構造改革と消費税増税の愚かしさ~景気循環論からのアプローチ
インターネットテレビ「チャンネルAJER」の収録を行いました。
今回のタイトルは「構造改革と消費税増税の愚かしさ~景気循環論からのアプローチ」で、全体で30分強のプレゼンテーションになっています。
前回の「乗数効果をどう見るか」というプレゼンテーションの中で紹介した内生的景気循環論の観点から、「構造改革」と「消費税」に関する議論に一石を投じてみよう、というのが今回のテーマです(プレゼン資料は下記の通りです)。
【プレゼン資料】
構造改革と消費税増税の愚かしさ.pdf
以下は、動画へのリンクとプレゼン内容の要旨及び補足です。
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今回のタイトルは「構造改革と消費税増税の愚かしさ~景気循環論からのアプローチ」で、全体で30分強のプレゼンテーションになっています。
前回の「乗数効果をどう見るか」というプレゼンテーションの中で紹介した内生的景気循環論の観点から、「構造改革」と「消費税」に関する議論に一石を投じてみよう、というのが今回のテーマです(プレゼン資料は下記の通りです)。
【プレゼン資料】
構造改革と消費税増税の愚かしさ.pdf
以下は、動画へのリンクとプレゼン内容の要旨及び補足です。
【チャンネルAjer動画へのリンク】
(①はチャンネルAjerへの無料会員登録、②は月1,050円の有料会員登録が必要になります。)
・構造改革と消費税増税の愚かしさ①
・構造改革と消費税増税の愚かしさ②
①については、チャンネルAjerに登録せずにユーチューブやニコニコ動画でご覧いただくことも可能です。
【プレゼン内容の要旨および補足】
前回の「乗数効果をどう見るか」というプレゼンテーションでは、
① 名目GDPは長期的には名目公的支出(即ち財政支出)に比例して成長するが、両者の関係は常に一定ではない。「名目GDP÷名目公的支出」の長期的な推移をたどってみると、不動産バブルの発生と連動した、20年弱の周期で振動している。
② (常に生産要素が最適化された均衡状態にあることを前提とした)新古典派経済学的に「この振動は何らかの突発的なショックにより生じている」と解釈するのは妥当ではない。むしろ「経済とは、その内部に組み込まれた『不均衡を伴う内生的な景気循環メカニズム』によってこうした振動を発生させつつ、長期的には公的支出に比例して成長する」と解釈するのが現実的である(前回はそのような経済の姿を示す一例として、ポール・サミュエルソンというアメリカのノーベル賞経済学者が70年以上前に考案した「乗数=加速度モデル」を紹介しました)。
という話をしましたが、その観点からは、構造改革と消費税増税を推進しようという昨今の議論には、下記のような問題点を指摘できます。
【「構造改革=成長の柱」は近視眼的な錯覚】
構造改革の成功事例として良く引き合いに出されるのは、「改革なくして成長なし」の小泉純一郎首相による構造改革路線でしょう。例えば、
●バブル崩壊後現在に至るまでの長期不況局面にもかかわらず、小泉政権下では「戦後最長の景気拡大」を記録し、財政赤字も縮小した。
●小泉政権は構造改革に積極的な一方、財政については緊縮路線で、公共事業に関する支出も大幅に削った。
●従って、経済成長(や財政再建)に必要なのは財政支出拡大ではなく、構造改革である。小泉政権後は総じて改革に後ろ向きになってしまったため、経済も再び低迷してしまった。
といったような議論を、お聞きになられたことがある方も多いのではないでしょうか。
しかしながら、「内生的景気循環論」を前提とすれば、こうした議論は「近視眼的な錯覚」でしかありません。即ち、
「小泉政権の時期は、たまたま景気循環サイクルの上昇局面にあたっていたため、「緊縮財政路線にもかかわらず」景気が拡大し、財政赤字も縮小した(その後の経済低迷も改革の後退が原因ではなく、単に周期的なバブル崩壊によるもの)。」
という結論になるからです(景気循環における小泉政権のポジションについては、プレゼン資料の6ページに示しています。)。
むしろ政権初期の強引な不良債権処理により、景気上昇局面に入りかけていたにもかかわらず金融不安を引き起こしたり、公共事業の大幅な削減による建設業の供給力低下をもたらしたり、といった弊害の方が大きかった、と言えるのではないでしょうか。
当時の中心人物だった竹中平蔵氏の存在感、あるいは6月に閣議決定された成長戦略の中身などを見ると、現政権にもこうした錯覚に囚われた(言い換えれば、誤った成功体験を引きずった)方が少なからずいるのではないか、ということが懸念されます。
【消費税増税もやはり近視眼的な発想】
前回の消費税増税は1996年に閣議決定され、1997年に実行されました。
今回はこのまま行けば、今年2013年に閣議決定され、来年2014年から実行されることになります。
