企業の投資意欲の実態
『「新」経世済民新聞』に「企業の投資意欲の実態」というタイトルで寄稿予定です。
ここ最近、世界貿易の拡大を背景とした輸出、ひいては設備投資が主導する景気回復を展望する報道が目に付くものの、輸出主導ではさほど国内投資には結びつかず、かえって長期的には国内産業の競争力が低下することを論じています。
(↓2017年12月1日追記:下記の通り掲載されました)
https://38news.jp/economy/11349
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http://www.mag2.com/m/0001007984.html
以下では今回の記事を転載しています。
【島倉原】企業の投資意欲の実態
From 島倉原(しまくら はじめ)@評論家(クレディセゾン主任研究員)
最近、景気良さげな報道をよく目にします。
リーマン・ショック以来停滞していた
世界の貿易量が昨年後半から急回復し、
日本でも、輸出主導の景気回復の構図が
出始めているんだとか。
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO2390973025112017EA3000/
そうした背景もあってのことでしょうか。
内閣府試算の日本経済の需給ギャップも、
2017年に入って3四半期連続でプラス、
すなわち需要超過なんだそうです。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO23941140X21C17A1EE8000/
過去最高益の日本企業が、国内設備投資を
増やしているとのこちらの記事もその1つ。
その中で、2013年度の設備投資が
16年ぶりに減価償却費を上回り、
その構図が現在まで続いている事実が、
設備投資回復の動きを示すものとして、
グラフ付きで示されています。
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO23904130V21C17A1EA2000/
上記の事実は2014年度、すなわち
消費税増税で景気が後退していた時期にも
成立していました。
してみると、そもそも設備投資、あるいは
景気回復の指標として適切なのでしょうか。
上記記事には「企業はITバブル以降、
現金収支を確保するため設備投資を
減価償却費の範囲内に抑えてきた」とあり、
それに続いて上記事実が指摘されています。
確かに「借入=通貨の創造」であり、
一定の成長が続いている経済の下では
企業全体の現金収支はマイナスが正常。
こちらのグラフもそのことを示しています。
とはいえ、設備投資と減価償却費だけでは
現金収支は決まりません。
純利益は当然プラスの要素ですし、
土地など設備以外への投資も含まれます。
すなわち、上記日本経済新聞記事のように
議論をするのであれば、
それらも含んだ真の現金収支をたどるべき。
私が作成した上記グラフもその1つです。
日経と同じ「法人企業統計」に拠るのなら、
こちらのようなグラフになります。
【企業の実物投資と「純利益+減価償却費(≒営業キャッシュフロー)」の推移(兆円)】
土地への投資も含む「実物投資」に対し、
営業キャッシュフローにほぼ一致するのが
「純利益+減価償却費」。
後者に対する前者の比率が100%以上なら
企業部門の現金収支はマイナスで正常、
100%未満ならプラスで異常という訳です。
直近2016年度の当該比率は過去最低水準。
しかも、リーマン・ショックが起きた
2008年度のそれをも下回っていて、
到底明るい兆しは見出せません。
これに対して、日経に準拠した
「設備投資÷減価償却費」は100%超。
確かに過去最高益だけあって、
設備投資はそれなりに増えてはいます。
とはいえ所詮その金額水準は、
過去20年のデフレ不況期の範囲内。
しかも、明らかに国内需要が不振な中で
両比率の乖離が拡大する現状が示すのは、
海外由来の利益が増えたとしても
国内投資にはさほど波及しないという構図。
その分海外投資に向かっていると考えれば、
目先で国内投資が幾ばくか増えたところで、
長期的な結果としてもたらされるのは、
国内産業の競争力低下に他ならないのです。
〈島倉原からのお知らせ〉
1)こうした状況を立て直すのが、
国内需要を拡大する積極財政政策。
その裏付けをまとめたのがこの1冊です。
↓『積極財政宣言:なぜ、アベノミクスでは豊かになれないのか』


2)メルマガ『島倉原の経済分析室』では、
経済や金融のタイムリーな話題について
独自の観点から分析しています。
以下は直近記事のご紹介です。
ゾゾタウンを運営するスタートトゥデイ。
先週新戦略を発表した同社の今後について
考察しています。
↓「スタートトゥデイの新戦略とITバブルの循環」
http://foomii.com/00092/2017112600000042550
既に日本にも進出している、
アメリカの新興電子決済企業スクエア。
株価が好調に推移する同社の今後について、
CEOインタビューも参考に考察しています。
↓「ツイッターの時価総額を超えたスクエアの今後」
http://foomii.com/00092/2017111901501042444
↓その他、バックナンバーはこちらをご覧下さい。
http://foomii.com/00092/articles
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ここ最近、世界貿易の拡大を背景とした輸出、ひいては設備投資が主導する景気回復を展望する報道が目に付くものの、輸出主導ではさほど国内投資には結びつかず、かえって長期的には国内産業の競争力が低下することを論じています。
(↓2017年12月1日追記:下記の通り掲載されました)
