緊縮財政が招いた製造業の綻び
『「新」経世済民新聞』に「緊縮財政が招いた製造業の綻び」というタイトルで寄稿しました。
神戸製鋼所や日産自動車など、製造業の現場が疲弊し、不祥事が相次ぐ背景として、政府の緊縮財政による日本経済の長期停滞があることを指摘しています。
https://38news.jp/economy/11202
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以下では今回の記事を転載しています。
【島倉原】緊縮財政が招いた製造業の綻び
From 島倉原(しまくら はじめ)@評論家(クレディセゾン主任研究員)
日産自動車の無資格検査に続き、
神戸製鋼所のデータ改ざんが発覚しました。
10月15日の日本経済新聞朝刊1面では、
「日本の製造業に綻び」と題し、
以下のように報道しています。
「(筆者注:神戸製鋼所の)川崎博也会長兼社長は自動車の軽量化で需要が増えるアルミで大増産の号令をかけた。だが工場の負担を緩和するような生産システムの導入はほとんどなく、頼みは現場のがんばりだった。
「納期の遅れは許されない」。そんなプレッシャーが現場を追い詰める。経営陣と現場の乖離(かいり)が広がり、疲弊した現場でデータの改ざんが繰り返されていた。
ルノーとの連合でグローバル企業になった日産も「強い現場」に頼る構図は同じだ。
(中略)市場が成熟するなかで少しでもコストを削ろうとするあまり、現場の社員を不正に動かす芽が生じる。
(中略)すでに「モノ作り神話」が揺らいでいることはデータが示す。日本生産性本部によると00年に米国に次ぐ2位だった日本の製造業の労働生産性は14年に独仏に抜かれ11位に転落した」
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO22276130U7A011C1MM8000/
神戸製鋼所の不正行為自体は
数十年前からとの報道もあるようですが、
こうした行為が一社にとどまらず、
社会問題として報道される背景について、
今回は考えてみたいと思います。
需要増を見込んでいるにもかかわらず、
生産能力向上のための設備投資をせず、
その分は現場の労働者にしわ寄せが行く。
これは何も、日本の経営者が今世紀以降、
急に強欲になったからではありません。
「市場が成熟するなかで」とあるように、
1997年以降続いている緊縮財政によって
所得が伸びずに国内の消費需要は停滞し、
名目GDPの成長は20年間でほぼゼロ。
結果、国内での利益成長機会が失われ、
企業の生産拡大意欲が低下しているのです。
【参考図表:日本の製造業生産能力と実質賃金の推移(1997/3=100)】
上記のグラフが示すように、
消費税増税という緊縮財政を進める
アベノミクスの下で、
そうした傾向はより一層強まっています。
国外輸出が伸びて企業業績が拡大しても、
その利益は現地生産拡大のための投資か、
借入金返済や配当・自社株買いに充当され、
国内の生産能力拡大には回されない。
その結果が製造現場の疲弊であり、
国際競争力の凋落ではないでしょうか。
こうした状況を解決するのは、
働き方改革や賃上げの義務化などではなく、
ましてや内部留保への課税でもない。
成長見込みがないのに足かせだけ増えれば、
企業の国内での投資・雇用意欲は
より一層低下するだけでしょう。
緊縮財政が問題の根源にあるのであれば、
当然行うべきは正反対の積極財政。
増税をやめ、財政支出を拡大し、
国内の企業や労働者に所得を行きわたらせ、
消費・投資・雇用意欲を喚起する。
それこそ唯一の解決策ではないでしょうか。
〈島倉原からのお知らせ〉
裏付けとなるデータを確認しながら
今回のテーマについて詳しく知りたい、
という方は是非こちらをどうぞ。
↓『積極財政宣言:なぜ、アベノミクスでは豊かになれないのか』


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経済や金融のタイムリーな話題について、
独自の観点から分析しています。
以下は直近記事のご紹介です。
一昨年の高値を超えた日経平均。
半年前の自らの分析を振り返りつつ、
改めて現状と今後について考察しています。
↓「21年ぶりの高値となった日経平均」
http://foomii.com/00092/2017101501191541775
「周期的に発生するITバブルが進行中」
という現状認識に基づき、
「では、現在はバブルのどの段階なのか」
を考察しています。
↓「現在はITバブルのどの段階か」
http://foomii.com/00092/2017100800000041646
↓その他、バックナンバーはこちらをご覧下さい。
http://foomii.com/00092/articles
