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憲法改正論議の背後にある緊縮財政

「新」経世済民新聞』に、「憲法改正論議の背後にある緊縮財政」というタイトルで寄稿しました。
法律の改正で事足りるはずの「高等教育の無償化」を安倍首相が憲法改正の項目として提案した背景には緊縮財政(均衡財政主義)の発想があることを解説した上で、「緊縮財政を既成事実化させない」という観点から、そうした改正案には安易に賛成すべきでないと結論付けています。
https://38news.jp/economy/10489

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以下では今回の記事を転載しています。


【島倉原】憲法改正論議の背後にある緊縮財政

From 島倉原(しまくら はじめ)@評論家(クレディセゾン主任研究員)

5月14日の記事は、三橋貴明さん執筆の「なぜ「教育無償化」?」でした。
「日本会議」が主導する「美しい日本の憲法をつくる国民の会」などが開催した
「第19回公開憲法フォーラム」に寄せた安倍首相のビデオメッセージをきっかけに、
法律の制定で済むはずの高等教育無償化が9条改正とセットになった
憲法改正論議が政界で盛り上がっていることについて、違和感を表明されています。
https://38news.jp/politics/10454
http://www.asahi.com/articles/ASK534KF0K53UTFK002.html

私はちょうどその日、NHKの日曜討論を見ていました。
そこでもまた、憲法改正が議論の対象になっています。

高等教育無償化についても当然議論の対象となり、
民進党の福山哲郎氏は、かつて民主党政権が高等学校・専門学校を無償化したのに対し、
自公政権はこれをバラマキと批判した側にあたるとツッコミを入れました。
また、社民党の又市征治氏も、憲法改正がなくても可能な無償化を持ち出したのは、
同様な憲法改正案を持つ日本維新の会を取り込むための方便に過ぎないと批判しています。
このあたりは、三橋さんの違和感にも通じるところでしょう。
https://tvtopic.goo.ne.jp/program/nhk/1061623/1061623/

これに対して自民党の下村博文氏は、無償化をしたくても今のままでは財源が厳しく、
憲法に盛り込むことによって教育重視を加速させることができる、と述べています。

こういった文脈での「財源」といえば税金。
すなわち、下村氏のこの発言は、憲法改正で増税を既成事実化しよう、
と言っているに等しいのです。
そのことは、同じ主張を掲げる日本維新の会代表である、松井大阪府知事の
「(高等教育無償化の)財源については相続税などを検討すべき」
という発言にも表れています。
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20170511/k10010977971000.html

あるいは、自民党の小泉進次郎氏が中心になって提言している、
保育や幼児教育無償化のための「こども保険」のようなものになるのかもしれません。
いずれも、通貨発行権を持つ政府の下ではあり得ない「財政破綻」の可能性を想定し、
家計や企業の負担を高めて消費や投資の意欲を損ない、日本経済の弱体化につながります。
すなわち、この20年近くの長期デフレ不況の原因である緊縮財政という誤った政策が、
より一層強化されようとしているのです。
これは、自民党の憲法草案に盛り込まれている財政規律条項が、
形を変えたものと言っても良いかもしれません。
https://38news.jp/archives/05533

今回の安倍首相の提案には、「憲法9条の改正を事実上不可能にする」という
三橋さんが指摘されたリスクのみならず、
緊縮財政を意図した憲法改正が実績として残ることによって、デフレ不況からの脱却が、
より一層難しくなるリスクをはらんでいると言えるでしょう。
それはまた、安全保障を含めた重要政策を今後実行する際の足かせともなりかねません。
「高等教育無償化」というと、「少なくとも反対の理由はない」と思ってしまいそうですが、
その背景を考慮すれば、決して簡単に賛成すべきものではないのです。

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島倉原(しまくら はじめ)

Author:島倉原(しまくら はじめ)
 経済評論家。株式会社クレディセゾン主任研究員。経済理論学会および景気循環学会会員。
 メルマガ『島倉原の経済分析室』(毎週日曜日発行)や、メルマガ『三橋貴明の「新」日本経済新聞』(隔週木曜日寄稿)の執筆を行っています。

著書『積極財政宣言:なぜ、アベノミクスでは豊かになれないのか』(新評論、2015年)

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