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実態なき経済成長の正体

インターネット動画「チャンネルAjer」の収録を行いました。
今回は「実態なき経済成長の正体」というタイトルで、全体で約30分のプレゼンテーションです。

(動画前半)「実態なき経済成長の正体①
(動画後半)「実態なき経済成長の正体②

5月20日に2015年1-3月期GDPの第1次速報値が発表され、実質成長率は前期比年率2.4%、2四半期連続のプラスとなりました(名目成長率は前期比年率7.7%)。
甘利経済財政政策担当大臣はこの結果を受け、「その要因としては、個人消費や設備投資、住宅投資といった民需の項目が増加したこと、海外経済の緩やかな回復を背景として輸出がプラスに寄与していることなどが挙げられる」「先行きについては、雇用・所得環境の改善傾向が続くなかで、原油価格下落の影響や各種政策の効果もあって、緩やかに回復していくことが期待される」という談話を公表しました。
また、翌々日には日本銀行が、「わが国の景気は、緩やかな回復を続けている。(中略)個人消費は、雇用・所得環境の着実な改善を背景に、底堅く推移している。(中略)予想物価上昇率は、やや長い目でみれば、全体として上昇しているとみられる」という景気判断を小幅上方修正した声明を、金融政策決定会合後に発表しました。
甘利経済財政政策担当大臣談話(2014年10-12月期四半期別GDP速報(1次QE)公表後)(平成27年2月16日)
日本銀行「当面の金融政策運営について」(2015年5月22日)

しかしながら、今回のGDP統計の中身は、決して経済の先行きを楽観できるようなものではなく、上記政府当局者の談話・声明には、政策判断の誤りにつながりかねない、現実認識のギャップが存在する懸念があります。

↓今回のプレゼンテーション資料です。
実態なき経済成長の正体.pdf

以下はプレゼンテーションの概要です。


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在庫要因や原油安でかさ上げされているに過ぎない経済成長

名目/実質GDPの推移を辿ると、2014年4月の消費税増税以降落ち込んでいたのが2014年10-12月期以降増加に転じています。そして直近では、同様に消費税増税が行われ、その後デフレ不況に陥った17年前と比べても、順調に回復しているように見えます(図表1)。

【図表1:名目GDPおよび実質GDP(季節調整値)の推移(2014年1-3月期=100)】
http://on.fb.me/1J2vBIe

しかしながら、今回の経済成長の内訳を詳しく分析してみると、実質成長の7割強が在庫圧縮幅の縮小、名目成長の7割強が(原油価格大幅下落による)輸入減少(その分国外への所得流出が抑えられ、GDPは増加する)によって「かさ上げされたもの」であることがわかります(図表2)。

【図表2:2015年1-3月期の経済成長への項目別寄与度】
http://on.fb.me/1J2wnVD

特に、在庫の圧縮幅の減少は、最終需要である消費の回復が弱い状況からすると、むしろ次の四半期以降のGDP押し下げ要因としてはたらくことが懸念されます。
実際、GDPの6割近くを占める民間最終消費の消費税増税後の動向を確認してみると、家計の実質所得減少を背景として、いまだに(国内金融危機とアジア通貨危機が発生した)17年前のトレンドを下回る状況にあります(図表3)。2015年1-3月期の実質値は、アベノミクス直前期(2012年10-12月期)と比べてわずか0.2%増加しているに過ぎませんし、「有効需要」と直結する2015年1-3月期の名目値も前期比マイナスで(図表2および3)、先行きの低迷が懸念されます。

【図表3:民間最終消費(季節調整値)の推移(2014年1-3月期=100)】
http://on.fb.me/1IY5GCS


大本営発表の様相を呈する政府・日銀見解やマスコミ報道

以上の分析を踏まえると、冒頭で紹介した「景気は緩やかな回復を続けている」「個人消費は底堅い」「予想物価上昇率は、やや長い目でみれば、全体として上昇しているとみられる」といった政府・日銀の見解は、実態と乖離した楽観的なものである疑義が濃厚です。
にもかかわらず、国内マスコミの多くは、概ね政府見解に追随した報道を行っています。これに対し、例えばイギリスの経済メディアであるロイターは実態を踏まえた報道を行っており、その差が際立っています。

