雇用情勢を巡る歪んだ報道
『「新」経世済民新聞』に「雇用情勢を巡る歪んだ報道」というタイトルで寄稿予定です。
「雇用情勢の改善が続いている」という新聞報道が統計の誤った解釈によるものであることを解説し、企業側の雇用意欲はむしろ、長期デフレの下で低迷した状況のままである実態を指摘しています。
(↓11月2日追記:下記の通り掲載されました)
https://38news.jp/economy/11250
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http://www.mag2.com/m/0001007984.html
以下では今回の記事を転載しています。
【島倉原】雇用情勢を巡る歪んだ報道
From 島倉原(しまくら はじめ)@評論家(クレディセゾン主任研究員)
雇用情勢の改善が報道されています。
厚生労働省の10月31日の発表によれば、
9月の正社員の有効求人倍率は1.02倍で、
統計を取り始めた2004年以降の最高値。
15~64歳人口の就業率も75.8%で、
こちらは何と1968年以降最高とのこと。
https://www.nikkei.com/article/DGXKZO2291349031102017MM0000/
他方で「雇用改善」の割に消費は回復せず、
同日発表された9月の家計調査によると、
2人以上世帯の世帯当たり消費支出は
実質で前年同月を0.3%下回ったことが、
同じ記事の中で伝えられています。
本紙の読者にはいわずもがなでしょうが、
消費の不振は実質賃金の低迷によるもの。
「毎月勤労統計調査」によれば、
8月の実質賃金指数(季節調整済)は、
前月比、前年比いずれもマイナスで、
相変わらずの低迷が続いています。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO22489830Q7A021C1EAF000/
これは以前も述べたことですが、
例えば就業率を過去の水準と比較するなら、
上記のような15~64歳人口での比較は
適切とは言えません。
仮に、50年前と今の就業率が同じなら、
進学率や定年年齢の変化、あるいは
女性の社会進出などの影響を加味すれば、
今の方が50年前よりも実態は悪いはず。
特に、女性の就業率の高まりは、
配偶者の所得だけでは家計が苦しく、
むしろ雇用環境の悪さを反映した部分も
あるからです。
社会変化の影響を極力排除するのなら、
比較対象は25~54歳の男性が適切。
これは、下記の拙著でも述べた通りです。


というわけで、25~54歳男性の就業状況を
見てみましょう。
就業率は確かに上昇傾向ですが、
長期デフレによって大きく落ち込んだ
2000年以降の水準にとどまっています。
他方で、2008年のリーマン・ショックで
一段と落ち込んだ就業者数は、
その後の減少傾向は全く変わっていません。
これは、就業率の上昇をもたらしたのは
企業側の雇用意欲の高まりではなく、
人口減少の結果であることを示しています。
しかも、就業率自体もデフレ以前より
大きく落ち込んだままであること、
さらには実質賃金の低迷を踏まえれば、
雇用意欲は高まっているどころか、
むしろ低迷しているというべきでしょう。
デフレと経済の長期低迷をもたらしたのは、
民間の所得を抑圧する緊縮財政。
この20年にも及ぶ失政を続ける限り、
真の意味での雇用情勢の改善は、
実現に程遠いのではないでしょうか。
〈島倉原からのお知らせ〉
メルマガ『島倉原の経済分析室』では、
経済や金融のタイムリーな話題について、
独自の観点から分析しています。
以下は直近記事のご紹介です。
欧州中央銀行が量的緩和政策の縮小を決定。
その後の金融市場の動きを踏まえ、
金融市場の中期的な動向を展望しています。
↓「ECB理事会決定後の金融市場」
http://foomii.com/00092/2017102901420042032
株式市場の転換点をどう見極めるべきか。
中期的な目安として有力と思われる、
ある指標について考察しています。
↓「株価の転換点を見極める方法」
http://foomii.com/00092/2017102200000041899
↓その他、バックナンバーはこちらをご覧下さい。
http://foomii.com/00092/articles
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「雇用情勢の改善が続いている」という新聞報道が統計の誤った解釈によるものであることを解説し、企業側の雇用意欲はむしろ、長期デフレの下で低迷した状況のままである実態を指摘しています。
