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正しいものは何なのか

メルマガ「三橋貴明の『新』日本経済新聞」の記事を執筆しました。

今回のタイトルは「正しいものは何なのか」というタイトルで、本ブログでも紹介した「チャンネルAjer」でのプレゼン「雇用は本当に改善しているのか」を題材にしています。

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http://www.mag2.com/m/0001007984.html

以下では今回の記事を転載しています。




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【島倉原】正しいものは何なのか

From 島倉原@評論家

明けましておめでとうございます。
奇しくも元旦の執筆を担当することになり、緊張という訳ではないのですが、やはり特別な感じがしています。
月並みですが、本年もどうぞよろしくお願いします。

さて、新年早々後ろ向きな話から。
といっても、「ネガティブな」という意味ではなく、先月行われた解散総選挙に絡んだ話題を、という意味です。

昨年末、チャンネルAJERにて「雇用は本当に改善しているのか」というタイトルでお話しました。
雇用状況は、先の総選挙において「アベノミクスの成否」を巡って与野党の応酬が繰り広げられる中、特にクローズアップされた論点です。
その意味では、動画自体のタイミングも後ろ向きになってしまったのですが、現状をどう認識すべきなのか、与野党どちらの主張が妥当であったと言えるのか、冷静に分析してみよう、という趣旨でした。
http://keiseisaimin4096.blog.fc2.com/blog-entry-76.html

この2年間での雇用者数の増加や賃金の伸び、果ては22年ぶりの水準に達した有効求人倍率の向上をアベノミクスの成果としてアピールする与党。
これに対して、増加しているのは非正規雇用者数だけで正規雇用者数はむしろ減少し、1人当たり実質賃金も1年以上低下を続けているとしてアベノミクスを批判する野党。
そうした野党の批判に対して、「1人当たり賃金が伸びていなくても、総雇用者所得は増えている」「正規雇用者数も、1年前と比べれば増えている」と反論する与党。
http://www.asahi.com/articles/ASGD666MVGD6ULFA00G.html

実はどちらの議論も公式の統計データに基づくものであり、決してウソではありません。
問題は、データの選び方や解釈の仕方が適切なのかどうか。

まず、賃金あるいは雇用者所得に関する議論ですが、総雇用者所得(GDP統計上の「雇用者報酬」?)が増えているのはあくまで名目ベースの話。
したがって、与党の反論は、実質賃金の低下を批判の対象とした野党に対する反論には、実は全くなっていません。
それに、経済政策上、賃金や所得で問題とすべきは「実質」の方であることは、本メルマガの読者の皆さんであれば、耳にタコができるほどご存じのはず。
そのことを明確に指摘した共産党が今回議席を2倍以上獲得したのは、ある意味当然のことかもしれません。
http://www.asahi.com/articles/ASGCZ5WTZGCZUTFK00C.html
そもそも、「総雇用者所得」などという経済指標は存在しない、という指摘さえあり(私自身は上記の通り、論点を加味して「GDP統計上の雇用者報酬」を分析対象としましたが)、このあたりにも与党の議論の乱れが見られます。
http://blogos.com/article/95986/

他方、雇用者数の議論に関しては、総雇用者数の変化で雇用環境の実態を把握することに、そもそも問題があると考えられます。
例えば、女性や高齢者のことを考えてみてください。
女性の社会進出、結婚年齢の上昇、年金支給開始年齢の引き上げ。
これらは、雇用環境が改善していない状況でも、正規・非正規問わず、総雇用者数の押し上げ要因として働きます。
そうした要因の影響を加味していない点で、与野党いずれも、議論の仕方が適切でなかったことになります。

こうした問題意識に基づいて私なりに分析したのが、今回の「雇用は本当に改善しているのか」。
結論は、「与党の議論は不当、でも野党も突っ込み不足」。
雇用環境はほとんど改善しているとはいえず、デフレ不況をもたらした緊縮財政からの脱却なしには、抜本的な改善は見込めないのではないか。
これが統計データの分析に基づく、改めての結論です。
http://keiseisaimin4096.blog.fc2.com/blog-entry-76.html

という具合に収録を終えた翌日、日経新聞の朝刊を開いたら嫌なものを見てしまいました。
株式相場欄をさらにめくると、「経済教室」という経済関連の論説ページがあるのですが、当日の執筆者が日銀副総裁の岩田規久男氏。
タイトルは「量的・質的金融緩和の論点 『レジーム転換』が効果発揮」で、大規模金融緩和が雇用環境の改善をもたらした、という上記与党の主張にも沿った内容。
http://www.nikkei.com/article/DGKKZO81271810U4A221C1KE8000/

でも、岩田氏が何かを公に主張する時って、大抵は直近のデータのいいとこ取りで、しかもその直後からご本人の主張と全く逆のことが起こるんですよね。
私自身もブログ、あるいは本メルマガでも取り上げたことがありますが、そうした事例は20年以上前から、少なくとも3回は存在します。
なので上記の論説を見た時、科学的根拠は全くありませんが、今後の雇用環境に対して何だか(さらに?)悲観的な気分になってしまいました。
http://keiseisaimin4096.blog.fc2.com/blog-entry-49.html
http://www.mitsuhashitakaaki.net/2014/09/11/shimakura-5/

結局、「ネガティブ」という意味でも後ろ向きな内容になってしまったようですが、昨日佐藤健志さんも指摘されていたように、正しい認識を持っていれば、仮に危険な状況であったとしても、それなりの対応策の取りようもあるというものです。
そして、そのことがわかって自分の見ている方向に自信が持てれば、現実に前向きな対応策を実行できることでしょう。
2015年が、読者の皆さんにとってそんな1年でありますように。

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PS
2015年の世界と日本を三橋貴明が解説しています。
https://www.youtube.com/watch?v=eQUSqYvie2s

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島倉原(しまくら はじめ)

Author:島倉原(しまくら はじめ)
 経済評論家。株式会社クレディセゾン主任研究員。経済理論学会および景気循環学会会員。
 メルマガ『島倉原の経済分析室』(毎週日曜日発行)や、メルマガ『三橋貴明の「新」日本経済新聞』(隔週木曜日寄稿)の執筆を行っています。

著書『積極財政宣言:なぜ、アベノミクスでは豊かになれないのか』(新評論、2015年)

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