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格差解消の処方箋?

メルマガ「三橋貴明の『新』日本経済新聞」の記事を執筆しました。

今回は「格差解消の処方箋?」というタイトルで、チャンネルAjerでのプレゼン「日米の雇用環境に見る、アベノミクスの誤り」(下記URL参照)の解説を行っています。
http://keiseisaimin4096.blog.fc2.com/blog-entry-82.html

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以下では今回の記事を転載しています。




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【島倉原】格差解消の処方箋?

From 島倉原@評論家

おはようございます。

トマ・ピケティ氏の『21世紀の資本』やその関連本がちょっとしたブームになっているようです。
だからというわけではないのですが、先週の「チャンネルAjer」では、雇用を巡る格差問題を取り上げてみました。
タイトルは「日米雇用環境に見る、アベノミクスの誤り」。
もともとは、金融市場での注目指標の1つであるアメリカの雇用統計をネタに、直近のアメリカ経済の動向でも論じてみようか、くらいの感覚で調べ始めたのですが、いつの間にやら積極財政論を交えつつ、雇用規制緩和を成長戦略の柱の1つにしているアベノミクス批判を展開していました。
http://keiseisaimin4096.blog.fc2.com/blog-entry-82.html

日本は特に戦後、アメリカの多大な影響を受け、様々な制度や文化を取り入れています。
しかしながら、もともとの土壌が異なるためか、強い影響を受けた分野においても、しばしば全く対照的な結果が生じていることがあります。
そこで「日本とアメリカは異質だから」と思考を止めればそれまでですが、「共通点があるはずにもかかわらず、なぜ対照的な結果が生じているのか」にこだわって分析していくと、日本の現実がよりよく見えてくる―会社で勤務している時間も含め、そんな感覚に囚われた経験が少なからずあります。

今回比較したアメリカの雇用統計、日本の労働力調査という2つの統計にしても、ある意味対照的な動きを示しています。
グローバル化が本格化し出した1970年代以降、就業率の低下トレンドが始まっているのは両国とも共通です。
ところが、就業率の低下度合いは、景気悪化時のフルタイム雇用者の解雇が容易なアメリカの方が明らかに進んでいます。
これに対し、雇用者に占める非正規比率の拡大は、1990年代後半以降、緊縮財政と共に派遣労働の制度的拡大が進められた日本の方がむしろ進んでいるのです(日本が正規・非正規で区分しているのに対し、アメリカはフルタイム・パートタイムで雇用者を区分しているので、必ずしも単純比較はできないのですが)。

こうした日本の状況を、「制度によって生まれた正規・非正規の格差問題」と捉え、「だから正規社員の終身雇用をなくせばいい。正規社員を解雇しやすくて正規・非正規の格差を解消すれば、就業率も上がるはず」と唱えるのが、アベノミクスの雇用規制緩和にも多大な影響力を持つ、ご存じ竹中平蔵氏。
http://www.huffingtonpost.jp/2015/01/04/heizo-takenaka_n_6412240.html
週刊ダイヤモンド2015/2/14号でピケティ特集が組まれた時にも、「有識者」の1人として同様な議論を展開しています。

ちなみに同記事によれば、「今、世界が解決すべき重要な問題提起をした」ピケティ氏に対する竹中氏の「支持率」は70%なんだとか。
でも、格差を生み出した制度って、小泉政権期に大幅に拡充された派遣労働制度……ではない、とおっしゃりたいのでしょうね、きっと。

では、竹中氏の言うように、正規社員の解雇を容易に、いわばアメリカ型の土壌に「改革」すればどうなるのでしょう。
終身雇用制度の歯止めがなくなって就業率の低下が加速し、「就業者・非就業者」という、より大きなレベルの格差が拡大するだけ、というのが統計データの示すところではないでしょうか?
そもそも、「人材への超長期投資」ともいうべき終身雇用制度がうまく機能しなくなったのは、緊縮財政によって名目経済成長が止まったせいなのでは?
だとすれば、積極財政と終身雇用制度によって日本の強みを生かしつつ、グローバル化の弊害を緩和するのが正しい経済政策のはず……詳しくはブログ記事をお読みいただければと思いますが、これが今回のメッセージです。
http://keiseisaimin4096.blog.fc2.com/blog-entry-82.html