(↓11月2日追記:下記の通り掲載されました)
https://38news.jp/economy/11250
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以下では今回の記事を転載しています。
【島倉原】雇用情勢を巡る歪んだ報道
From 島倉原(しまくら はじめ)@評論家(クレディセゾン主任研究員)
雇用情勢の改善が報道されています。
厚生労働省の10月31日の発表によれば、
9月の正社員の有効求人倍率は1.02倍で、
統計を取り始めた2004年以降の最高値。
15~64歳人口の就業率も75.8%で、
こちらは何と1968年以降最高とのこと。
https://www.nikkei.com/article/DGXKZO2291349031102017MM0000/
他方で「雇用改善」の割に消費は回復せず、
同日発表された9月の家計調査によると、
2人以上世帯の世帯当たり消費支出は
実質で前年同月を0.3%下回ったことが、
同じ記事の中で伝えられています。
本紙の読者にはいわずもがなでしょうが、
消費の不振は実質賃金の低迷によるもの。
「毎月勤労統計調査」によれば、
8月の実質賃金指数(季節調整済)は、
前月比、前年比いずれもマイナスで、
相変わらずの低迷が続いています。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO22489830Q7A021C1EAF000/
これは以前も述べたことですが、
例えば就業率を過去の水準と比較するなら、
上記のような15~64歳人口での比較は
適切とは言えません。
仮に、50年前と今の就業率が同じなら、
進学率や定年年齢の変化、あるいは
女性の社会進出などの影響を加味すれば、
今の方が50年前よりも実態は悪いはず。
特に、女性の就業率の高まりは、
配偶者の所得だけでは家計が苦しく、
むしろ雇用環境の悪さを反映した部分も
あるからです。
社会変化の影響を極力排除するのなら、
比較対象は25~54歳の男性が適切。
これは、下記の拙著でも述べた通りです。
というわけで、25~54歳男性の就業状況を
見てみましょう。
就業率は確かに上昇傾向ですが、
長期デフレによって大きく落ち込んだ
2000年以降の水準にとどまっています。
他方で、2008年のリーマン・ショックで
一段と落ち込んだ就業者数は、
その後の減少傾向は全く変わっていません。
「15~64歳の就業率は過去最高」と報道されていますが、長期的な実態の推移をより正確に反映している25~54歳の男性で見ると、就業率は長期デフレで落ち込んだ水準で低迷したままです。
— 島倉 原 (@sima9ra) 2017年11月1日
↓参考記事「雇用情勢を巡る歪んだ報道」https://t.co/S0enAK61p3 pic.twitter.com/3YbVtl0ATR
これは、就業率の上昇をもたらしたのは
企業側の雇用意欲の高まりではなく、
人口減少の結果であることを示しています。
しかも、就業率自体もデフレ以前より
大きく落ち込んだままであること、
さらには実質賃金の低迷を踏まえれば、
雇用意欲は高まっているどころか、
むしろ低迷しているというべきでしょう。
デフレと経済の長期低迷をもたらしたのは、
民間の所得を抑圧する緊縮財政。
この20年にも及ぶ失政を続ける限り、
真の意味での雇用情勢の改善は、
実現に程遠いのではないでしょうか。
過去20年以上、アベノミクス以前から金融は緩和状態だったのに経済は停滞。
— 島倉 原 (@sima9ra) 2017年9月5日
金融緩和はむしろ行き過ぎ。今の日本に必要なのは財政支出を拡大する積極財政です。
↓参考記事「積極財政のアピールを!!」https://t.co/JNVLxGt6zd pic.twitter.com/rTvxAcug9V
〈島倉原からのお知らせ〉
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経済や金融のタイムリーな話題について、
独自の観点から分析しています。
以下は直近記事のご紹介です。
欧州中央銀行が量的緩和政策の縮小を決定。
その後の金融市場の動きを踏まえ、
金融市場の中期的な動向を展望しています。
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株式市場の転換点をどう見極めるべきか。
中期的な目安として有力と思われる、
ある指標について考察しています。
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