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株価対策にご用心?!

メルマガ「三橋貴明の『新』日本経済新聞」の記事を執筆しました。

今回のタイトルは「株価対策にご用心?!」、本ブログでも紹介している「チャンネルAjer」でのプレゼン「株価対策なら積極財政」の内容をもとにしています。。

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http://www.mag2.com/m/0001007984.html

以下では今回の記事を転載しています。




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【島倉原】株価対策にご用心?!

From 島倉原@セゾン投信

おはようございます。
先週、チャンネルAjerで「株価対策なら積極財政」というプレゼンテーションを行いましたので、今回はそれにちなんだ話題です。
※あくまでも個人的見解です。念のため。

本メルマガでも、「すべては株価のため、そして支持率のため」という東田剛さんの記事(この記事、最近人気ですね)がありましたが、
http://www.mitsuhashitakaaki.net/2014/06/11/korekiyo-100/

そこで取り上げられていたGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の運用方針見直し(日本株投資比率の引き上げ)だけでなく、今検討されているNISA(少額投資非課税制度)の非課税投資枠の引き上げも、安倍政権の株価対策なんだそうです。
http://www.sankeibiz.jp/macro/news/140712/mca1407120500008-n1.htm

あまりなじみが無い方もおられるかもしれませんので簡単に解説しておきますと、「NISA」とは、株式や投資信託への投資について、1人当たり年間投資額100万円まで、配当金や売買益が5年間非課税になる制度です。
家計の資産形成支援を目的としたイギリスのISA(Individual Savings Account)を参考に、今年から導入されました。
http://www.saison-am.co.jp/isa/index.html
上記SankeiBizの記事にもあるように、今回は、非課税投資枠を現行の100万円から200万円、あるいは240万円に引き上げることが検討されているようです。

投資信託の運用会社に勤める「企業人」としては、何の文句もございません。
NISAをきっかけに「投資信託を始めてみよう」と考える方が増えたのは事実ですし、今回の投資枠拡大によって、個々人のレベルでは投資を増やすことが合理的な選択になるケースも増えるでしょう。
そうなるとレントシーカーならずとも、ビジネス上の追い風であることは間違いありませんから。
http://jp.reuters.com/article/marketsNews/idJPL4N0PL1M820140711

ですが、一人の日本国民として見るとどうでしょう。
「株価対策」は今に始まった話ではなく、バブル経済の崩壊以降、「PKO(Price Keeping Operation)」の名のもとに、何度となく行われてきました。
http://www.nikkeibp.co.jp/archives/127/127729.html
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-29868620080121

でも結局長続きせず、25年が経とうとする今でも、日本の株価はピーク時の4割程度に過ぎません。
ちなみに60年前のアメリカでは、大恐慌前の株価の高値が、ちょうど25年ぶりに更新されました。

両者の差は、いわゆるGDPの等価式

名目GDP+補助金=家計所得+企業の営業余剰+固定資本減耗+間接税
(営業余剰は営業利益、固定資本減耗は減価償却費にほぼ相当します)

によって説明できます。
この等式の左辺は国内全体の支出、右辺は国内全体の所得を表しており、「誰かの支出=別の誰かの所得」という構図のもとで成立しています。

前述した日米の株価パフォーマンスの差は、両国の名目GDP、突き詰めれば財政政策の差に直結しています。
大恐慌当時のアメリカは、バブル崩壊後当初の4年間は緊縮財政で、名目GDPはほぼ半減、失業率は25%という悲惨な状況でした。
ところが、ルーズヴェルト政権になってニューディール政策が導入されて以降は、

財政支出(これ自身も名目GDPの一部)拡大によって有効需要が増え、名目GDP(左辺)が拡大

企業部門の利益(右辺の一部)が拡大し、株価も上昇
(「株式=企業からの利益配当を受け取る権利と結びついた有価証券」ですから、企業の利益が拡大すれば株価も上昇していくのが、経済の道理です)

というメカニズムがはたらいて、最終的に高値更新が実現したというわけです(失業も改善し、1940年代以降は完全雇用水準に達しました)。
これに対して、90年代後半以降の緊縮財政の結果、名目GDPも株価も低迷しているのが現代の日本です。

公的資金による日本株購入にしても、NISAの投資枠引上げにしても、「マネタリーベースの拡大を伴わない、小粒な金融政策」のようなものです。
でも、積極財政なしに金融緩和を繰り返しながらも、デフレ不況が続いてきたのが、日本の失われた20年。
果たしてどれだけの効果が見込めるのでしょうか。
http://asread.info/archives/182/3

「効果が乏しい」だけなら良いのですが、「NISA投資枠拡大によるデメリット」も気になります。
1つ目は、格差拡大を助長する懸念。
現在のNISA利用者の中心は、金融資産を持っている高齢者の方々。
NISAを利用しない理由の大半は、若年層を中心に「資産運用をする資金的余裕がないから」とのこと。
つまり、投資枠拡大でメリットを得られるのは資金的余裕がある人だけで、ほとんどの未利用者にはメリットなし。
「家計の資産形成支援」という本来の目的はどこに行くのでしょうか…。
http://www.fsa.go.jp/policy/nisa/20140623-1/01.pdf

もう1つの懸念は、均衡財政の発想のもとで、新たな増税の言い訳にされること。
「非課税枠を引き上げるのだから、その分他で増税しなければ!!」
それとも、「株価対策バッチリで、景気の先行きも心配ないから、予定通り消費税は10%に引き上げます!!」と来るのかな?
でも消費税(間接税)の増税って、民間の所得取り分を減らすのだから、株価にはマイナスのはず。
「機動的」ならぬ「持続的」な積極財政を続けていれば、株価も(支持率も?)上がるはずなのに…。
(蛇足ながら、企業人として得られる恩恵も、その方が結果的に大きくなるでしょう)

とまあ、今回はそんなお話です。
詳しいことは図表付きでブログにまとめてありますので、よろしければそちらもご覧ください(動画へのリンク、プレゼン資料のダウンロードも可能です)。
http://keiseisaimin4096.blog.fc2.com/blog-entry-56.html

PS
8月10日、「景気循環論から見たマクロ経済」というテーマで講演することになりました。ご参加お待ちしています。
http://ameblo.jp/photon55/entry-11901521456.html

PPS
日本経済復活の会の次回定例会(8月7日)の案内です。宍戸先生の講話もあり、私も20分ほどお話しする予定です。よろしかったらこちらもどうぞ。
http://www.tek.co.jp/p/meeting.html

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島倉原(しまくら はじめ)

Author:島倉原(しまくら はじめ)
 経済評論家。株式会社クレディセゾン主任研究員。経済理論学会および景気循環学会会員。
 メルマガ『島倉原の経済分析室』(毎週日曜日発行)や、メルマガ『三橋貴明の「新」日本経済新聞』(隔週木曜日寄稿)の執筆を行っています。

著書『積極財政宣言:なぜ、アベノミクスでは豊かになれないのか』(新評論、2015年)

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