https://38news.jp/economy/11349
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以下では今回の記事を転載しています。
【島倉原】企業の投資意欲の実態
From 島倉原(しまくら はじめ)@評論家(クレディセゾン主任研究員)
最近、景気良さげな報道をよく目にします。
リーマン・ショック以来停滞していた
世界の貿易量が昨年後半から急回復し、
日本でも、輸出主導の景気回復の構図が
出始めているんだとか。
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO2390973025112017EA3000/
そうした背景もあってのことでしょうか。
内閣府試算の日本経済の需給ギャップも、
2017年に入って3四半期連続でプラス、
すなわち需要超過なんだそうです。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO23941140X21C17A1EE8000/
過去最高益の日本企業が、国内設備投資を
増やしているとのこちらの記事もその1つ。
その中で、2013年度の設備投資が
16年ぶりに減価償却費を上回り、
その構図が現在まで続いている事実が、
設備投資回復の動きを示すものとして、
グラフ付きで示されています。
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO23904130V21C17A1EA2000/
上記の事実は2014年度、すなわち
消費税増税で景気が後退していた時期にも
成立していました。
してみると、そもそも設備投資、あるいは
景気回復の指標として適切なのでしょうか。
上記記事には「企業はITバブル以降、
現金収支を確保するため設備投資を
減価償却費の範囲内に抑えてきた」とあり、
それに続いて上記事実が指摘されています。
確かに「借入=通貨の創造」であり、
一定の成長が続いている経済の下では
企業全体の現金収支はマイナスが正常。
こちらのグラフもそのことを示しています。
日米企業部門の貯蓄投資バランス(=所得-実物投資)の推移です。1998年以降の日本企業の大幅な黒字化は、緊縮財政で国内経済成長即ち利益成長機会が失われ、投資意欲が低下した結果です。
— 島倉 原 (@sima9ra) 2017年3月22日
↓参考「財政支出が経済成長を規定するメカニズム」https://t.co/lZX2P8ogdL pic.twitter.com/6FMd0I2KyZ
とはいえ、設備投資と減価償却費だけでは
現金収支は決まりません。
純利益は当然プラスの要素ですし、
土地など設備以外への投資も含まれます。
すなわち、上記日本経済新聞記事のように
議論をするのであれば、
それらも含んだ真の現金収支をたどるべき。
私が作成した上記グラフもその1つです。
日経と同じ「法人企業統計」に拠るのなら、
こちらのようなグラフになります。
【企業の実物投資と「純利益+減価償却費(≒営業キャッシュフロー)」の推移(兆円)】
財務省の法人企業統計から、企業部門の営業キャッシュフローと投資キャッシュフローの推移を抽出しました。前者に対する後者の比率の低迷は、輸出主導で企業利益が拡大しても、国内投資にはさほど結びつかない実態を示しています。
— 島倉 原 (@sima9ra) 2017年11月28日
↓参考記事「企業の投資意欲の実態」https://t.co/Z8jqcLltc8 pic.twitter.com/XCoQ4cL0mx
土地への投資も含む「実物投資」に対し、
営業キャッシュフローにほぼ一致するのが
「純利益+減価償却費」。
後者に対する前者の比率が100%以上なら
企業部門の現金収支はマイナスで正常、
100%未満ならプラスで異常という訳です。
直近2016年度の当該比率は過去最低水準。
しかも、リーマン・ショックが起きた
2008年度のそれをも下回っていて、
到底明るい兆しは見出せません。
これに対して、日経に準拠した
「設備投資÷減価償却費」は100%超。
確かに過去最高益だけあって、
設備投資はそれなりに増えてはいます。
とはいえ所詮その金額水準は、
過去20年のデフレ不況期の範囲内。
しかも、明らかに国内需要が不振な中で
両比率の乖離が拡大する現状が示すのは、
海外由来の利益が増えたとしても
国内投資にはさほど波及しないという構図。
その分海外投資に向かっていると考えれば、
目先で国内投資が幾ばくか増えたところで、
長期的な結果としてもたらされるのは、
国内産業の競争力低下に他ならないのです。
〈島倉原からのお知らせ〉
1)こうした状況を立て直すのが、
国内需要を拡大する積極財政政策。
その裏付けをまとめたのがこの1冊です。
↓『積極財政宣言:なぜ、アベノミクスでは豊かになれないのか』
2)メルマガ『島倉原の経済分析室』では、
経済や金融のタイムリーな話題について
独自の観点から分析しています。
以下は直近記事のご紹介です。
ゾゾタウンを運営するスタートトゥデイ。
先週新戦略を発表した同社の今後について
考察しています。
↓「スタートトゥデイの新戦略とITバブルの循環」
http://foomii.com/00092/2017112600000042550
既に日本にも進出している、
アメリカの新興電子決済企業スクエア。
株価が好調に推移する同社の今後について、
CEOインタビューも参考に考察しています。
↓「ツイッターの時価総額を超えたスクエアの今後」
http://foomii.com/00092/2017111901501042444
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