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為替介入こそ最大の無駄遣い~その分実体経済向け財政支出を拡大すべき

(この記事は、2011年8月7日にブロガーに載せたものを転載しています。)

1ドル=76円の円高水準に達したのを受けて、政府・日銀による円売り・ドル買い介入が8月4日に実施されました。金額にして4兆5千億円と、1日の円売り介入額としては過去最大規模との推計もあるようです。

政府は「投機的・無秩序な動きの抑制が目的」としており、一般的にもこうした介入は、製造業の業績悪化やデフレ進行等に経済下振れリスクに対処したものと理解されていると思いますが、財政政策・経済政策の観点からすると、


「為替介入は政府債務の増加を伴う、れっきとした財政行為である。にもかかわらず一般的な財政支出と異なり国内経済への波及効果は乏しい、いわば最悪のお金の使い道である」
「中長期的な為替レートの決定要因である『物価』に影響を与えるのは実物需要としての政府支出であり、為替介入のような金融取引ではない。」


の2つの理由から、全く無意味であり、中長期的にはむしろ弊害の方が大きいと考えられます(「全てマーケットメカニズムにゆだねるべき」といったいわゆる市場主義の観点は全く入っていませんので、念のため)。
また、ここからは「そんな金があったら一般の財政支出の拡大に充てる方が国内経済(国民)にとってもメリットが大きいし、その方がむしろ為替問題の解決につながる」という結論が自ずと導き出されます。


①為替介入とは国内経済への波及効果が乏しい、最悪の財政支出行為である

為替介入とは「政府が政府短期証券(=国債)の日銀引受を通じて得た円資金によって外貨(最終的には米国債等)を買う」行為です。つまり、国債が税金と並ぶ国家財政運営のための資金調達手段であることからすると、れっきとした財政支出の一環であり、事実上「国民の税金で米国に投資する」に等しいとも言える行為です。

制度上は「外国為替資金特別会計」という枠組みで運用されており、決算内容は財務省ホームページで確認できます。
2010年3月末の貸借対照表を見ると、負債の部には政府短期証券(=国債)106兆円が計上されています。為替介入の大半は円売り介入なので、これは過去行われてきた為替介入の累計額に概ね近い数字と考えられます(「短期証券」と言いますが、借り換えを繰り返して事実上長期固定化された債務です)。
「震災復興の財源確保や財政再建のために増税が必要」と片方で言っておきながら、一般国民や国内の企業活動に何ら恩恵をもたらさない「海外投資」のために1日で4兆円もの支出がなされている訳です。
「いまや政府債務はGDPの200%に達し、国際的に見ても最悪の状況」と言いますが、そのうちの20%、つまり債務の1割はこんなことのために使われている訳で、ある意味納税者を非常に馬鹿にした話です(最悪だったのが小泉政権当時の2003~2004年で、財政緊縮路線で国民に痛みに耐えることを強いる一方で、同期間だけで総額35兆円という前代未聞の為替介入を実施しています)。

これと比べれば、少なくとも「国内の家計や企業に所得が循環して経済の活性化につながる」という意味では、「穴を掘ってまた埋めるだけ」レベルの「無駄な公共事業」の方がよっぽどマシと言えるのではないでしょうか?(現実にはそこまで無駄なレベルのものはごく一部であるにもかかわらず、「財政再建」の名の下に、この15年で公共投資はほぼ半減しています)
結果として国民が所得が増加して国内マーケットが拡大する、という意味では、製造業にも少なからず恩恵があることは言うまでもないでしょう。

しかもこの為替介入、国民にとって最も恩恵が乏しい財政支出であるにもかかわらず、国会の議決等を経ず、財務大臣の一存で行われます。
片や、補正予算に国会の議決が必要であり、財政法で国債発行や日銀の国債引受に大きな制約が課されていることからすると、およそまともな財政運営とは言えないのではないでしょうか。

②中長期的な為替レートの決定要因である「物価」に影響を与えるのは実物需要としての政府支出である

為替レートの決定要因として、金利/政策要因(含金融政策)/事件(戦争、テロ、災害、選挙etc.)などが挙げられますが、いずれも短期的なものであり、為替取引の「実需」が国際間貿易の決済にある以上、中長期的には両国間の相対的な物価水準が主な決定要因(物価上昇率が高い、即ち相対的にインフレ傾向の強い国の通貨が安くなる)であると考えられます(相互作用的なところもあり、一方的な因果関係と割り切りづらいところがあるのも事実ですが)。
例え「為替取引の9割方が実需取引ではなく、投機的な金融取引」であったとしても、所詮は実需あっての投機的な思惑であり、思惑だけで中長期的なトレンドを説明するのに無理があることは、株式市場や商品市場を思い浮かべれば自ずと明らかでしょう。