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神戸製鋼所や日産自動車など、製造業の現場が疲弊し、不祥事が相次ぐ背景として、政府の緊縮財政による日本経済の長期停滞があることを指摘しています。
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【島倉原】緊縮財政が招いた製造業の綻び
From 島倉原(しまくら はじめ)@評論家(クレディセゾン主任研究員)
日産自動車の無資格検査に続き、
神戸製鋼所のデータ改ざんが発覚しました。
10月15日の日本経済新聞朝刊1面では、
「日本の製造業に綻び」と題し、
以下のように報道しています。
「(筆者注:神戸製鋼所の)川崎博也会長兼社長は自動車の軽量化で需要が増えるアルミで大増産の号令をかけた。だが工場の負担を緩和するような生産システムの導入はほとんどなく、頼みは現場のがんばりだった。
「納期の遅れは許されない」。そんなプレッシャーが現場を追い詰める。経営陣と現場の乖離(かいり)が広がり、疲弊した現場でデータの改ざんが繰り返されていた。
ルノーとの連合でグローバル企業になった日産も「強い現場」に頼る構図は同じだ。
(中略)市場が成熟するなかで少しでもコストを削ろうとするあまり、現場の社員を不正に動かす芽が生じる。
(中略)すでに「モノ作り神話」が揺らいでいることはデータが示す。日本生産性本部によると00年に米国に次ぐ2位だった日本の製造業の労働生産性は14年に独仏に抜かれ11位に転落した」
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO22276130U7A011C1MM8000/
神戸製鋼所の不正行為自体は
数十年前からとの報道もあるようですが、
こうした行為が一社にとどまらず、
社会問題として報道される背景について、
今回は考えてみたいと思います。
需要増を見込んでいるにもかかわらず、
生産能力向上のための設備投資をせず、
その分は現場の労働者にしわ寄せが行く。
これは何も、日本の経営者が今世紀以降、
急に強欲になったからではありません。
「市場が成熟するなかで」とあるように、
1997年以降続いている緊縮財政によって
所得が伸びずに国内の消費需要は停滞し、
名目GDPの成長は20年間でほぼゼロ。
結果、国内での利益成長機会が失われ、
企業の生産拡大意欲が低下しているのです。
【参考図表:日本の製造業生産能力と実質賃金の推移(1997/3=100)】
国内製造工業の生産能力と、実質賃金の推移です。両指数とも一段と低下している実態は、デフレと共に始まった日本経済の長期停滞が、アベノミクス以降も何ら改善していないことを示しています。
— 島倉 原 (@sima9ra) 2017年9月5日
↓参考記事「積極財政のアピールを!!」https://t.co/JNVLxGt6zd pic.twitter.com/OmPhYoSzYC
上記のグラフが示すように、
消費税増税という緊縮財政を進める
アベノミクスの下で、
そうした傾向はより一層強まっています。
国外輸出が伸びて企業業績が拡大しても、
その利益は現地生産拡大のための投資か、
借入金返済や配当・自社株買いに充当され、
国内の生産能力拡大には回されない。
その結果が製造現場の疲弊であり、
国際競争力の凋落ではないでしょうか。
こうした状況を解決するのは、
働き方改革や賃上げの義務化などではなく、
ましてや内部留保への課税でもない。
成長見込みがないのに足かせだけ増えれば、
企業の国内での投資・雇用意欲は
より一層低下するだけでしょう。
緊縮財政が問題の根源にあるのであれば、
当然行うべきは正反対の積極財政。
増税をやめ、財政支出を拡大し、
国内の企業や労働者に所得を行きわたらせ、
消費・投資・雇用意欲を喚起する。
それこそ唯一の解決策ではないでしょうか。
〈島倉原からのお知らせ〉
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今回のテーマについて詳しく知りたい、
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独自の観点から分析しています。
以下は直近記事のご紹介です。
一昨年の高値を超えた日経平均。
半年前の自らの分析を振り返りつつ、
改めて現状と今後について考察しています。
↓「21年ぶりの高値となった日経平均」
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「周期的に発生するITバブルが進行中」
という現状認識に基づき、
「では、現在はバブルのどの段階なのか」
を考察しています。
↓「現在はITバブルのどの段階か」
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