耐久財消費は格差問題の指標?
『「新」経世済民新聞』に、「耐久財消費は格差問題の指標?」というタイトルで寄稿予定です。
日米家計の耐久財消費の動向をたどりつつ、近年における消費全体に占める耐久財消費比率の低下は、グローバル化を背景とした就業環境の悪化と所得格差拡大を反映しているのではないか、という論稿です。
(↓2017年6月1日追記:下記の通り掲載されました)
https://38news.jp/economy/10548
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http://www.mag2.com/m/0001007984.html
以下では今回の記事を転載しています。
【島倉原】耐久財消費は格差問題の指標?
From 島倉原(しまくら はじめ)@評論家(クレディセゾン主任研究員)
もう1カ月近く前のことになりますが、前々回の5月4日号では、
「GDP統計に見る、経済の衰退と家計の貧困化」と題して、
超長期的な傾向である「経済のサービス化」のこの10年ほどの停滞は、
日本経済の衰退と家計の貧困化が進んでいることの証であると論じました。
https://38news.jp/economy/10412
その際、議論の対象として取り上げなかった個人消費の大項目が、
それなりに値段が張り、1年以上利用することが一般的な「耐久財」に対する支出。
自動車、家具、家電などが典型です。
その耐久財消費の個人消費全体に占める比率をたどってみると、
サービス消費、非耐久財消費の超長期的な傾向とは、明らかに違った動きをしています。
しかも、同じ耐久財消費でも、日米の間では、これまた明らかな違いが見られます。
アメリカの耐久財消費比率は、第二次世界大戦後横ばいで推移した後、
1973年以降、とりわけ1980年代に入ってから、低下傾向となり現在に至ります。
対する日本は、バブル経済が生じた1980年代後半から急上昇した後、
1996年まで上昇が続き、その後は低下傾向を示しています。
実は、こうした耐久財消費比率の低下傾向の始まりは、
トマ・ピケティの『21世紀の資本』で示された、
両国においてトップ0.1%の所得シェアが上昇を開始したタイミングとほぼ一致します。
http://amzn.to/2r96pgZ
http://piketty.pse.ens.fr/files/capital21c/en/pdf/F9.5.pdf
http://piketty.pse.ens.fr/files/capital21c/en/pdf/F9.6.pdf
また、拙著『積極財政宣言:なぜ、アベノミクスでは豊かになれないのか』では、
就業環境の長期的動向を示す指標として、25~54歳男性の就業率等を取り上げましたが、
同就業率が両国で低下傾向を示し始めたのも、ほぼ同じタイミングです。
http://amzn.to/1HF6UyO
現在に至る経済のグローバル化が本格化したのは1970年代以降。
その基盤となったのは、1960年代以降主要先進国で進められた国際資本移動の自由化。
主要先進国における1973年の変動為替相場制導入は、中でも画期的な出来事の1つでした。
そうしたグローバル化によって先進国労働者の就業環境が徐々に悪化し、
それによって所得格差も拡大し、将来の所得見通しが立たない人々が増加する。
結果としてもたらされたのが、まとまった金額が必要な耐久財消費の比率低下であり、
その典型が、世界経済の中心に位置するアメリカであったと考えられます。
対する日本は、1990年代半ばまでは国内経済、すなわち内需主導の成長を続けていたため、
グローバル化時代以降も、終身雇用で賃金格差の少ない戦後の雇用制度が機能してきた。
ところが1990年代後半以降、国内経済すなわち名目GDPの成長が止まり、
そうした制度が機能しなくなると共にグローバル化の悪影響が顕在化し、
格差拡大や耐久財消費比率の低下も生じています。
してみると、耐久財消費比率は格差問題の有力な指標と言えるのではないでしょうか。
政府が支出を切り詰める緊縮財政が、現在に至る国内経済の停滞の要因であることは、
従来から述べている通りです。
したがって政府が行うべきは本来、既に20年にも及ぶ緊縮財政路線から脱却すること。
しかしながら、国内経済の停滞でかえってグローバル化志向の影響力が強まったことで、
政府自らがその音頭を取り、国民経済を破壊しようとしている。
それが、「大胆な金融緩和によるデフレ脱却」という誤った処方せんを掲げた
安倍政権の下で進行している現実なのです。
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〈島倉原からのお知らせ〉
経済の停滞により家計の貧困化や格差の拡大が進み、様々な社会問題が生じている
根幹には緊縮財政という経済政策の誤りがあること。
そのことを多面的、長期的な観点から理解されたい方のための一冊です。
↓『積極財政宣言:なぜ、アベノミクスでは豊かになれないのか』
http://amzn.to/1HF6UyO


アメリカの半導体メーカーであるエヌビディア(NVIDIA)社が、
AI(人工知能)ブームの中で脚光を浴びています。
メルマガ『島倉原の経済分析室』では、1年前に同社について取り上げました。
その当時の記事を無料公開しています。
↓「株価上昇を続けるAI(人工知能)関連銘柄」
http://keiseisaimin4096.blog.fc2.com/blog-entry-251.html
そんな訳で、エヌビディアの株価は既に1年前の3倍以上に上昇しています。
これから同社株に投資するのであれば、どうタイミングを図るのが賢明か。
そんなことを考察しています。
↓「「半導体の覇者」への投資タイミング」
http://keiseisaimin4096.blog.fc2.com/blog-entry-252.html
先々週、日本株の需給環境を示すとある指標が、珍しい動きを示しました。
その意味するところは何なのかを考察しています。
↓「日米株式市場の需給環境と今後」
http://keiseisaimin4096.blog.fc2.com/blog-entry-249.html
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日米家計の耐久財消費の動向をたどりつつ、近年における消費全体に占める耐久財消費比率の低下は、グローバル化を背景とした就業環境の悪化と所得格差拡大を反映しているのではないか、という論稿です。
(↓2017年6月1日追記:下記の通り掲載されました)
https://38news.jp/economy/10548
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http://www.mag2.com/m/0001007984.html
以下では今回の記事を転載しています。
【島倉原】耐久財消費は格差問題の指標?
