ホーム » 経済政策 » 亡国の?金融政策

亡国の?金融政策

メルマガ『三橋貴明の「新」経世済民新聞』に、「亡国の?金融政策」というタイトルで寄稿しました。
円安誘導の要素もはらんだ金融緩和への偏重が、むしろ家計や企業の負担を高めている現状に警鐘を鳴らしています。
http://www.mitsuhashitakaaki.net/2017/02/09/shimakura-67/

↓メルマガ申し込みはこちらから。
http://www.mag2.com/m/0001007984.html

以下では今回の記事を転載しています。

【島倉原】亡国の?金融政策

From 島倉原(しまくら はじめ)@評論家(クレディセゾン主任研究員)

明日の日米首脳会談がどのような内容になるか、多くの方が注目されていることでしょう。
本メルマガでも、日本政府内で検討されていると報道された
「日本の公的年金をアメリカのインフラ事業に投資する」という案について、
むしろ円安ドル高を誘発してアメリカ側の意向に合致しないのではないかという指摘が、
藤井聡さんからありました。
http://www.mitsuhashitakaaki.net/2017/02/07/fujii-235/
http://www.nikkei.com/article/DGKKASFS01H5E_R00C17A2MM8000/

トランプ大統領は「中国や日本は何年も通貨安誘導を繰り広げている」と批判しています。
http://www.nikkei.com/article/DGKKASGM01H3Y_R00C17A2MM0000/

人民元買い支えで外貨準備減少が3年近く続いている中国については完全な誤解ですが、
3年前の10月、追加金融緩和と共に公的年金の外貨建て運用比率を高めた日本については、
「政府部門が連携して自国通貨安に誘導している」と言われても仕方のない面があります。
今回も、日本国債がメインの運用手段であるはずの公的年金を投資するのであれば、
年金運用が外貨建てにシフトした分は、日銀が日本国債を買い支えるでしょうから、
同様な意図を勘ぐられたとしても、まあ、仕方のないところかもしれません。

問題は、こうした金融緩和政策が、果たして日本経済にとってメリットがあるのかどうか。
どうもそうではなさそうだ、というのがこちらのニュースです。

「年金・終身保険料、他社も上げ 日生、引き上げ発表 低金利で運用難響く」
日本生命保険は2日、個人年金保険や終身保険など貯蓄性商品の保険料を
4月に引き上げると発表した。
長期金利の低下を反映し、契約者に約束する運用利回り(予定利率)を下げるためだ。
第一生命保険など他社は月内にも保険料の引き上げを発表する見通し。
低金利による運用難で販売をとりやめる動きもあり、横並びの目立ってきた
販売戦略が分かれる転機になる。
(2017/2/3付 日本経済新聞朝刊)
http://www.nikkei.com/article/DGKKZO12475180S7A200C1EE8000/

昨年3月の拙稿「金融機関叩きにご用心?」でもお伝えしたとおり、
金融緩和による長引く低金利環境は、銀行、保険会社などの収益力をむしばんできました。
そして、昨年1月のマイナス金利政策導入に至っては、保険料一時払いの商品を中心に
保険料値上げや販売中止となり、貯蓄の選択肢が減るデメリットを家計にもたらしました。
http://www.mitsuhashitakaaki.net/2016/03/10/shimakura-44/

今回は、そうした動きがより保障色の強い、保険料毎月払いの商品にも波及し、
家計にとっては月々の支払い負担が増す結果となっています。
「マイナス金利政策」といっても、一般企業や家計がマイナス金利でお金を
借りられるわけではなく、金利低下による経済の活性化にもおのずと限度があります。

他方で、昨年2月の拙稿「マイナス金利政策の弊害」でも述べたとおり、
中央銀行が国債その他の資産を購入する量的金融緩和には、
「中央銀行が資金運用競争に参入することによる民業圧迫」あるいは
「国債からマネタリーベースへと、政府部門の負債をより低コストなものに置き換え」
といった、緊縮財政にも等しい、民間所得押し下げのデメリットが確実に存在します。
http://www.mitsuhashitakaaki.net/2016/02/25/shimakura-43/

今回の保険料の値上げは、そうしたデメリットが金利低下のメリットを上回り、
なおかつその負担が家計に転嫁されたものと言えるでしょう。
仮に公的年金をアメリカのインフラ事業に投資する政府案が成立すれば、
ここでも海外での資産運用における民業圧迫が生じ、経済全体にとっても、
より一層のマイナスとなる可能性があります。

折しも今週7日、介護保険における政府負担を軽減し、その分の負担を家計や企業に
転嫁することを柱とした、介護保険関連法改正案が閣議決定されました。
公的、民間双方における社会保障負担引き上げというさらなる緊縮財政は、
内需が低迷している日本経済の不振に、より一層拍車を掛けることでしょう。
http://www.nikkei.com/article/DGXLZO12657940Y7A200C1EA2000/
https://twitter.com/sima9ra/status/813749953910730752
http://bit.ly/2htArcb

