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政府の役割と中央銀行の役割の違い

先日、日本経済復活の会で行ったプレゼン(演題:マクロ経済・財政政策に関する私見)についてのブログ記事の中での、「金融政策ではなく、財政政策こそが問題解決の処方箋である」という私の見解の意図について、匿名コメントでご質問いただきました。

マスメディアでは、金融緩和積極論者というか、日銀叩き論者の存在感の方が大きいということもあるので、今一度この論点を掘り下げてみたいと思います。
まず、以下のような前提を起きます。

①「誰かの所得は誰かの支出の結果である」、即ち、家計・企業・政府といった国全体の支出を合計したものと、それらの所得(「マイナスの所得」である「損失」も含む)を合計したものは等しい(厳密には輸出入等の影響があるため一致はしませんが、世界全体で見ても、またその中でも日本は特に、その影響は軽微)。
②家計・企業といった民間部門の支出は、それぞれの所得(企業で言えば「利益」に相当)の一定割合に自ずと制約される(自然な前提であることはご理解いただけると思いますし、「計量経済学」という実際のデータを活用した分析でも、支出と所得の間の長期・安定的な関係が確認できます)。

(ちなみに、国全体の経済規模を示す「GDP=国内総生産」も、上記の所得合計・支出合計と一致し、経済学の教科書ではこれを「GDP三面等価の原則」と呼んでいます)

上記のような前提のもとでは、

「政府が支出を増やさなければ、民間部門の経済活動は限られたパイの奪い合いに終始するため、経済全体の規模は拡大しない」

ということが理論的に(数学的に)導き出されます。
詳しいことは機会があれば稿を改めたいと思いますが、数学モデルとしては、ケインズ経済学の乗数理論、あるいはそれを応用した、サミュエルソン、ヒックスなどの乗数・加速度理論モデルの枠組みに似ています。
ただし、乗数理論自体は不況で通常よりも失業率が高いような経済環境を前提としているので、それが意味する内容と私の見解とは次元というか、着眼点が異なります。
敢えて関連付けるなら、実証的な観点から、「乗数理論は不況期だけでなく、長期的に当てはまる名目経済成長理論である」と捉えているのが私、ということになるでしょうか。

また、数学モデルとしては多少毛色が違います(少なくとも私はそう認識しています)が、「民間部門の支出は所得に制約され、かつ限られたパイの奪い合いに終始する」というところについては、「マクロ経済=人類の生態系」と捉えた上で、動物の生態系の捕食者と被食者(例えばヤマネコとウサギ)の関係をイメージしていただければ、納得しやすいかもしれません(「所得がウサギの個体数で、支出がヤマネコの個体数」といったところでしょうか。実際、こうした動物の生態系モデルを応用して経済の景気循環を説明しようとする試みも過去になされているので、あながち的外れな比喩ではないと思います。)。

この経済拡大メカニズムに対して、中央銀行による資金供給は、短期的にはともかく、長期的にはほとんど影響を与えません(そもそも上記の枠組みには中央銀行は一切登場しません)。
もちろん、「ある規模の経済を回すために必要な最低限の通貨量」は存在しますから、「経済規模の上限に制約を課す」という役割というか、影響力は持っていますが、それは「経済規模の拡大に与える影響力」とは別次元の問題です。
例えるならば、

・コップの大きさ(政府支出)を変えなければ、そこにいくら水(通貨)を流し込んでも、溢れるだけで飲める水の量(国民所得)は変わらない。
・火力あるいは酸素量(通貨)をいくら増強しても、素材である肉の量(政府支出)を増やさなければ、食べられるステーキの量(国民所得)は増えない。

といった感じでしょうか(以前私は、「ガソリン-通貨、マッチ-政府支出、炎-国民所得」に例えたことがあるのですが、今となっては不適当な例えだったような気がします)。

そして、各国の経済統計を集めた結果として、「一国の経済規模は公的部門の支出にほぼ比例する」ことを示しているのがプレゼン資料「日本経済復活の会20120423.pdf」の4ページである一方で、同5ページに示したとおり、15年にわたる壮大な「実験」の結果として、「公的部門の支出を増やさなければ、いくら金融緩和を行っても経済成長には結びつかない」ことを証明してしまったのが、不幸なことに我が日本国の経済であった、という訳です。

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島倉原(しまくら はじめ)

Author:島倉原(しまくら はじめ)
 経済評論家。株式会社クレディセゾン主任研究員。経済理論学会および景気循環学会会員。
 メルマガ『島倉原の経済分析室』(毎週日曜日発行)や、メルマガ『三橋貴明の「新」日本経済新聞』(隔週木曜日寄稿)の執筆を行っています。

著書『積極財政宣言:なぜ、アベノミクスでは豊かになれないのか』(新評論、2015年)

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