From 島倉原(しまくら はじめ)@評論家(クレディセゾン主任研究員)
もう1カ月近く前のことになりますが、前々回の5月4日号では、
「GDP統計に見る、経済の衰退と家計の貧困化」と題して、
超長期的な傾向である「経済のサービス化」のこの10年ほどの停滞は、
日本経済の衰退と家計の貧困化が進んでいることの証であると論じました。
https://38news.jp/economy/10412
その際、議論の対象として取り上げなかった個人消費の大項目が、
それなりに値段が張り、1年以上利用することが一般的な「耐久財」に対する支出。
自動車、家具、家電などが典型です。
その耐久財消費の個人消費全体に占める比率をたどってみると、
サービス消費、非耐久財消費の超長期的な傾向とは、明らかに違った動きをしています。
しかも、同じ耐久財消費でも、日米の間では、これまた明らかな違いが見られます。
日米各国の個人消費に占める耐久財消費の比率をたどったグラフです。比率低下が始まった時期は、経済のグローバル化を背景に、各国で就業環境悪化や所得格差拡大が始まった時期とほぼ一致しています。
— 島倉 原 (@sima9ra) 2017年5月31日
↓参考記事「耐久財消費は格差問題の指標?」https://t.co/eA2XeJac0s pic.twitter.com/cXVt2lIQTz
アメリカの耐久財消費比率は、第二次世界大戦後横ばいで推移した後、
1973年以降、とりわけ1980年代に入ってから、低下傾向となり現在に至ります。
対する日本は、バブル経済が生じた1980年代後半から急上昇した後、
1996年まで上昇が続き、その後は低下傾向を示しています。
実は、こうした耐久財消費比率の低下傾向の始まりは、
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その基盤となったのは、1960年代以降主要先進国で進められた国際資本移動の自由化。
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そうしたグローバル化によって先進国労働者の就業環境が徐々に悪化し、
それによって所得格差も拡大し、将来の所得見通しが立たない人々が増加する。
結果としてもたらされたのが、まとまった金額が必要な耐久財消費の比率低下であり、
その典型が、世界経済の中心に位置するアメリカであったと考えられます。
対する日本は、1990年代半ばまでは国内経済、すなわち内需主導の成長を続けていたため、
グローバル化時代以降も、終身雇用で賃金格差の少ない戦後の雇用制度が機能してきた。
ところが1990年代後半以降、国内経済すなわち名目GDPの成長が止まり、
そうした制度が機能しなくなると共にグローバル化の悪影響が顕在化し、
格差拡大や耐久財消費比率の低下も生じています。
してみると、耐久財消費比率は格差問題の有力な指標と言えるのではないでしょうか。
政府が支出を切り詰める緊縮財政が、現在に至る国内経済の停滞の要因であることは、
従来から述べている通りです。
したがって政府が行うべきは本来、既に20年にも及ぶ緊縮財政路線から脱却すること。
しかしながら、国内経済の停滞でかえってグローバル化志向の影響力が強まったことで、
政府自らがその音頭を取り、国民経済を破壊しようとしている。
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AI(人工知能)ブームの中で脚光を浴びています。
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そんな訳で、エヌビディアの株価は既に1年前の3倍以上に上昇しています。
これから同社株に投資するのであれば、どうタイミングを図るのが賢明か。
そんなことを考察しています。
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