いずれも景気循環のピークから7~8年経過し、谷底に入ろうというタイミングです(プレゼン資料の8ページでご確認ください。)。
当然景気循環の影響を受けて財政収支は悪化している局面なので、単年度の財政均衡を重視するのであれば、「増税して少しでも収支を良くしなくては」という発想になるのはわからないではありません。
しかし、景気循環を踏まえたより長期的な視点からは、「景気後退期という最悪のタイミングでブレーキを踏む」行為にほかなりません。
財務省は否定していますが、前回増税を実施した1997年から翌年の1998年にかけて金融機関の大型破たんを引き起こし、日本経済を長期デフレに陥れた犯人の1人と考えるべきでしょう(もう1人の犯人は財政支出の抑制)。
即ち消費税増税も、構造改革同様、近視眼的な錯覚に囚われた誤った政策判断と言うべきでしょう。
さらに言えば、消費税増税の背景となっている「単年度ベースの均衡財政主義」自体がそもそも、百害あって一利なしということになります(過熱期にアクセルを踏み、後退期にブレーキを踏んでしまうことで、景気変動の影響を増幅してしまい、経済や社会の不安定化を引き起こしてしまう)。
理想は「過熱期にブレーキを踏み、後退期にアクセルを踏むことで景気変動の影響を平準化する」ことですが、政府がそこまで上手く立ち回ることが期待できない(あるいはそういった裁量を政府に持たせることは却って弊害が大きい)ということであれば、「毎年継続的、安定的に名目財政支出を拡大することを基本方針としつつ、その中で適正な配分を毎年(年によっては選挙というプロセスを通じて)議論する」というのが、1つのあり方ではないかと思います(何だかミルトン・フリードマンの「マネーサプライに関するX%ルール」の財政支出バージョン、といった感じですが、機械的なルールではなく、あくまで一定の名目経済成長を確保する「基本方針」であって、大規模災害等、突発事象や異常事態に対して機動的、追加的な財政出動をする余地は残している前提です)。
【最後に】
新古典派をベースとした主流派経済学からは今回述べたような発想は出てきませんが(それどころか、むしろ近視眼的発想を正当化する結論につながりがち)、景気循環は19世紀(あるいはそれ以前)から観察されてきた現実ですし、主流派経済学自体、現実を説明する説得力に乏しいことが明らかになりつつあります。
経済政策を立案する際には短期と中長期を混同せず、むしろ中長期の視点から議論や意思決定を行うべきだし、それを報道するマスコミや評価する国民の側も近視眼的な発想に陥らないように留意すべきである、ということをここで強調しておきたいと思います。
そういった努力を意識的に重ねないと、えてして近視眼的な発想に陥りがちになってしまうのが私たち人間の性で、今回取り上げた構造改革や消費税の問題はそのことを示す一例と言えるのではないでしょうか。
※日本経済再生のための財政支出拡大の必要性については、徐々に理解者・支持者が増えているとはいえ、まだまだ主要マスコミでのネガティブな報道等の影響力が強いのが現状です。1人でも多くの方にご理解いただくため、ツイッター、フェイスブック等下記ソーシャルボタンのクリックにご協力いただけると幸いです。
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前回の「乗数効果をどう見るか」というプレゼンテーションでは、
① 名目GDPは長期的には名目公的支出(即ち財政支出)に比例して成長するが、両者の関係は常に一定ではない。「名目GDP÷名目公的支出」の長期的な推移をたどってみると、不動産バブルの発生と連動した、20年弱の周期で振動している。
② (常に生産要素が最適化された均衡状態にあることを前提とした)新古典派経済学的に「この振動は何らかの突発的なショックにより生じている」と解釈するのは妥当ではない。むしろ「経済とは、その内部に組み込まれた『不均衡を伴う内生的な景気循環メカニズム』によってこうした振動を発生させつつ、長期的には公的支出に比例して成長する」と解釈するのが現実的である(前回はそのような経済の姿を示す一例として、ポール・サミュエルソンというアメリカのノーベル賞経済学者が70年以上前に考案した「乗数=加速度モデル」を紹介しました)。
という話をしましたが、その観点からは、構造改革と消費税増税を推進しようという昨今の議論には、下記のような問題点を指摘できます。
【「構造改革=成長の柱」は近視眼的な錯覚】
構造改革の成功事例として良く引き合いに出されるのは、「改革なくして成長なし」の小泉純一郎首相による構造改革路線でしょう。例えば、
●バブル崩壊後現在に至るまでの長期不況局面にもかかわらず、小泉政権下では「戦後最長の景気拡大」を記録し、財政赤字も縮小した。
●小泉政権は構造改革に積極的な一方、財政については緊縮路線で、公共事業に関する支出も大幅に削った。