さて、今回、「終身雇用制度が本来持つ強み」を論じるためにブログ記事で間接的に引用したのが、国際的にも著名なカナダの経営学者(といいつつ、私は初めて知ったのですが)であるヘンリー・ミンツバーグ氏の「マネジメントに正解はない」という論文。
雇用問題とは別に、日本のあり方を考える上でちょっと気になる一節があったので、最後にご紹介しておきます。

「考察6:偉大な組織は一度築き上げれば、偉大なリーダーを必要としない

(中略)
 永世中立国のスイスは組織として非常にうまく機能しているが、その功労者を特定するのは不可能に近い。それというのも、連邦内閣の構成者七名が一年交代で国家元首を務めるのだ。」(ヘンリー・ミンツバーグ『H. ミンツバーグ経営論』170~171ページ)
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tag : 雇用 格差 非正規雇用 財政政策 日本経済 アベノミクス トマ・ピケティ 竹中平蔵 三橋貴明

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目を覚ますためにやるべきこと

終身雇用制度を人材への超長期投資と捉えたことは目からウロコでした。
人材のみならず長期的計画という考えが昨今の政府には見られません。
メルマガに関連しても、かつての全総のような中長期の計画があれば様々な課題の解決につながると認識しています。
さらに投資についても苗木を植え自分たちの次の世代のために行う行為という認識から少しずれている気がします。
そこで政府への要望として何から始めれば良いのでしょうか?
財政健全化の見直しでしょうか?国土強靭化の推進でしょうか?全く真逆の方向に進む政府に僕たちができることはなんなのでしょうか?

Re: 目を覚ますためにやるべきこと

コメントありがとうございます。
列挙された課題に通じるものとして正されるべきは、「支出抑制や増税に努めれば、財政が健全化する」という短期的かつミクロの発想にとらわれた、誤った均衡財政主義だと思います(マクロ、あるいは日本の現実は、むしろその逆です)。
自民党の憲法草案や財政健全化法案にもその発想が染みついていますし、1997年に施行された財政構造改革法にしても、施行が停止されているだけで、廃止されたわけではないですし。
こうした個別事象に対して問題提起し、時間をかけて大きな流れを徐々に変えていくはたらきかけは、欠かせないと思います。
中長期的な計画が必要であるというご指摘も、その通りだと思います(今の発想のままの中長期計画では、逆効果となる恐れもありますが)。

具体的に何から始めれば良いか、というご質問に対しては、残念ながら、あまり確信を持った答えはできません(私自身が、政治や行政の世界に身を置いている訳でも無く、その点はまだまだ勉強不足なので)。
ご指摘のあった国土強靭化の推進のほか、分かり易いテーマとしては、消費税再増税の撤回や、地方交付金予算の拡充などが考えられるのではないかと思います。

> 終身雇用制度を人材への超長期投資と捉えたことは目からウロコでした。
> 人材のみならず長期的計画という考えが昨今の政府には見られません。
> メルマガに関連しても、かつての全総のような中長期の計画があれば様々な課題の解決につながると認識しています。
> さらに投資についても苗木を植え自分たちの次の世代のために行う行為という認識から少しずれている気がします。
> そこで政府への要望として何から始めれば良いのでしょうか?
> 財政健全化の見直しでしょうか?国土強靭化の推進でしょうか?全く真逆の方向に進む政府に僕たちができることはなんなのでしょうか?
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島倉原(しまくら はじめ)

Author:島倉原(しまくら はじめ)
 経済評論家。株式会社クレディセゾン主任研究員。経済理論学会および景気循環学会会員。
 メルマガ『島倉原の経済分析室』(毎週日曜日発行)や、メルマガ『三橋貴明の「新」日本経済新聞』(隔週木曜日寄稿)の執筆を行っています。

著書『積極財政宣言:なぜ、アベノミクスでは豊かになれないのか』(新評論、2015年)

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