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憲法改正案の問題点

インターネット動画「チャンネルAjer」の収録を行いました。
今回は「憲法改正案の問題点」というタイトルで、全体で約30分のプレゼンテーションです。

(動画前半)憲法改正案の問題点①
(動画後半)憲法改正案の問題点②

憲法改正を念願とする安倍首相のもとで、2016年秋または2017年春に改正を実現しようとする動きが自民党で進んでいます。

(参考記事)
産経ニュース「憲法改正「遅くとも再来年春の実現へ全力」自民・船田氏 優先項目に環境権、緊急事態、財政規律」(2015/2/14)
http://www.sankei.com/politics/news/150214/plt1502140017-n1.html
毎日新聞「衆院憲法審査会:自民党内でも改正にカンカンガクガク」(2015/4/2)
http://mainichi.jp/select/news/20150403k0000m010089000c.html

上記記事の見出しにもあるように、今回の改正案の中には、現行憲法には存在しない、財政規律に関する条項を含めることが想定されています。
しかしながら、この条項は現在の財政均衡主義を前提とした「改悪」とも言うべきもので、日本経済再生のために行われるべき積極財政の足かせにもなりかねません。
今回は、自民党の憲法改正案がはらむこうした問題点を、憲法改正草案をはじめとした公開資料に基づいて解説しています。

なお、プレゼンテーションの冒頭では、4月末に発売予定の拙著『積極財政宣言:なぜ、アベノミクスでは豊かになれないのか』についても紹介しています。
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↓今回のプレゼンテーション資料です。
憲法改正案の問題点.pdf

以下はプレゼンテーションの概要です。

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現行憲法には存在しない「財政健全化条項」

現行憲法では、

「第83条 国の財政を処理する権限は、国会の議決に基いて、これを行使しなければならない。」

と定められています。
これに対して、自民党の改正草案では、第83条を「財政の基本原則」と銘打ったうえで、

(財政の基本原則)
第83条 国の財政を処理する権限は、国会の議決に基づいて行使しなければならない。
2 財政の健全性は、法律の定めるところにより、確保されなければならない。
(下線付き赤字は現行憲法との差異が生じている箇所)

というように、「基本原則の一部としての財政健全性確保」をうたう第2項が新規で追加されています(下記PDFファイルの22枚目)。
https://www.jimin.jp/policy/policy_topics/pdf/seisaku-109.pdf

この条項では、財政の健全性は「法律の定めるところにより」確保されることになっています。これについては、「日本国憲法改正草案Q&A(増補版)」にて、

「具体的な健全性の基準は、わが党がかつて提出した「財政健全化責任法案」のような法律で規定することになります。」

と述べられています(下記PDFファイルの33枚目)。
https://www.jimin.jp/policy/pamphlet/pdf/kenpou_qa.pdf


均衡財政主義を前提とした財政健全化責任法案

では、財政健全化責任法案とはどのような法案なのでしょうか。
これもまた、自民党ホームページに掲載されています。

(参考)自民党ホームページ「政策トピックス:財政健全化責任法案の考え方」
https://www.jimin.jp/policy/policy_topics/097685.html

上記ページからダウンロードできるPDF資料の1枚目にあるように、同法案では当面の目標として、「平成33年度(2021年度)以降の政府債務残高対GDP比の安定的な低下」と「平成32年度(2020年度)までを目途としたプライマリー・バランス(PB、金融収支を除いた単年度の収支)の黒字化(その前段として、2015年度までにPB赤字対GDP比を2010年度比で半減)」を掲げています(第5条、PDF資料6~7枚目)。
https://www.jimin.jp/policy/policy_topics/pdf/seisaku-001.pdf
この目標は、設定年度をそのままに、「経済成長を通じた税収増加等を実現するとともに、義務的経費も含めた聖域なき歳出削減を図る」という現政権の財政運営方針(「経済財政運営と改革の基本方針2014 ~デフレから好循環拡大へ~」、2014年6月24日閣議決定)にも引き継がれています。
http://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/cabinet/2014/item_01.pdf
http://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/cabinet/2014/2014_basicpolicies_01.pdf

