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積極財政が「国の借金問題」を解決する

インターネット動画「チャンネルAjer」の収録を行いました。
今回は「積極財政が『国の借金問題』を解決する」というタイトルで、全体で約40分のプレゼンテーションです。

【動画へのリンク】
積極財政が「国の借金問題」を解決する(前編)
積極財政が「国の借金問題」を解決する(後編)

前回のプレゼンテーション「積極財政こそが財政健全化を実現する」は、

財政支出を拡大する積極財政を行えば、経済成長とそれに伴う企業の投資意欲活性化というマクロの経済効果を通じて、単年度の財政赤字(名目GDP比)はむしろ縮小することが実証的に確認できる

という内容でした。
http://keiseisaimin4096.blog.fc2.com/blog-entry-69.html

今回は、単年度の赤字ではなく、その積み重ねである政府債務の残高、いわゆる「国の借金問題」がテーマです。
マスメディア等では、国際比較で著しく大きい政府債務残高(名目GDP比)を財政破たんの可能性と結びつけ、財政支出を抑制する「緊縮財政」が不可避であるという論調が盛んです(実際の報道では、「緊縮財政」という表現は用いられず、同じ意味であるかのように「財政健全化」という表現が用いられていますが、財政健全化と緊縮財政が同じ意味ではないことは、前回述べたとおりです)。
しかしながら、今回のプレゼンテーションでは、

政府債務比率の上昇も、財政赤字の拡大同様むしろ緊縮財政によって引き起こされたものであり、積極財政を行えばこうした問題も解消できる

ことを、理論・実証の両面から示しています。

↓今回のプレゼンテーション資料です。
積極財政が「国の借金問題」を解決する.pdf

以下はプレゼンテーションの概要です。


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「国の借金問題」は緊縮財政の実行と共に深刻化した

「国の借金問題」とは、一国の経済規模を示す名目GDPに比べて、政府債務残高が著しく大きいことを問題視する議論です。
ではなぜ、名目GDPに対する政府債務残高の比率(以下「政府債務比率」といいます)が問題とされるのでしょうか。

それは、名目GDPとは国内で発生した所得の合計でもあり、国や地方自治体の主な収入源の1つである税収は、所得や経済規模の動向に左右されるからです。
つまり、政府債務比率が著しく大きいのは、収入に見合わない過剰な借金を抱えている状態であり、政府の運営に支障をきたす(=財政破たん)可能性が高いと考えられているからです。

事実、日本政府(国、地方自治体、および社会保障基金)の政府債務比率は、債務の総額を示す粗債務ベースで225%、粗債務から政府が保有する金融資産を差し引いた純債務ベースで138%(いずれも2013年末、OECDデータより)と、いずれも世界最大の水準です。
政府債務比率の高さは日本の財政状態が不健全であることを示すもの、ひいては財政支出抑制や増税といった緊縮財政を正当化する根拠として、多くの議論で用いられています(かつては「ユーロ危機によって2010年に財政破たんしたギリシャのそれより高い」という議論も盛んでした)。

(参考記事)「吉川洋・東大大学院教授に聞く 社会保障維持へ10%判断を」(サンケイビズ、2014年10月30日)
http://www.sankeibiz.jp/macro/news/141030/mca1410300500007-n1.htm
(ちなみに、この記事で「財政赤字」とあるのは「政府粗債務」の誤りです。揚げ足を取るつもりはありませんが、こんなところにも緊縮財政論のずさんさが表れているように思います)

しかしながら、政府債務比率が高いことを緊縮財政正当化の根拠とすることは誤りです。
なぜならこうした議論は、

「政府がお金を使い過ぎているから政府債務比率が高止まりしている(ゆえに、同比率を引き下げるためには緊縮財政をしなければならない)」

ことを前提としていますが、こうした前提がそもそも現実と矛盾するからです。

図1は、名目GDPに対する政府純債務比率の推移を、日本とOECD加盟国平均について示したものです(マスメディアでは粗債務比率が用いられることの方が多いものの、借金を増やしてもそれを現金や預金の形で持っているだけなら財務上の健全性には何ら変化がないことからもわかるように、指標としては粗債務よりも純債務の方が適切です。以下の議論における「政府債務」は全て政府の純債務を指すものとします)。

