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悪魔のシナリオに憑かれた日本経済?

メルマガ「三橋貴明の『新』日本経済新聞」の記事を執筆しました。

今回は「悪魔のシナリオに憑かれた日本経済?」というタイトルで、小泉構造改革の中心人物で現政権にも強い影響力を持つ竹中平蔵氏を題材として、「緊縮財政と構造改革ありき」で動かされている経済政策の危うさについて述べています。。

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以下では今回の記事を転載しています。




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【島倉原】悪魔のシナリオに憑かれた日本経済?

From 島倉原@評論家

おはようございます。
先日、人事異動があり、これまでの勤務先で出向していたセゾン投信株式会社から、出向元で親会社の株式会社クレディセゾンに転勤となりました。
そんなわけで、今回からは「@評論家」の肩書きで寄稿いたしますので、引き続きよろしくお願いします。

最近、「市場と権力~『改革』に憑かれた経済学者の肖像」(佐々木実著、講談社、2013年)という本を読む機会がありました。
http://amzn.to/1ohR1cZ

同書は、本メルマガでもたびたび取り上げられている、ご存知、竹中平蔵氏(慶応大学教授、産業競争力会議メンバー)の生い立ちから現在に至るまでを追いかけたノンフィクションで、著者は元日本経済新聞記者のフリージャーナリストです。

竹中氏といえば、本のタイトルにもあるとおり「小泉構造改革」の中心人物。
経済政策への関与は、バブル全盛期の1980年代後半に始まった日米構造協議がスタートのようです。
もっともこの頃は、アメリカの国際経済研究所に所属し、日本経済に関する様々なデータをアメリカ側のブレーンに提供する、という関わり方だったようですが。

この時の竹中氏の主張は、なんと公共投資推進論。
当時のアメリカは、国際収支の不均衡是正と日本における自らのビジネスチャンス拡大を狙って「日本の公共投資をGNP比で10パーセントまで高める」ことを要求項目に掲げ、1990年6月にまとめられた日米構造協議の最終報告書には「10年で総額430兆円の公共投資」が盛り込まれました。
これに対し竹中氏は、「日本の公共インフラは諸外国よりも貧弱なのだから、430兆円は最低限の投資額に過ぎず、さらに100兆円を積み増せ」と提言する論稿を、「季刊アステイオン」(1991年秋号)に発表したそうです。

小泉政権期には180度転換し、緊縮財政路線を推進したのは周知のとおり。
一昨年には過去の主張はどこへやら、「10年で200兆円の公共事業」と伝えられた国土強靭化政策(当時野党だった自民党が法案を提出)を批判する論稿を発表しています。
巨大地震対策は、竹中氏が公共投資推進論を唱えた当時には今ほど意識されていなかったであろう、事実上新たに加わった公共投資へのニーズであるにもかかわらず…。

(参考)
竹中平蔵「“国土強靭化政策”をどう受け止める?」(竹中平蔵ポリシー・スクール、日本経済研究センターWebサイト、2012年8月16日)
http://www.jcer.or.jp/column/takenaka/index392.html
藤井聡「『竹中平蔵氏の国土強靭化批判』を『分析』する」(日刊建設工業新聞、2012年8月29日)
http://trans.kuciv.kyoto-u.ac.jp/tba/archives/233

結局かつての公共投資推進論は、当時のアメリカ政府の主張を自論のごとく仕立て上げたものなのでしょう。
竹中氏にとっては、政策のもたらす実体的な効果の良し悪しよりも、「アメリカと連携した構造改革」自体が一貫して目的化していることをうかがわせるエピソードです。
ちなみに「市場と権力」によると、竹中氏は小泉政権誕生前、小泉純一郎氏と鳩山由紀夫氏(当時民主党党首)それぞれの政策ブレーンとなるべきチームを、別々に立ち上げていたそうです。恐るべし…。

さて、直近の竹中氏、消費税10%への引き上げには反対の立場です。
緊縮財政論者なのに意外や意外、と思いきや、

「歳入を増やすために消費増税をしたのに、増税による景気悪化を歳出増によって手当てするという、悪循環がはじまろうとしている」
(竹中平蔵&高橋洋一「日本経済のシナリオ」中経出版、2014年)
http://amzn.to/1tCK9sW

のが反対の理由なんだとか。
(なお、参考までにリンクを貼りましたが、「日本経済のシナリオ」の購読をおススメしているつもりはございませんので、念のため)

つまり、増税して景気が悪化すると景気対策を求める声が高まって財政支出拡大要因となり、緊縮財政(本来誤用である彼らの表現を借りれば「財政健全化」)、あるいはその先にある構造改革を進めるのに邪魔になるから反対、という理屈です。
ということは、増税を打ち止めにしてさらなる景気悪化を回避したとしても、その後に待つのはさらなる緊縮財政と新自由主義的な構造改革?
1997年、5パーセントへの消費増税に追い討ちをかけるように施行された財政構造改革法(財政赤字をGDP比3パーセント以内に抑え込むことを明文化)がその後の景気悪化を受けて凍結(「廃止」ではありません)された後も、緊縮財政と構造改革自体は継続していることからすれば、ありえない話ではありません。

そうした状況では、竹中氏が嫌うもう1つのシナリオ「追加増税によるさらなる景気悪化→追加景気対策」が実現したとしても、財政支出の増加は短期的なものにとどまることが想定されます。
そうなると、日本経済はまたしても「失われた20年の悪循環」から抜け出せないということに…。

なにせ、「進行中のアベノミクスは、小泉政権のときに私たち2人が描いていたシナリオにほかならない」(「日本経済のシナリオ」、高橋氏執筆の「はじめに」より)だそうですから。
このあたり、本メルマガで東田剛氏が1年以上前に指摘されたとおりですね。

(参考)
東田剛「竹中先生、日本経済 次はどうなりますか?」(2013年7月10日)
http://www.mitsuhashitakaaki.net/2013/07/10/korekiyo-52/

本メルマガの読者の皆様であれば、積極財政や公共事業の重要性については、概ね認識されていることと思います。
「積極財政が日本を救う」をモットーとする私自身、さらなる消費増税はもちろん反対です。
だからといって、ある政治家や有識者が消費税増税に反対していたとしても(場合によっては公共事業拡大に賛成していたとしても)、おいそれと支持・信用すべきではないのかもしれない。
見極めのポイントはあくまでも、「経済政策の柱は構造改革でも金融緩和でもなく、積極財政である(さらにいえば、積極財政こそが『財政健全化』の途である)」という基本的な認識を共有しているか否か。
竹中氏の足跡は、そうした難しい現実を突きつけているような気がします。

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島倉原(しまくら はじめ)

Author:島倉原(しまくら はじめ)
 経済評論家。株式会社クレディセゾン主任研究員。経済理論学会および景気循環学会会員。
 メルマガ『島倉原の経済分析室』(毎週日曜日発行)や、メルマガ『三橋貴明の「新」日本経済新聞』(隔週木曜日寄稿)の執筆を行っています。

著書『積極財政宣言:なぜ、アベノミクスでは豊かになれないのか』(新評論、2015年)

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