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積極財政こそが成長戦略

※この記事は、言論サイト「アスリード」にも掲載されています。

インターネット動画「チャンネルAjer」の収録を行いました。
今回は「積極財政こそが成長戦略」というタイトルで、全体で約35分のプレゼンテーションです。

・動画前半:積極財政こそが成長戦略①
・動画後半:積極財政こそが成長戦略②

アベノミクスの第三の矢は、「民間投資を喚起する成長戦略」とされています。
今回は、

名目GDP+補助金=雇用者報酬+営業余剰+固定資本減耗+間接税

というマクロ経済の構造を示す恒等式を出発点として、政府の緊縮財政による名目GDPの成長ストップが企業の国内投資意欲、ひいては生産能力や国際競争力を低下させている構図を説明した上で、積極財政こそが真の成長戦略であること、それを考慮せずに検討されている法人税減税等はむしろ逆効果になりかねないことなどを論じています。

↓今回のプレゼンテーション資料です。
積極財政こそが成長戦略.pdf

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以下はプレゼンテーションの概要です。
「円高不況論」は誤っている

デフレ不況になって以降、企業の国内投資意欲は著しく低下しており、デフレがスタートした1998年から、非金融法人企業の貯蓄=投資バランスは恒常的な貯蓄超過に転じています(参考記事「失われた20年のもたらしたもの」)。そして、こうした投資意欲の低下、特に製造業の空洞化が進んでいる原因を、円高に求める議論があります。
しかしながら、長期的な観点から見れば、企業の投資意欲低下を円高に求めるのは無理があります。例えば、図1は1874年以降のドル円レートを歴史的な観点も交えて図示したものです(変化率を見やすくするため、対数目盛で表示しています)。価格変動が激しい時期と穏やかな時期が20~30年の周期で交互に訪れ、1990年代後半以降の約20年は「変動相場制ながらも安定期」であることがわかります。

【図1:1874年以降のドル円レート(年平均値)の推移】
長期ドル円レート

また、図2は米ドルだけでなく、各国との貿易ウェイト等を加味した実効為替レートの推移を示したものです。1990年代後半以降、名目レートについては米ドル同様安定的ですし、貿易収支とより関連が深い実質レートに至っては、むしろ円安方向で推移しています。
つまり、デフレ不況が円高圧力になることはあっても、その逆ではないということです。

【図2:実効為替レートの推移(1970年~、年平均値を自然対数変換)】
実効為替レートの推移

実際、企業の投資意欲を左右する最大の要因は、「その地域にビジネスチャンス(利益成長の機会)があるか否か」であって為替レート(あるいはそれによって左右される人件費その他の製造コスト)ではありません。例えば、経済産業省の「海外事業活動基本調査(2012年度)」では、ある国や地域への投資を決定したポイントを問う質問(3項目までの複数回答)に対して最も回答率が高かったのは、「現地の製品需要が旺盛又は今後の需要が見込まれる(66.7%)」でした。


緊縮財政こそが投資意欲低下の真因

では、何が企業の国内投資意欲低下をもたらしたのでしょうか。それは、名目ゼロ成長に他なりません。
冒頭で述べたように、

名目GDP+補助金=雇用者報酬+営業余剰+固定資本減耗+間接税
(雇用者報酬・営業余剰・固定資本減耗はそれぞれ、給与所得・営業利益・減価償却費にほぼ相当します)

というのがマクロ経済の恒等式です。つまり、名目GDPという国内所得のパイが拡大しなければ、企業にとっても利益成長の機会を見出すのが困難になるのは自明です。
実際、図3に示すように、製造業の国内生産能力は、名目GDPと同年の1997年にピークアウトしています。他方で、近年ではそれと裏腹に対外直接投資が拡大しています。
そして、需要項目の一部である「投資」の意欲が減退すると共にデフレ不況に陥り、国際競争力も徐々に低下している、というのが日本の置かれた現状です。

【図3:製造業生産能力と対外直接投資の推移(1980年~)】
製造業生産能力と対外直接投資

こうした中で特に大きな打撃をこうむった産業の1つが、かつては輸送用機器産業(自動車メーカー等)と共に輸出の稼ぎ頭だった電機産業で、デフレ不況後には、ITバブル等の一時期を除けば設備投資が急減しています。これは、それまで成長産業として活発な投資によって積み上げてきた生産設備が、利益成長期待が低下して却って不良資産となり、新規投資の足かせとなったことが原因と考えられます。(図4)。