【図1:政府純債務比率の推移(日本およびOECD加盟国平均)】
http://on.fb.me/1uwxhyc

まがりなりにも名目経済成長が続いていた1997年までは、日本の政府純債務比率はOECD加盟国平均のそれを軒並み下回って推移していました(先進7ヵ国、いわゆるG7諸国の中で比べても、当時の日本より同比率が低いのはイギリスだけでした)。
同比率がOECD加盟国平均のそれを上回るようになり、かつ両者の乖離が加速度的に拡大したのは1998年以降、すなわち財政政策が緊縮財政にシフトし、名目経済成長が止まってデフレ不況に陥った以降の話です。
この事実は、国の借金問題は政府の無駄遣い、あるいは積極財政の結果ではないことを示しています(「(現実には削減されてきたにもかかわらず)公共事業の無駄遣いが国の借金を増やしている」という誤った議論と似たような構図です)。

もちろん、上記の事実を示しただけでは、「国の借金問題を深刻化させた原因は緊縮財政である」という因果関係を立証したことにはなりません。
しかしながら、

「一国の長期的な経済成長率を決めるのは、長期的な財政支出の伸び率である」

という、これまで再三にわたって述べてきた命題を前提とすれば、

「政府債務比率の低下につながるのは積極財政の方で、緊縮財政はむしろ政府債務比率を上昇させる」

という結論を、「論理的に」導き出すことができるのです。
(当ブログで再三示していますが、前提としている上記命題を裏付けるデータは、図2および図3の通りです)

【図2:日本の各種マクロ経済データの推移(1980~2013年)】
http://on.fb.me/1t1Nxqj

【図3:財政支出伸び率と経済成長率の国際比較(24カ国、1997~2013年の年平均)】
http://on.fb.me/1wUxylr


積極財政が「国の借金問題」を解決することの証明(その1)

まず、

「緊縮財政よりも積極財政の方が、政府債務比率を低下させる」

ことを示します。

ここでは、

「緊縮財政を行うと名目GDP比の財政収支(=当年度財政収支÷当年度名目GDP)が縮小し(「赤字の拡大」の場合も含む)、積極財政を行うと名目GDP比の財政収支が拡大する(「赤字の縮小」の場合も含む)」

という前回示した結論を用います。

すなわち、

当年度政府債務比率
=当年度政府債務÷当年度名目GDP
=(前年度政府債務-当年度財政収支)÷当年度名目GDP
=前年度政府債務÷当年度名目GDP(A)-当年度財政収支÷当年度名目GDP(B)
(「当年度財政収支」の符号がマイナスなのは、財政赤字の時には純債務が増え、財政黒字の時には純債務が減るからです)

ですから、

緊縮財政
⇒Aの分母である当年度名目GDPを小さくする(図2&3参照)と共に、Bを縮小する(前回の結論より)
⇒Aを大きくするとともに、「-B」を大きくする
⇒当年度政府債務比率をより上昇させる

積極財政
⇒Aの分母である当年度名目GDPを大きくする(図2&3参照)と共に、Bを拡大する(前回の結論より)
⇒Aを小さくするとともに、「-B」を小さくする
⇒当年度政府債務比率をより低下させる

ことは明らかです。


積極財政が「国の借金問題」を解決することの証明(その2)

次に、

「あるレベル以上の積極財政を行えば、政府債務比率は長期的に低下していく」

ことを示します。
前年度から当年度にかけての「政府債務比率の変化」を分解していくと、「前年度名目GDP=当年度名目GDP÷(1+当年度名目GDP成長率)」なので、

政府債務比率の変化
=当年度政府債務÷当年度名目GDP-前年度政府債務÷前年度名目GDP
={前年度政府債務×(1+当年度借入金利)-当年度プライマリーバランス}÷当年度名目GDP-前年度政府債務×(1+当年度名目成長率)÷当年度名目GDP
=-当年度プライマリーバランス÷当年度名目GDP+{(1+当年度借入金利)-(1+当年度名目GDP成長率)}×前年度政府債務÷当年度名目GDP
=-当年度プライマリーバランス÷当年度名目GDP-(当年度名目GDP成長率-当年度借入金利)×前年度政府債務÷当年度名目GDP