こうした状況を打開するための処方箋は明らか。
行き過ぎた金融緩和から撤退するため、過剰なマネタリーベースを徐々に縮小する一方で、
国債の発行を増やして必要な分野への財政支出を拡大する。
結果として民間部門の所得が拡大して内需が振興され、
日本経済は円高デメリットを上回るメリットを享受できるでしょう。
そうなればアメリカの対日貿易赤字も縮小し、良好な日米関係にもつながることは、
まさしく藤井さんがご指摘のとおりです。
社会保障負担の引き上げなど撤回すべきことは、いわずもがなでしょう。

にもかかわらず実際進められているのは、相も変わらず金融緩和と緊縮財政に偏重し、
円安誘導と言われても仕方がない、日本経済にとってもデメリットが大きい亡国の政策。
あるいは、本来は国債で運用すべき年金基金を海外に持ち出す売国の政策でしょうか。

「金融緩和もやらないよりはマシ」とお考えの方は割と多いと思われますが、
事ここに至っては、今のようなレベルの金融緩和はむしろデメリットの方が大きいことを、
議論の前提とすべきではないでしょうか。

※「本記事が参考になった」と思われた方は、各種ブログランキングボタンやSNSボタンのクリックをよろしくお願いします。
        にほんブログ村 経済ブログへ

   
   このエントリーをはてなブックマークに追加

〈島倉原からのお知らせ〉
金融政策は効果が乏しく、財政政策こそ有効な経済政策であることの現実を、
1930年代の世界恐慌までさかのぼり、様々な実証データに基づいて解き明かした一冊です。
↓『積極財政宣言:なぜ、アベノミクスでは豊かになれないのか』
(二番目のURLはあらすじをまとめたブログ記事です)
http://amzn.to/1HF6UyO
http://keiseisaimin4096.blog.fc2.com/blog-entry-94.html

アメリカの代表的な株価指数、ダウ工業株30種平均が2万ドルを突破した日に発生した、
金融市場におけるある珍しい現象が意味するところを考察しています。
↓「ダウ平均2万ドル突破と共に生じた珍しい現象」
http://keiseisaimin4096.blog.fc2.com/blog-entry-225.html

一貫性が無いようにも見えるトランプ政権の対ロシア外交を敢えて合理的なものと捉え、
「トランプ政権は実は親ロ派ではない」という反通説的な解釈を試みています。
↓「対ロ外交におけるトランプ政権の真意」
http://keiseisaimin4096.blog.fc2.com/blog-entry-226.html


↓『三橋貴明の「新」経世済民新聞』、メルマガ申し込みはこちらから。
http://www.mag2.com/m/0001007984.html


↓ツイッターでも情報発信しています。フォローよろしくお願いします。



↓フェイスブックページでも情報発信しています。「いいね!」よろしくお願いします。



↓執筆・講演・出演のご依頼等は、当ブログのメールフォームか、下記の問い合わせフォームからお願いいたします。
http://form1.fc2.com/form/?id=7f2d01cc919199d8


↓フェイスブック上で筆者をフォローされるにはこちら。
関連記事


会員限定の映画やTV番組が見放題! 100万曲以上の楽曲も聴き放題!! 今なら30日間無料体験募集中!!!



テーマ : 政治・経済・時事問題
ジャンル : 政治・経済

tag : 日本経済 金融政策 財政政策 アベノミクス 三橋貴明 社会保障 保険料

コメント

非公開コメント

最新記事
ブログ記事検索フォーム
カテゴリ別記事
おすすめの本

雇用、利子、お金の一般理論 (講談社学術文庫)


国力とは何か―経済ナショナリズムの理論と政策 (講談社現代新書)


公共事業が日本を救う (文春新書)


官僚階級論 霞が関(リヴァイアサン)といかに闘うか (モナド新書010)


戦後脱却で、日本は「右傾化」して属国化する


国土学―国民国家の現象学 (叢書 新文明学4)


英語化は愚民化 日本の国力が地に落ちる (集英社新書)


アメリカのデモクラシー (第1巻上) (岩波文庫)


〈凡庸〉という悪魔 (犀の教室)


危機の二十年――理想と現実 (岩波文庫)


仮面の日米同盟 米外交機密文書が明かす真実 (文春新書)
リンク
月別アーカイブ
最新コメント
最新トラックバック
プロフィール

島倉原(しまくら はじめ)

Author:島倉原(しまくら はじめ)
 経済評論家。株式会社クレディセゾン主任研究員。経済理論学会および景気循環学会会員。
 メルマガ『島倉原の経済分析室』(毎週日曜日発行)や、メルマガ『三橋貴明の「新」日本経済新聞』(隔週木曜日寄稿)の執筆を行っています。

著書『積極財政宣言:なぜ、アベノミクスでは豊かになれないのか』(新評論、2015年)

RSSリンクの表示
メールフォーム
メールでのご質問・ご意見等はこちらからお願いします。

お名前:
メールアドレス:
件名:
本文:

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

おすすめの音楽

ザ・アイランド・イヤーズ(リマスター)(完全生産限定盤)


Piper at the Gates of Dawn


Doors


ジギー・スターダスト<2012リマスター>


十七歳の地図

ツイート一覧
QRコード
QR
FC2カウンター
FC2アフィリエイト
アフィリエイト・SEO対策