(参考記事)
「GDP年率2.4%増 1~3月期、景気緩やか回復示す」(日本経済新聞、2015/5/20)
http://www.nikkei.com/article/DGXLASFS20H0H_Q5A520C1MM0000/
「15年ぶり高値の日経平均、中身さえないGDPとギャップ拡大」(ロイター、2015/5/20)
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPKBN0O50LJ20150520?sp=true

また、少し前の話になりますが、2014年10-12月期GDPの第1次速報値が発表された2015年2月には、年間の名目経済成長率が17年ぶりに実質経済成長率を上回ったことを、「デフレ脱却が近いことを示唆するポジティブな事象」であるかのような報道がなされました。
これもまた、2014年も17年前の1997年も、消費税増税による名目GDPのかさ上げの結果として名目成長率が実質成長率を上回ったにすぎず、しかも17年前には翌1998年から長期デフレ不況に突入した、という現実(図表4)を無視した、歪んだ報道であるというべきでしょう。

【図表4:名目GDPおよび実質GDP(4四半期累計値)の前年比推移】
http://on.fb.me/1EvbqfG

(参考記事)
「昨年のGDP 名実逆転、17年ぶり解消~デフレ脱却に近づく」(日本経済新聞、2015/2/17)
http://www.nikkei.com/article/DGXKASFS16H8Q_W5A210C1PP8000/

他方で、「予想物価上昇率は、やや長い目でみれば、全体として上昇しているとみられる」という日銀見解は、2014年11月19日以降継続して表明されているものです。
これは、それ以前(すなわち、黒田日銀の下での追加金融緩和前)の2013年8月8日から2014年10月7日まで述べられていたは「予想物価上昇率は、全体として上昇しているとみられる」からはやや弱気なトーンになりつつも、依然として「大規模金融緩和がデフレ脱却をもたらしつつある」というスタンスを維持しているものです(ちなみに、2013年5月22日から2013年7月11日までは、「予想物価上昇率については、上昇を示唆する指標がみられる」と述べていました)。
http://www.boj.or.jp/mopo/mpmdeci/state_2014/index.htm/
しかしながら、これらの見解の背景にある「大規模金融緩和による期待インフレ率の引き上げ」、いわゆる期待インフレ理論が、実際には成り立っていないこと、さらには、そうした実態と乖離した見解が関係者(特に岩田日銀副総裁)から表明されてきたことは、拙著『積極財政宣言:なぜ、アベノミクスでは豊かになれないのか』のほか、1年ほど前に下記の記事で述べたとおりです。

(参考記事)
「危ういデフレ脱却期待」(島倉原ブログ、2014/3/26)
http://keiseisaimin4096.blog.fc2.com/blog-entry-44.html

このように、実態と乖離した当局からの情報発信と、それに追随するマスコミ報道の組み合わせには、「金融緩和と緊縮財政」というアベノミクスの失敗を覆い隠そうとする意図も見え隠れし、まさしく戦前のいわゆる大本営発表を想起させるものです。日本経済の真の回復を実現するには正確な分析に基づく的確な経済政策の立案が必要ですが、そのためには正確な情報発信に基づく世論、すなわち国民的な合意の形成が不可欠です。
それでは、日本経済の現実に対する正確な分析とはどのようなもので、さらにはそれを踏まえた経済政策はどうあるべきか…詳しくは、是非拙著『積極財政宣言:なぜ、アベノミクスでは豊かになれないのか』をご参照いただければと思います。

↓拙著『積極財政宣言』、ご覧になりたい方はこちらの画像をクリック!!


※日本経済再生のための財政支出拡大の必要性については、徐々に理解者・支持者が増えているとはいえ、まだまだ主要マスコミでのネガティブな報道等の影響力が強いのが現状です。1人でも多くの方にご理解いただくため、ツイッター、フェイスブック等での当記事の拡散や、ブログランキングボタンの応援クリックにご協力いただけると幸いです。

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島倉原(しまくら はじめ)

Author:島倉原(しまくら はじめ)
 経済評論家。株式会社クレディセゾン主任研究員。経済理論学会および景気循環学会会員。
 メルマガ『島倉原の経済分析室』(毎週日曜日発行)や、メルマガ『三橋貴明の「新」日本経済新聞』(隔週木曜日寄稿)の執筆を行っています。

著書『積極財政宣言:なぜ、アベノミクスでは豊かになれないのか』(新評論、2015年)

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