となります(プライマリーバランスとは、借入利息の支払いや金融資産からの利息収入の影響を除いた財政収支のことです)。
この結果は、当年度プライマリーバランスが黒字で、かつ当年度名目GDP成長率が当年度借入金利を上回っていれば、当年度政府債務比率が前年度政府債務比率よりも必ず低下することを意味します。

ちなみにこのことは、リフレ派経済学者の1人である高橋洋一氏がダイヤモンド・オンラインに寄稿した「『消費増税で財政再建できる』は大間違い」という記事(下記URL参照)でも述べられています(式の最終結果が若干異なっていますが、いずれにしても上記で述べた「意味」には変わりありません)。
http://diamond.jp/articles/-/61359?page=3

ここで、「借入金利=国債金利」と考えれば、名目GDP成長率と国債金利は長期的にはほぼ同水準で連動して推移するので(図4)、上記数式最終結果の第2項(青字の部分)は無視することができます。

【図4:名目GDP成長率と長期国債金利の推移】
(日本)
http://on.fb.me/1FjrFzy
(アメリカ)
http://on.fb.me/1v3yfWs

したがって、

政府債務比率を減らすためには、プライマリーバランス(名目GDP比)を黒字化すれば良い

ということになります。

そして、図5でも明らかなように、プライマリーバランス(名目GDP比)は、長期的に名目GDP成長率とかなり高い相関関係にあります(前年度名目GDP成長率との相関係数は0.7598)。

【図5:日本のプライマリーバランス(名目GDP比)と名目GDP成長率(前年度)の推移】
http://on.fb.me/1yMsKvU

図2~図5の事実を踏まえれば、上述した政府債務比率の変動式より、

「積極財政を行ってあるレベル以上に名目経済成長率を高めれば、プライマリーバランスが黒字化して政府債務比率が減少する。」

という結論を導き出すことができます(もちろん、リフレ派の高橋氏は「名目成長を達成するのは金融緩和である」という議論を上記記事でも展開していますが、それが誤りであることは図2を見れば納得いただけると思います)。
これは、積極財政によるミクロレベルでの政府債務比率へのマイナス効果(支出増)よりも、経済成長を通じたマクロレベルでのプラス効果(税収増および分母である名目GDPの成長)の影響の方が大きいことを意味しています(言うまでもないかもしれませんが、「証明その1」、および前回プレゼンテーションの議論と同様な構図です)。

さらに、1970年代までのような、名目GDP成長率と金利が長期的に上昇トレンドにある局面(景気循環論的に言えば「コンドラチェフ循環の上昇局面」)においては、概ね名目GDP成長率が長期国債金利を上回る(図4参照)ため、さらに政府債務比率が減少することが経験則上確認できます。
これは、

「デフレ脱却して金利が上昇に転じたら財政が破たんする」という議論は、現実には妥当しない

ことを意味しています。

もちろん、名目経済成長が行き過ぎれば過度のインフレという弊害を招きますから、やり過ぎるべきではありませんが、

適度な積極財政を行ってデフレ不況を脱却しながら、いわゆる「国の借金問題」も解決する

のが、結局正しい経済政策なのです。
(プライマリーバランスと経済成長率の相関関係などから単純計算すると、あまり厳密な議論とはいえないものの、毎年5%以上は財政支出を拡大すべき、ということになります)



※日本経済再生のための財政支出拡大の必要性については、徐々に理解者・支持者が増えているとはいえ、まだまだ主要マスコミでのネガティブな報道等の影響力が強いのが現状です。1人でも多くの方にご理解いただくため、ツイッター、フェイスブック等での当記事の拡散や、ブログランキングボタンの応援クリックにご協力いただけると幸いです。




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島倉原(しまくら はじめ)

Author:島倉原(しまくら はじめ)
 経済評論家。株式会社クレディセゾン主任研究員。経済理論学会および景気循環学会会員。
 メルマガ『島倉原の経済分析室』(毎週日曜日発行)や、メルマガ『三橋貴明の「新」日本経済新聞』(隔週木曜日寄稿)の執筆を行っています。

著書『積極財政宣言:なぜ、アベノミクスでは豊かになれないのか』(新評論、2015年)

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