効果を測定しています(VAR~Vector AutoRegression、翻訳すれば「ベクトル自己回帰」~という手法で、実際には過去の財政支出額の変動や財政支出以外の要素も説明変数に加えたりしているので、もっと複雑で、しかも論者毎に異なる計算を行っているのですが、基本的には上記に述べた構造です)。

(↓ネガティブ論者の一例です)
http://www.mof.go.jp/pri/publication/financial_review/fr_list4/r63/r_63_036_068.pdf

しかしながら、こうした計算方法は「経済は常に生産要素が最適化された均衡状態にある」という古典派経済学的な前提があってはじめて成立する、ということに注意する必要があります。

今回のプレゼンでは、そうした前提が成り立たない一例として、ポール・サミュエルソンというアメリカの経済学者が70年以上前に提示した「乗数=加速度モデル」を取り上げました。
これは、過去から観察される「投資の加速度原理」(民間投資は、GDPの変動額に比例して発生し、結果としてGDPそのものよりも激しく変動する)という経験則を、「所得と支出の時間差」という前提、及びケインズ型の消費関数と合わせてモデル化したものです(詳細はプレゼン資料の7ページをご覧ください)。
このモデルの下では、乗数効果が一定であっても「GDPの増加額=政府支出の増加額×乗数」という関係は必ずしも成り立ちません。
モデル式の係数の取り方によっては、実際のGDPは、「政府支出額×乗数」で算出される「GDPの均衡水準」の周囲を一定の周期で上下することになります。
仮に現実の経済が、こうした「内生的な景気循環メカニズム」をはらんだものであるとすると、ネガティブ論者のような計算によって乗数効果を測定することは、そもそもナンセンスということになります(下降局面においては、プラスの乗数効果が存在するにもかかわらず、政府支出を増やしてもGDPが減少することすら有り得る)。

となると問題は、経済の本当の姿はどうなっているのか、ということに尽きます。
バブルやその崩壊、直近ではリーマン・ショックのような大惨事を引き起こすような現実の経済が、古典派経済学的な均衡状態にあるとは到底思えません。
他方で、いつも私が述べているように「長期的には『名目GDP成長率≒名目公的支出伸び率』の関係が成立」しており、かつ「日本の『名目GDP÷名目公的支出』の長期的な推移をたどってみると、不動産バブルの発生と連動した、20年弱の周期性が観察できる」という事実(プレゼン資料9ページ参照)からすると、「経済とは不均衡を伴うう内生的な景気循環メカニズムをはらんで推移するもの」と考えるのがむしろ妥当ではないでしょうか(もちろん二者択一とは限らず、「第三の可能性」も当然ありえますが)。
とはいうものの、上記の「乗数=加速度モデル」も現実の景気循環(20年弱の不動産バブルのサイクル)をピッタリ説明するものではなく、その意味ではモデルの域を出るものではありません(但し、企業の設備投資を説明する投資関数を作成する際には、新古典派の理論よりも、シンプルな加速度原理を用いた方がより現実に当てはまったものができる、というのもまた事実なので、その意味ではより現実的なモデル、と言っても過言ではないでしょう)。
少なくとも、巷でなされている「乗数効果はさほど高くない(特に1990年代以降は低下している)」という議論は、実は根拠に乏しいものであることをご理解いただければと思います。


※日本経済再生のための財政支出拡大の必要性については、徐々に理解者・支持者が増えているとはいえ、まだまだ主要マスコミでのネガティブな報道等の影響力が強いのが現状です。1人でも多くの方にご理解いただくため、ツイッター、フェイスブック等下記ソーシャルボタンのクリックにご協力いただけると幸いです。

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島倉原(しまくら はじめ)

Author:島倉原(しまくら はじめ)
 経済評論家。株式会社クレディセゾン主任研究員。経済理論学会および景気循環学会会員。
 メルマガ『島倉原の経済分析室』(毎週日曜日発行)や、メルマガ『三橋貴明の「新」日本経済新聞』(隔週木曜日寄稿)の執筆を行っています。

著書『積極財政宣言:なぜ、アベノミクスでは豊かになれないのか』(新評論、2015年)

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