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グローバリズムに回帰する?アベノミクス

「新」経世済民新聞』に、「グローバリズムに回帰する?アベノミクス」というタイトルで寄稿予定です。
消費税増税に代表される緊縮財政の一方で、「アベノミクスの重要な柱」として日欧EPAをはじめとする自由貿易協定を推進する安倍政権の動向は、太平洋戦争に突入した戦前の教訓をわきまえない「戦前的グローバリズムへの事実上の回帰」なのではないか、という論稿です。
(↓2017年7月15日追記:2017年7月13日に下記の通り掲載されました)
https://38news.jp/economy/10775

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以下では今回の記事を転載しています。


【島倉原】グローバリズムに回帰する?アベノミクス

From 島倉原(しまくら はじめ)@評論家(クレディセゾン主任研究員)

7月6日、日本とEUの首脳協議で経済連携協定(EPA)が大枠合意されました。
安倍首相によれば「アベノミクスの重要な柱」とのことで、合意後の共同記者会見では
「自由貿易の旗手として手を携え、世界の平和と繁栄に貢献していく」と宣言されました。
http://www.nikkei.com/article/DGXLZO18529550W7A700C1MM8000/
http://www.nikkei.com/article/DGKKASFS06H49_W7A700C1MM8000/

しかしながら、自由貿易を推進して経済的な利益を追求する、いわゆるグローバリズムは、
むしろ経済的な権益を巡る国際紛争の機会を高めるというのが歴史の教訓です。
事実、19世紀後半以降本格化した「第1次グローバル化時代」の下での貿易の拡大は、
経済権益の獲得と結び付いた「帝国主義」という名の国家のエゴをエスカレートさせ、
その結果として生じた第1次世界大戦によって終焉を迎えました。
そのことは、基軸通貨国として当時のグローバル化の中心にあった、
イギリスの貿易依存度(=輸出入額÷GDP)の推移からも読み取ることができます。

【参考図:日・米・英及び世界全体の貿易依存度(財貿易)の推移(1820~2016年)】


「国際分業」というと何やら聞こえが良さそうですが、
貿易の拡大は生産労働者と消費者の分断を促進し、
低賃金労働を求める企業が国境を越えて生産拠点を移すことが容易になるため、
生産拠点が移される側(主に新興国)も含めて経済的な格差が拡大します。
その結果社会は不安定化し、排外的な傾向が強まり、これもまた国際紛争につながります。

そもそも、グローバル化の背景にあるのは金儲けを追求する資本の論理。
そこに国際的な資本移動の活発化が伴うのは、19世紀も現代も共通しています。
結果として、各国の金融市場は不安定さを増して金融危機の発生頻度が高まり、
それがまた、実物経済にも悪影響を与え、格差の拡大も助長しています。

その典型例が、現代においては2008年に生じたリーマン・ショック。
また、1930年代の世界恐慌も、第1次グローバル化がピークアウトした後の事件ですが、
それ以前の国際資本移動の進展によって増幅された経済危機であったと言われています。
その混乱がファシズムの台頭を招き、第2次世界大戦につながったとすれば、
ここでもまた、グローバル化が国際紛争につながったと言えるでしょう。

しかも、グローバル化の下でも内需すなわち国内経済主導の経済運営を行い、
長期的に貿易依存度を低下させる国の方がむしろ経済発展している。
その典型例が第2次大戦以前のアメリカ、あるいは戦後から1990年代前半までの日本です。

対して、明治以降の日本は第1次グローバル化時代終焉後もグローバリズム路線を継続し、
内需主導の経済成長につながる高橋財政の直前に満州事変を引き起こし、
後戻りができないまま破滅的な対米戦争に突入しています。
格差の大きさも含め、当時の政治経済体制にはその意味で明らかな欠陥があった。
これもまた、上記のグラフから読み取るべき歴史の教訓ではないでしょうか。

消費税増税をはじめとする緊縮財政によって内需を冷え込ませる一方で、
グローバリズムを推進するアベノミクス。
「戦後レジームからの脱却」を掲げた首相の下での経済政策が、
「戦前的なグローバリズムへの回帰」となっているのは歴史の皮肉でしょうか。

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島倉原(しまくら はじめ)

Author:島倉原(しまくら はじめ)
 経済評論家。株式会社クレディセゾン主任研究員。経済理論学会および景気循環学会会員。
 メルマガ『島倉原の経済分析室』(毎週日曜日発行)や、メルマガ『三橋貴明の「新」日本経済新聞』(隔週木曜日寄稿)の執筆を行っています。

著書『積極財政宣言:なぜ、アベノミクスでは豊かになれないのか』(新評論、2015年)

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