図1はこれを示したもので、変動相場制に移行した1973年以降、円ドルレートのトレンドは日米両国の物価水準の相対パフォーマンスのそれに合致していることがわかります。
(他方でマネタリーベースについては、しばしば5~10年のレンジでのトレンドの逆行が見られるなど、決定要因としてのウェイトが低いことは明らかであり、時折唱えられる「日銀何とかしろ」的な議論は合理性が乏しいことを示しています)
図1:ドル円レート及び日米物価・金融パフォーマンスの長期推移.pdf

では、物価水準の相対パフォーマンスはどのように決まるのか。以前、「日本経済長期低迷の原因~全ては財政政策にある」」という記事を掲載しましたが、その際に、「一国の名目GDP成長率は、その国の名目公的支出伸び率と一致する」ことをグラフで示しました。
図2:名目公的支出伸び率と名目GDP成長率の長期的な関係.pdf

名目GDP成長率は「実質GDP成長率+GDPデフレーター(物価指数)伸び率」の2つの要素に分解することができます。そして、最近の新興国関連の報道を見ればわかるように、高成長には高い物価上昇率が伴うのが通常です。

ここで、「名目公的支出伸び率が高い国は名目GDP成長率が高く、結果として物価上昇率も高くなる」という図式が成り立っているのではないか、という予想が自ずと出てきます。そして、この図式が実際に成り立っているのを示したのが図3です(G7諸国を含め、かつ測定期間をそろえるため、図2より対象国数が少なく、かつ期間が短くなっています)。
図3:名目公的支出伸び率とGDPデフレーター伸び率の関係.pdf
さらに、より直接的に、「名目公的支出伸び率が高い国ほど通貨安になりやすい」ことを同じ期間で検証したのが図4です。
図4:名目公的支出伸び率と自国通貨上昇率の関係.pdf

ここで言う「公的支出」には、消費・設備投資・在庫といった、国民所得を生み出す「実物需要」であり、為替介入のような金融取引は含まれていません。
つまり、日本経済のゼロ成長同様、円高トレンド(ひいてはデフレ)を生じさせているのは他ならぬ日本政府自身の緊縮財政であり、この状況を変えたければ公的支出を持続的に拡大するしかない、というのが実証的な結論なのです。

このようなことを書くと、経済学に詳しい方の中には、「財政拡大は為替レートの増価(自国通貨高)をもたらす」という「マンデル-フレミング・モデル」に矛盾するのではないか、という疑問を抱く方もいるかもしれません。しかしながら、仮に同モデルが論理的に正しいとしても、それは「金融政策が中立」という、現実的にはありえない前提での話であって、現実は図3及び図4に示した通りなのです(現実には経済成長に合わせて通貨供給も拡大されるので、その時点で金融政策は「中立」とは言えなくなる)。

以上より、冒頭に述べた「為替介入をするくらいなら、その分一般的な、いわゆる国内実体経済向けの財政支出の拡大に充てる方が国内経済(国民)にとってもメリットが大きいし、その方がむしろ為替問題の解決につながる」という結論が導き出されるのです。

ところが、実際に日本政府がやっていることは、自ら円高の原因(財政支出抑制)を作り出しておきながらそれを改めることなく、せいぜい短期的な解決にしかならない為替介入を繰り返すことで、却って問題を悪化させている(少なくとも政府債務を増加させた分だけ、財政支出抑制や増税の口実を強化することにもなりかねず、結果として根本的な解決をしづらくしている)、ということなのです。

もちろん、野放図に財政支出を拡大してインフレ率を極端に高めるのが正しい政策である、という主張をするつもりはありません。
しかしながら、この15年間支出を抑制して経済成長を止め、自国通貨高と共に産業の空洞化を招いている現在の財政政策は、違った意味であまりにもバランスを欠いており、様々な弊害をもたらしていることは事実です。
その意味ではやはり、「持続的な公的支出拡大による、適正レベルでの経済成長実現」が正しい経済政策のベースと言えるのではないでしょうか。

※日本経済再生のための財政支出拡大の必要性については、徐々に理解者・支持者が増えているとはいえ、まだまだ主要マスコミでのネガティブな報道等の影響力が強いのが現状です。ツイッター、フェイスブック等のソーシャルメディアを通じて1人でも多くの方にご理解いただくため、下記ボタンのクリックにご協力いただけると幸いです。

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島倉原(しまくら はじめ)

Author:島倉原(しまくら はじめ)
 経済評論家。株式会社クレディセゾン主任研究員。経済理論学会および景気循環学会会員。
 メルマガ『島倉原の経済分析室』(毎週日曜日発行)や、メルマガ『三橋貴明の「新」日本経済新聞』(隔週木曜日寄稿)の執筆を行っています。

著書『積極財政宣言:なぜ、アベノミクスでは豊かになれないのか』(新評論、2015年)

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