そして、財政健全化責任法案においては、新たな予算を伴う施策を実施する際には、経費を上回る財源を確保する「ペイ・アズ・ユー・ゴーの原則」も掲げられています(第7条、上記資料1枚目および10~11枚目)。
これは、収入の範囲に支出を抑える、いわゆる「均衡財政主義」に基づくものです。「機動的な財政政策」と称して、補正予算による財政出動が行われた一方で消費税が増税されたことに表れているように、この考え方も、現政権の方針として引き継がれています(一部混同されている方もおられるようですが、アベノミクスの第二の矢「機動的な財政政策」は、財政支出の積極的な拡大によって経済の回復を図る「積極財政政策」とは異質の政策です。消費税増税が「機動的な財政政策」の一環であることは、下記2012年総選挙時の自民党政策集の26枚目、50ページに明記されています)。
http://jimin.ncss.nifty.com/pdf/j_file2012.pdf

そもそも、「プライマリー・バランスの黒字化に主眼を置いた財政健全化」という考え方は、「緊縮財政+構造改革」の政策パッケージによって日本経済を著しく疲弊させた小泉政権期に導入されたものです。他方で、上記財政健全化責任法案の附則第3項では、緊縮財政にシフトして日本経済を長期デフレに陥れた橋本政権下で1997年に定められ、財政支出の削減方針を明文化した「財政構造改革の推進に関する特別措置法」(いわゆる財政構造改革法、現在停止中)を廃止するとしています(上記PDF資料4枚目および13枚目)。
こうした事実は、デフレ不況をもたらし停止に追い込まれた財政構造改革法に代わり、小泉構造改革を継承した同法案によって緊縮財政の方針を再度明文化し、それを憲法改正によって後押ししようというのが、憲法改正草案に表現された自民党の発想であることを示唆しています(仮に、私が折に触れて述べている「積極財政こそが財政健全化をもたらす」という発想に自民党も立っているとしたら、財政健全化責任法案の成立を待つまでもなく、財政構造改革法を廃止しているはずですから)。


緊縮財政的な憲法改正は、経済問題にとどまらず国民の安全も危うくする

均衡財政主義に基づく消費税増税が、アベノミクス当初の財政出動の効果を打ち消し、日本経済が停滞状況にあることは、今や明らかです。そもそも、1998年以降のデフレ不況が、均衡財政主義に基づいて1997年に導入された「財政構造改革」という名の緊縮財政によってもたらされたことは、繰り返し述べているとおりです(図1)。
そうした緊縮財政の発想にを引きずった財政健全化条項の追加は、憲法改正というより、むしろ改悪です。

【図1:日本の各種マクロ経済データの推移(1980~2013年)】
http://on.fb.me/1t1Nxqj

しかも、緊縮財政に基づく財政運営は、経済成長を止めることでかえって財政赤字や政府債務のGDP比を悪化(拡大)させます(図2)。その結果は誤った発想を持った政策担当者の緊縮財政傾向をより一層強め、状況はますます悪化するでしょう。こうし事態を招きかねない憲法改正は、到底容認できるものではありません。

【図2:政府純債務比率の推移(日本およびOECD加盟国平均)】
http://on.fb.me/1uwxhyc

しかも、こうした誤った政策による悪影響は、単に経済の問題にとどまりません。経済の停滞は国力を低下させる一方で社会の閉塞感を強めることによって、

「企業が利益成長の機会を海外に求める傾向が強まる」
「他方で国内では、過剰に対外強硬的な世論が形成されやすくなる」

といったプロセスを経て国際的な摩擦が強まり、結果として国の安全を損なうリスクが高まることは、戦前をはじめとした過去の歴史が示すところです。
そうした意味でも、現在自民党で検討されている憲法改正は、危うさをはらんでいると言うべきではないでしょうか。

「日本経済を再生し、国力や国民の安全を高めるために、なぜ、アベノミクスではなく積極財政が必要なのか」をお知りになりたい方は、是非、拙著『積極財政宣言』をご覧ください。
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島倉原(しまくら はじめ)

Author:島倉原(しまくら はじめ)
 経済評論家。株式会社クレディセゾン主任研究員。経済理論学会および景気循環学会会員。
 メルマガ『島倉原の経済分析室』(毎週日曜日発行)や、メルマガ『三橋貴明の「新」日本経済新聞』(隔週木曜日寄稿)の執筆を行っています。

著書『積極財政宣言:なぜ、アベノミクスでは豊かになれないのか』(新評論、2015年)

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