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グローバリズムとリージョナリズム

「新」経世済民新聞』に、「グローバリズムとリージョナリズム」というタイトルで寄稿しました。
フランスのマクロン大統領がEUに関して掲げる政策には「外向きの統合=グローバリズム(移民・難民の寛容な受け入れ)」「内向きの統合=リージョナリズム(EU共同予算設立)」という二面性があることを解説した上で、資本主義社会において政府が重点を置くべきは内向きの統合なのではないか、と論じています。
https://38news.jp/europe/10837

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http://www.mag2.com/m/0001007984.html

以下では今回の記事を転載しています。


【島倉原】グローバリズムとリージョナリズム

From 島倉原(しまくら はじめ)@評論家(クレディセゾン主任研究員)

7月15日に三橋貴明さんが寄稿された記事タイトルは、
「理想主義者マクロン」でした。
ユーロ圏の共同予算設立を提唱し、さらなる欧州統合を
追い求めるフランスのマクロン大統領。
グローバリズムにとっては優等生なのかもしれないが、
国民から顔を背けた理想主義者であり、
事態は混迷を深めていく、と述べておられます。
https://38news.jp/europe/10784

EU各国の混乱の要因となっている大量の移民や難民。
そうした中で、基本的に移民・難民に寛容なマクロン氏。
その意味では確かに現実と乖離した、
グローバリスト的な側面を持つ政治家といえるでしょう。

他方で、共同予算については少し違った見方が可能です。
なぜなら、こちらはマクロ経済安定化を目指した政策で、
経済危機に陥っているギリシャなどに恩恵をもたらし、
統一通貨ユーロの現行の欠陥を補うものだからです。
その意味では「統合による欧州の平和」という理想と、
経済安定化という現実に折合いをつける政策といえます。
http://jp.reuters.com/article/eu-post-idJPKBN18R02D

文明論の発想に立てば、グローバリズムというよりも、
かつては古代ローマ帝国として統治されていた、
同一文明圏に属する地域の政治的統合の歴史的な流れ、
いわば「リージョナリズム」と見るべきかもしれません。
例えば、経済規模がほぼ同等で未だに州の自治権が強く、
建国後約150年間は中央銀行が存在しなかった、
「アメリカ合衆国」と比較してみてはどうでしょうか。

ちなみに、ユーロ問題解決策としてのEU共同予算は、
国の通貨発行権を出発点に、「機能的財政論」も継承する
「現代通貨理論」を唱える米国の経済学者、
ランドール・レイが既に提唱していたアイディアです。
彼は、ワシントン(米国連邦政府)の予算規模が
GDPの20%以上という事実を指摘した上で、
解決策の1つとして、欧州議会の予算規模をGDP比で、
現在の1%未満から15%に引き上げる案を挙げています。
http://amzn.to/2uP6uc3

あるいは下記のように、われらが日本こそ、
同一文明圏内に元来は多数存在した独立色の強い政府が、
時間をかけて統合された事例と見ることもできます。
そういえば、約20年前の日本経済は、
米国経済や現ユーロ圏経済の7割に匹敵する規模でした。

「(前略)「新しい空間経済学」の発展にとって、
ヨーロッパの統合が与えた学問的刺激の役割が大きい。
(中略)
しかしながら、EUの将来の地域経済システム(中略)
を考える上において、少し振り返ってみれば、
日本の歴史が大きなヒントを与えてくれるかもしれない。
実際、今から約130年前の明治維新において、
それまでほぼ自立していた多くの幕藩経済を
廃藩置県によってボーダレス化することにより、
EU統合ならぬ日本統合が実現されたわけである。
その結果の一つが、東京一極集中に象徴される
現在の日本における地域経済システムの形成である。」
(藤田昌久/P・クルーグマン/A・J・ベナブルズ著
空間経済学』「日本語版への原著者序文」より)
http://amzn.to/1Jg0TJ4

とはいえ本稿の意図は、マクロン氏やEUの背景に
グローバリズムが存在することの否定ではありません。
むしろ、明治政府の事例にも見られるように、
グローバリズム同様の統合の発想は、
リージョナリズムやナショナリズムにもつきまとう、
という認識です。
そもそも国家自体、より小さな政治単位の統合で成立し、
その組織原理を引き続き保持しているわけですから。

問題は、統合の発想が向くべき方向だと思います。
今回のケースでいえば、移民・難民の受け入れが外向き、
共同予算の設立が内向きの統合といえるでしょう。

思うに、資本とは政治的境界を越えた利益拡大を求め、
放っておいても外向きな統合に向かいたがるもの。
だとすれば、国なら県、県なら市というように、
自らの内にあるより小さな政治単位に配慮しながら、
資本とは逆に内なる統合に重きを置くことこそが、
資本主義の欠陥を補うバランスの取れた政府の姿であり、
健全な自治、さらには平和への道ではないでしょうか。

〈島倉原からのお知らせ〉
上記引用も交えて2年前に執筆した拙稿です。
「日本は独自の文明圏」という比較文明論も参照しつつ、
グローバル化で成功する企業は例外的という事実から、
政府レベルでグローバル化を追求する愚を論じています。
↓「グローバリズムの非合理性
http://keiseisaimin4096.blog.fc2.com/blog-entry-133.html

内向きの経済政策、即ち内需主導の成長の追求。
その柱となる政策は、もちろん積極財政です。
↓『積極財政宣言:なぜ、アベノミクスでは豊かになれないのか


運営の仕組みの先行き不透明感もあり、
乱高下している仮想通貨ビットコイン。
その長期的な見通しを、貨幣論や技術論に加え、
景気循環論も交えて多角的に論じています。
↓「ビットコインの行方
http://keiseisaimin4096.blog.fc2.com/blog-entry-264.html

利上げやバランスシート圧縮に動くアメリカに続き、
カナダ、イギリス、ユーロ圏、スウェーデンなど、
先進各国で金融緩和解除に向けて動き出しています。
その行き着く先を、景気循環論に基づいて考察しました。
↓「金融緩和解除の行方とクズネッツ循環
http://keiseisaimin4096.blog.fc2.com/blog-entry-263.html

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島倉原(しまくら はじめ)

Author:島倉原(しまくら はじめ)
 経済評論家。株式会社クレディセゾン主任研究員。経済理論学会および景気循環学会会員。
 メルマガ『島倉原の経済分析室』(毎週日曜日発行)や、メルマガ『三橋貴明の「新」日本経済新聞』(隔週木曜日寄稿)の執筆を行っています。

著書『積極財政宣言:なぜ、アベノミクスでは豊かになれないのか』(新評論、2015年)

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