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大恐慌時の米国と現在の日本

去る5月31日、前回に続き「日本経済復活の会」の定例会にて、「巨大バブル崩壊後の過程に見る、日本経済復活の処方箋」と題してプレゼンテーションを行いました。当日のプレゼン資料と動画サイトへのリンク先は下記の通りです。

【当日のプレゼン資料(pdf)】
日本経済復活の会20120531.pdf

【ユーチューブ】
・前半部
・後半部

【ニコニコ動画】
・前半部
・後半部

他の方のプレゼンとの絡みで時間が押していたこともあって、あまりじっくり説明できなかったのですが、「歴史に残る巨大バブルの崩壊」としていくつかの共通点が見られる1930年代の大恐慌当時の米国と1980年代バブルの崩壊後現在に至るまでの日本を比較することを通じて、未だに低迷から脱却できない日本経済に必要な政策が何なのか、あくまでも「事実に基づき」分析したものです。
また、大恐慌の原因や解決策を巡る経済学説の対立(単純化すると、需要不足を原因として財政支出の拡大に解を求めるケインジアンと、中央銀行による通貨供給不足に原因として金融緩和に解を求めるマネタリスト)にも言及し、どちらの考え方がより妥当か、そもそもなぜこのような対立が生じたのかについても言及しています。

分析の要旨は、

・株価の動き(共にピークから8割以上下落した、というだけではなく、その形状も非常に良く似ている)に代表されるように、米国と現在の日本にはいくつかの共通点が見られるが、経済全体のパフォーマンスは、前半期は日本、後半期は米国の方が相対的に良好である(前半期の米国は、今の日本同様慢性的なデフレ状況にあると共に、ピークから4年で名目GDP即ち国民全体の所得が半減、失業率25%という、今の我々には想像がつかないほど悲惨な状況に陥った)。
・前半期の米国は、「マネタリーベース拡大額(中央銀行が直接コントロールする通貨供給量>財政支出拡大額」の関係が成り立っていて、明らかに「金融緩和積極期」であった(フローとストックの違いはありますが、今も昔も、日米とも「年間財政支出額>マネタリーベース」が通常の状態なので、こう言い切ることができます)。これに対して後半期は、第二次世界大戦への参戦を契機として両者の関係が逆転し、「財政出動積極期」に移行し、デフレからも脱却した。
・他方で前半期(1990年代前半まで)の日本は、公共事業をはじめとした景気対策を背景として「財政支出拡大額>マネタリーベース拡大額」の関係が成り立っていて、名目GDPも拡大を続けた。これに対して後半期(1990年代後半以降)は両者の関係が逆転すると共に、名目GDPは現在に至るまで横ばいで推移し、慢性的なデフレ状況にある(この間年間財政支出額も横ばい、マネタリーベースは1995年と現在を比較すると倍以上に増えています)。
・以上より、財政支出拡大こそが経済再建のための処方箋であることは明らかであり、財政支出拡大を伴わない金融緩和をいくらやっても無駄(現在の日本は過剰な金融緩和状態)。
・従って、「金本位制にとらわれたFRBが通貨供給を充分に行わなかったのが大恐慌の原因」とするマネタリストの議論は、実態を無視した誤ったものであることも明らか。中央銀行が直接コントロール可能な対象ではなく、各経済主体の借入需要(もとをたどれば)支出意欲の拡大・縮小によって増減する「マネーストック」(以前は「マネーサプライ」という紛らわしい用語が使われていました)の動き(今回プレゼン資料には出しませんでしたが、確かに米国では1929~1933年にかけて、名目GDPと共に急減しています)を取り上げて、「『マネー~』と名のつく経済指標がGDPと連動して急減している⇒故に、金融政策に問題があったに違いない」としたところに、根本的な誤り(勘違い?)がある(こうした手合いがノーベル経済学賞をもらったりFRB議長になったりするのが、この世の中の悲しい現実です)。また、マネタリストが「効果が無かった」とするルーズベルト大統領のニューディール政策(公共事業の拡大)は、上記の「前半期」に属する出来事で、実はイメージされているほど「積極的」なものではなかった。

というものです。

こうした事実があるにもかかわらず、「デフレ脱却ができないのは日銀のせいだ!!」と唱えて、与野党揃って日銀法改正案を作って空虚なアピールに一生懸命なのが、もう一つの(より一層)悲しい現実です(ノーベル経済学賞やFRB議長のポストと違って、我々の生活に直結しますから)。

※日本経済再生のための財政支出拡大の必要性については、徐々に理解者・支持者が増えているとはいえ、まだまだ主要マスコミでのネガティブな報道等の影響力が強いのが現状です。ツイッター、フェイスブック等のソーシャルメディアを通じて1人でも多くの方にご理解いただくため、下記ボタンのクリックにご協力いただけると幸いです。

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島倉原(しまくら はじめ)

Author:島倉原(しまくら はじめ)
 経済評論家。株式会社クレディセゾン主任研究員。経済理論学会および景気循環学会会員。
 メルマガ『島倉原の経済分析室』(毎週日曜日発行)や、メルマガ『三橋貴明の「新」日本経済新聞』(隔週木曜日寄稿)の執筆を行っています。

著書『積極財政宣言:なぜ、アベノミクスでは豊かになれないのか』(新評論、2015年)

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