●従って、経済成長(や財政再建)に必要なのは財政支出拡大ではなく、構造改革である。小泉政権後は総じて改革に後ろ向きになってしまったため、経済も再び低迷してしまった。
といったような議論を、お聞きになられたことがある方も多いのではないでしょうか。
しかしながら、「内生的景気循環論」を前提とすれば、こうした議論は「近視眼的な錯覚」でしかありません。即ち、
「小泉政権の時期は、たまたま景気循環サイクルの上昇局面にあたっていたため、「緊縮財政路線にもかかわらず」景気が拡大し、財政赤字も縮小した(その後の経済低迷も改革の後退が原因ではなく、単に周期的なバブル崩壊によるもの)。」
という結論になるからです(景気循環における小泉政権のポジションについては、プレゼン資料の6ページに示しています。)。
むしろ政権初期の強引な不良債権処理により、景気上昇局面に入りかけていたにもかかわらず金融不安を引き起こしたり、公共事業の大幅な削減による建設業の供給力低下をもたらしたり、といった弊害の方が大きかった、と言えるのではないでしょうか。
当時の中心人物だった竹中平蔵氏の存在感、あるいは6月に閣議決定された成長戦略の中身などを見ると、現政権にもこうした錯覚に囚われた(言い換えれば、誤った成功体験を引きずった)方が少なからずいるのではないか、ということが懸念されます。
【消費税増税もやはり近視眼的な発想】
前回の消費税増税は1996年に閣議決定され、1997年に実行されました。
今回はこのまま行けば、今年2013年に閣議決定され、来年2014年から実行されることになります。
いずれも景気循環のピークから7~8年経過し、谷底に入ろうというタイミングです(プレゼン資料の8ページでご確認ください。)。
当然景気循環の影響を受けて財政収支は悪化している局面なので、単年度の財政均衡を重視するのであれば、「増税して少しでも収支を良くしなくては」という発想になるのはわからないではありません。
しかし、景気循環を踏まえたより長期的な視点からは、「景気後退期という最悪のタイミングでブレーキを踏む」行為にほかなりません。
財務省は否定していますが、前回増税を実施した1997年から翌年の1998年にかけて金融機関の大型破たんを引き起こし、日本経済を長期デフレに陥れた犯人の1人と考えるべきでしょう(もう1人の犯人は財政支出の抑制)。
即ち消費税増税も、構造改革同様、近視眼的な錯覚に囚われた誤った政策判断と言うべきでしょう。
さらに言えば、消費税増税の背景となっている「単年度ベースの均衡財政主義」自体がそもそも、百害あって一利なしということになります(過熱期にアクセルを踏み、後退期にブレーキを踏んでしまうことで、景気変動の影響を増幅してしまい、経済や社会の不安定化を引き起こしてしまう)。
理想は「過熱期にブレーキを踏み、後退期にアクセルを踏むことで景気変動の影響を平準化する」ことですが、政府がそこまで上手く立ち回ることが期待できない(あるいはそういった裁量を政府に持たせることは却って弊害が大きい)ということであれば、「毎年継続的、安定的に名目財政支出を拡大することを基本方針としつつ、その中で適正な配分を毎年(年によっては選挙というプロセスを通じて)議論する」というのが、1つのあり方ではないかと思います(何だかミルトン・フリードマンの「マネーサプライに関するX%ルール」の財政支出バージョン、といった感じですが、機械的なルールではなく、あくまで一定の名目経済成長を確保する「基本方針」であって、大規模災害等、突発事象や異常事態に対して機動的、追加的な財政出動をする余地は残している前提です)。
【最後に】
新古典派をベースとした主流派経済学からは今回述べたような発想は出てきませんが(それどころか、むしろ近視眼的発想を正当化する結論につながりがち)、景気循環は19世紀(あるいはそれ以前)から観察されてきた現実ですし、主流派経済学自体、現実を説明する説得力に乏しいことが明らかになりつつあります。
経済政策を立案する際には短期と中長期を混同せず、むしろ中長期の視点から議論や意思決定を行うべきだし、それを報道するマスコミや評価する国民の側も近視眼的な発想に陥らないように留意すべきである、ということをここで強調しておきたいと思います。
そういった努力を意識的に重ねないと、えてして近視眼的な発想に陥りがちになってしまうのが私たち人間の性で、今回取り上げた構造改革や消費税の問題はそのことを示す一例と言えるのではないでしょうか。
※日本経済再生のための財政支出拡大の必要性については、徐々に理解者・支持者が増えているとはいえ、まだまだ主要マスコミでのネガティブな報道等の影響力が強いのが現状です。1人でも多くの方にご理解いただくため、ツイッター、フェイスブック等下記ソーシャルボタンのクリックにご協力いただけると幸いです。
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