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景気循環と第二の敗戦

メルマガ「三橋貴明の『新』日本経済新聞」の記事を執筆しました。

今回のタイトルは「景気循環と第二の敗戦です。

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http://www.mag2.com/m/0001007984.html

以下では今回の記事を転載しています。




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【島倉原】景気循環と第二の敗戦

From 島倉原@セゾン投信

おはようございます。
昨日発表された4-6月期GDP速報値は、実質前期比マイナス1.7%(年率マイナス6.8%)、名目前期比マイナス0.1%(年率マイナス0.4%)でした。
http://s.nikkei.com/1ytrn3L

駆け込み需要の反動があったとはいえ、「所得の流れ」を見る上ではより重要で、なおかつ「増税によるかさ上げ」があるはずの名目GDPが前期比マイナスになったことは、果たして「想定の範囲内」なのでしょうか(1997年の前回増税時は、名目GDPは年末までは曲がりなりにも増加トレンドを維持しました)。

前回メルマガでもご案内した通り、週初の8月10日、「景気循環論から見たマクロ経済」というテーマで講演を行いました。
2時間以上も講演するのは私にとって初めての経験で、正直不安もあったのですが、悪天候の中ご参加いただいた方々のおかげもあり、何とか無事終えることができました。
主催者の方がブログで当日の様子を伝えておられるので、ご興味のある方はこちらをどうぞ。
http://ameblo.jp/photon55/entry-11908162513.html

「景気循環論」とは、

「経済が好況と不況を繰り返しながら変動するのはなぜか」
「好況期・不況期にはそれぞれどういった特徴があるか」

を研究する経済学の一分野です。
産業革命後の19世紀前半の欧米で、金融の崩壊を伴う大規模な不況である「恐慌」(直近でいえばリーマン・ショックのようなもの)がほぼ10年周期で発生したことを背景として、主流派経済学とは別の流れで研究が進められてきました。

恐慌も、その前に発生するバブル現象も、いわば経済全体に大いなる不均衡が生じている状態です。
人間の経済活動自体の中に、規則的にも近い周期性で、そうした不均衡を発生させる何らかのメカニズムが内在しているのではないか、というのが実業家を中心とした多くの景気循環研究者の見立てでした。

ところがこうした世界観は、「見えざる手」「合理的経済人」といったキーワードが盛り込まれ、市場に任せておけば均衡状態に収れんすることが想定されている主流派経済学の世界観とは、根本的に相容れないものです。
そんなわけで、景気循環論は経済学の中では非主流のまま、現在に至っています。
しかしながら、リーマン・ショックにせよ、日本のバブル崩壊にせよ、均衡状態への収れんが経済の自然な姿と考えては到底説明がつかないのではないでしょうか。
しかも、景気循環の発生メカニズムが経済そのものに内在していると考えれば、

「長期的な経済データは、日本の失われた20年が『不十分な金融緩和』ではなく『緊縮財政』によって引き起こされていることを示唆している(財政政策は極めて有効で、金融緩和はアベノミクス以前に既に十分行われていたのが現実)」
「『1990年代以降、財政政策の効果は低下している』という主流派経済学の手法を用いた実証分析が、少なからぬ経済学者によって提示されている(財政政策は無効または効果が乏しい)」

という一見矛盾した状況が何故両立するのか、極めて単純明快に説明することができます(端的に言うと、後者の実証分析は「バブル崩壊後は財政政策の効果が小さく見える」という景気循環メカニズムの影響を無視した近視眼的な錯覚で、やはり緊縮財政が長期低迷の原因、ということになります)。

(参考記事)島倉原「日本経済の成長&景気循環メカニズム」
http://asread.info/archives/432

今回の講演では、そうした私なりの認識を出発点としつつ、景気循環論の成り立ち、緊縮財政が失われた20年をもたらしている構図、海外を含めた今後のマクロ経済見通し、果ては政治・社会現象と景気循環の結びつきに至るまで、仮説レベルの内容も含めてお話ししました。

話が飛ぶようですが、ご存知、本メルマガの執筆者のお一人である佐藤健志さんの近著「僕たちは戦後史を知らない」では、オイルショック、阪神・淡路大震災、東日本大震災といった事件のたびに繰り返される「第二の敗戦論」について論じられています。
http://amzn.to/1sD8cUH

実は、景気循環論の視点から見ると、こうした現象もまた「社会現象と景気循環の結びつき」と捉えられないわけではありません。
1970年代以降、グローバルな規模の不動産バブルが、おおむね20年弱の周期で発生しています。
これは、景気循環の一種である「金融循環」と呼ばれる現象で、日本のバブル経済崩壊もリーマン・ショックもその一環です。
つまり、「第二の敗戦論」は下降する金融循環の影響を受けて起こった社会現象、というわけです。
もちろん、「金融循環が大地震を引き起こしている」ということではなく、「循環の下降局面で起きた災害であるがゆえに、『第二の敗戦論』を引き起こすほど、社会的なインパクトも大きくなっている」という意味での結びつきですが…。
本書に登場する「歴史のリピート機能」「螺旋(らせん)階段」というキーワード、こじつけに思えるかもしれませんが、ついつい「循環」という言葉とダブらせてしまいます。
景気循環メカニズムに基づいて政治や社会の動きをどう読み解くことができるのか、まだまだ試行錯誤ではありますが…。

「金融循環と政治や社会との結びつき」という意味では、部分的に取り上げられているだけですが、中野剛志さんの著書「保守とは何だろうか」も示唆に富んでいます。
近年、金融循環について有益な論文をいくつか発表しているのが、BIS(国際決済銀行)のエコノミストであるクラウディオ・ボリオという人物ですが、私がこの人物の存在を知ったきっかけも、やはり中野さんが書かれた「日本防衛論」でした。
http://amzn.to/I0rNeC
http://amzn.to/1dMu9rU

で、ボリオが書いた論文の一例がこちら。
http://www.bis.org/publ/work395.htm

はばかりながら、ボリオ論文などに刺激を受けて私自身がまとめた「論文モドキ」がこちらです。
http://www.geocities.jp/hajime_shimakura/article.html

「景気循環メカニズムなんて本当にあるの?」と思われた方には、生態学的な視点を交えて景気循環を論じたこちらの拙稿をお勧めします。
http://asread.info/archives/603
http://asread.info/archives/618

こんな話題が続くと、「コイツの勤め先のファンドは、景気循環論なる摩訶不思議な理論に基づいて運用されているんだろうか?」と思われるかもしれませんが、それは全くの誤解、以上はあくまで個人的な見解です。
ファンドの方はそうした相場観とは無縁で、むしろ長期的にじっくりとお金を増やしたい方向けの商品設計になっています。
http://www.saison-am.co.jp/fund_g/index.html

もちろん、景気循環論を証券投資にどう応用できるのか、個人的には非常に興味あるテーマではありますが、現実問題として、それはなかなか難しい…(笑)。
http://keiseisaimin4096.blog.fc2.com/blog-entry-54.html

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tag : 日本経済 景気循環 バブル 第二次世界大戦 太平洋戦争 三橋貴明 中野剛志 佐藤健志

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島倉原(しまくら はじめ)

Author:島倉原(しまくら はじめ)
 経済評論家。株式会社クレディセゾン主任研究員。経済理論学会および景気循環学会会員。
 メルマガ『島倉原の経済分析室』(毎週日曜日発行)や、メルマガ『三橋貴明の「新」日本経済新聞』(隔週木曜日寄稿)の執筆を行っています。

著書『積極財政宣言:なぜ、アベノミクスでは豊かになれないのか』(新評論、2015年)

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