【図4:電機産業および輸送用機器産業の設備投資額推移】
電機と輸送用機器の設備投資額

その結果、いまや国内電機産業の設備投資額合計が、一企業である韓国のサムソン電子の半導体分野への投資額すら下回る状況です(表1)。これでは国際競争力を保てるはずもなく、貿易収支が大幅に落ち込むのも当然でしょう(表2)。

【表1:電機産業における設備投資額(億円)】
電機設備投資額

【表2:ゼロ成長期の貿易収支変遷(1997年⇒2013年、兆円)】
貿易収支の変遷


積極財政こそが真の成長戦略

こうした状況を招いたのが、消費税増税を含めた1997年の財政構造改革を起点とする緊縮財政であることは、これまで繰り返し述べた通りです(図5)。したがって、財政支出を持続的に拡大する積極財政に政策方針を転換すれば、財政支出による直接的な効果のみならず、乗数効果も働いて名目GDPが比例的に拡大、利益成長期待が生まれて企業の投資意欲も向上し、前述した悪循環構造も打破できます。
ちなみに、1998~2011年にかけて、サムソン電子の本国韓国における名目GDP、名目政府支出の伸び率は、それぞれ年率で6.6%、7.9%に達しています(同時期の日本はそれぞれ年率-0.7%、-0.3%)。

【図5:各種マクロ経済指標の推移】
日本の各種マクロ指標2

その際、国全体として必要な分野の支出額を拡大する、という基本スタンスで臨めば、自ずと当該分野におけるビジネスチャンスを求めて関連投資の意欲が拡大し、国民生活が向上しながら経済も活性化することでしょう。

これに対して、現政権で成長戦略の一環として検討されている法人税減税は、以下の観点で問題があると思います。

まず、均衡財政主義を維持したまま、課税ベースの拡大、あるいは(直接結びつけられてはいないかもしれませんが)消費税増税といった代替措置を前提とした議論がなされていることです。前者については投資が失敗した時のリスクを高め、後者については(前述の恒等式からも明らかなように)そもそも国内での利益成長機会を狭めかねません。
このままではむしろ投資の国外流出を加速する可能性が高く、期待されている海外からの投資流入にもつながらないでしょう。そもそも、海外からの投資が活発化するほど利益成長機会が見いだされるのであれば、その前に国内企業の投資が活発化するはずで、「海外からの投資を呼び込んで経済を活性化する」という考え方自体が現実離れしています。

他方で、万が一目論見通り海外からの投資流入につながったとしても、マクロで見れば利益成長の機会自体は拡がっていません。したがって、上述した電機産業の事例から類推されるように、過去の資産を引きずる国内企業が「相対的に」不利な競争ポジションに置かれることになるでしょう。これもまた、国益に反する結果になります。

ちなみに、仮に法人税減税、あるいは投資減税のような優遇措置を行うのであれば、むしろ「必要な分野」への投資補助金を提供する方が総論としてはベターではないか、と私自身は思います。前述の恒等式でも明らかな通り、「所得のパイ」に直接影響を与えない減税と異なり、補助金は所得のパイ、すなわち企業にとっての利益成長を直接拡大する行為であることに加え、赤字でそもそも法人税を払っていない、7割の国内企業も恩恵が享受できるからです。
いずれにしても、均衡財政主義の打破と積極財政への転換が、問題解決の大前提であることには変わりありません。このことを今一度強調しておきたいと思います。

※日本経済再生のための財政支出拡大の必要性については、徐々に理解者・支持者が増えているとはいえ、まだまだ主要マスコミでのネガティブな報道等の影響力が強いのが現状です。1人でも多くの方にご理解いただくため、ツイッター、フェイスブック等下記ソーシャルボタンのクリックにご協力いただけると幸いです。

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島倉原(しまくら はじめ)

Author:島倉原(しまくら はじめ)
 経済評論家。株式会社クレディセゾン主任研究員。経済理論学会および景気循環学会会員。
 メルマガ『島倉原の経済分析室』(毎週日曜日発行)や、メルマガ『三橋貴明の「新」日本経済新聞』(隔週木曜日寄稿)の執筆を行っています。

著書『積極財政宣言:なぜ、アベノミクスでは豊かになれないのか』(新評論、2015年)

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